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機関誌「旅なかま」掲載記事など最新のトレンドがわかるブログ

旅のアクセント

2010年09月15日

【スタッフひろば】 今月の『対決』 印象派VSルネサンス

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〔本稿は会員誌『旅なかま』9・10月号に掲載されたものです〕

海外旅行部 叶谷真起子 間辺恒夫まだまだ残暑が続いておりますが、もうすぐ秋到来。落ち着いた季節に美術鑑賞をされる方も多いと思います。そこで今回は、芸術の秋に向け「美の対決」!サンツアーズのスタッフの中でも特に美術を愛する社員に、一般的に日本人に人気のある「印象派」と、弊社の美術を愛するリピーターの方に特に人気のある「イタリアルネサンス絵画」について語ってもらいました。皆さまのお気に入りの一枚は、印象派にあり?それともイタリアルネサンスにあり? ※二名のスタッフとも印象派もルネサンスもどちらも好んで鑑賞しますが、今回はより好きな方は、という観点で話しております。

間辺:一般的に、日本では印象派絵画はすごく人気がありますね。
叶谷:そうですね。やはり、素直にキレイと思えるし、感性でぱっと見ることができるから、人気があるのではないかしら。宗教画のように絵解きや、予備知識がなくても楽しめる。
間辺:でも、ルネサンス絵画でも日本に例えばダ・ヴィンチとかラファエロなんかが来ると、展覧会は超満員になりますよね。ティツィアーノなんかも、素直にきれいだって思えるんじゃないかな。
叶谷:ダヴィンチ、ラファエロ、ミケランジェロのいわゆる三大巨匠は特別じゃないかしら。日本の方にもインパクト大だと思います。ただそれ以外の…準有名なというか、例えばピエロ・デッラ・フランチェスカとかベッリーニとかはね、ちょっと敷居が高いというか…よくは知らない。うちのお客様は別ですけどね、よくご存知の方が多いので…。キリスト教や聖書の事をよく知っていれば、何時間見ててもいいのでしょうけれど。
間辺:確かにルネサンス絵画の作品テーマは聖書を土台にしているものが多い。都市の為政者や豪商からの注文もありますが、まだまだ教会や教皇庁からの注文も多い。特にタブローだけではなく、祭壇画やフレスコ画などのテーマとしてはどうしても聖書物語や聖人伝になってしまう。でも都市の支配層や商人からの注文は肖像画を始め、俗っぽい絵も沢山ある。例えば「モナ・リザ」はジョコンダ家に嫁いだゲラルディーニ家出身の女性だし、決して宗教的な絵解きは必要ないんじゃないかな。難しく考えることはないと思いますけどね。
叶谷:印象派の絵を鑑賞していて楽しいのは、画家達はつい100年くらい前の人達だから、その人の人となりとか生き様というか、わりと臨場感あふれて私たちに伝わってくるんですよね。特に後期の人たちはゴッホ、ゴーギャンにしてもセザンヌにしても、人嫌いだとか、死に様も、壮絶な?人生でしたよね。その時の心情にあわせて絵も明るかったり暗かったり、人物伝を知った上で、絵の裏にある物語を重ねるとすごく面白い。私は特にセザンヌの、サント・ヴィクトワール山は何枚見ても飽きないしどれを見ても大好きです。でもルネサンスの人は人となりがよくつかめなくて…。

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[写真左:セザンヌ『サント・ヴィクトワール山』(バルチモア、バルチモア美術館)]
「左右にちょっと動くだけで何カ月も同じ場所で絵が描ける」と語ったセザンヌは、故郷の山を様々な角度から40枚以上も描き続けた
[写真右:ミレー『落穂拾い』(パリ、オルセー美術館)]
刈り入れが終わった後の畑で落ち穂拾いをする貧しい生活を描いているといわれるが、旧約聖書の『ルツ記』の物語を背景にしている

間辺:確かに、500年前の人とつい100年前の人じゃ、情報量が違うよね。ピエロ・デッラ・フランチェスカがどういう人だったか?…ってそんな細かい情報あるわけない(笑)。でも例えば、ゴッホだってキリスト教というものがあると思うし、日本人の好きなミレーの『落穂拾い』だって聖書の物語を背景に描いているわけで。あれを見て、聖書的なテーマと関係なく「いい」と感じる人もいますよ。ルネサンスというのは、中世と決定的に違うのは、画家の個性がでてくるのね。中世だとマリア様の描き方は画一的なんだけれど、例えばラファエロとダ・ヴィンチのマリア様を比べてみると、だいぶ違うでしょ。それから、「人となり」がわからないというけれど、わからないなりに想像するのも面白いんですよ。例えば、ラファエロの『ラ・フォルナリーナ』って絵があるんですけど、ローマのバルベリーニにね。

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[写真左:ラファエロ『ラ・フォルナリーナ』(ローマ、バルベリーニ美術館)]
腕輪に「ラファエロの妻」を意味する文字が刻まれている
[写真右:マサッチォ『楽園追放』部分(フィレンツェ、サンタ・マリア・デル・カルミネ教会)]
迫真に迫る表情や肉体表現にご注目!

叶谷:腕輪に「ウルビーノのラファエロ」と書いてある女性の絵ですよね。
間辺:そうそう。これは非常に大胆でね、上半身ヌードなんですよ。女性の肖像画として裸の肖像画は16世紀後半のマニエリスム以前には無いと思いますよ。説によると、あれは、ラファエロの恋人ではないかと。ずっと隠されていた絵で遺品の中から出てきた。当時教皇庁の絵を描いてた彼が、ああいう絵を描くというのはセンセーショナルというかスキャンダラスですよね。ヴィーナスとかは裸だけど、一般女性の生々しい裸を描くのはあの時代では想像しがたい。あんな絵を注文するのは自然ではないんですよ。だから、ジョルジョーネやティツィアーノはヴィーナスにかこつけて裸婦を描いた。
叶谷:そうですね、お金を受け取らず描いた唯一の絵といわれていますよね。印象派の場合、自分の内なるものを誰にも頼まれていないのに描いたりしますけど、そういう感情表現がルネサンス絵画にもあるということですね?
間辺:ルネサンスの最大のテーマは遠近法なんですけど、同時にもうひとつは人物の感情表現なんです。それまでの中世には人間の内面を表現するっていうのはなかった。ラファエロとかダ・ヴィンチが出てくる前に、フラ・アンジェリコとか初期の画家がいますけど、その中でマサッチォという画家…僕は大好きなんだけど、遠近法とそのドラマチックな表現というかね。ジョット以来聖書物語をこんなにドラマチックに描いた画家はいなかったのではないか。彼は27歳で死んじゃうんだけど、もし長生きしてたら、大御所になっただろうね。宗教わからなくても楽しめるよね。
叶谷:この絵は確かに画期的!でも、印象派の画期的なことっていうのも大きいですよね。それまで室内で描かれていた絵画というものを、外に出て、外の光をキャンバスに描いた事。光の微妙な色合いとか屈折とか。おそらくそれは印象派がはじめてですよね。印象派の前に「光」をかいたと言われるカラバッジョにしてもレンブラントにしても、彼らは「明と暗」「光と影」は表現したけれど外の光ではないんですよね。時間や季節とともに移り変わっていく外の光の美しさが、印象派の魅力であるとともに本当に画期的だと。
間辺:まあルネサンスも印象派も画期的だったというのは共通してることですよ。ただ、印象派は最初は評価されなかったわけでしょう。ルネサンスはなんで総スカンくわなかったかというと、あれは絵画の世界だけではなかったから。むしろ思想的なことが背景にあって、精神運動の潮流のなかで、絵画の分野でそういうことをしたと。それは中世の、キリスト教世界の中で神が創った世界という観点から、画家の視点でもって描くという、大転換ですよね。要するに「ルネサンスなければ印象派なし!」なんですよ。印象派がいいとか悪いとかじゃなくて、印象派はルネサンスなくしてありえないということですよね。私としては、もっとルネサンス絵画を皆さまに知ってほしいと思います。
叶谷:それはもちろん!ルネサンス絵画にも触れて見る機会がたくさんあればいいのですけれど、日本にあるのも来るのも、印象派の方が多いから、やはりなじみやすいですよね。
da-vinci.jpg[写真右:ダ・ヴィンチ『受胎告知』(フィレンツェ、ウフィッツィ美術館)]
背景にトスカーナの典型的な風景、糸杉や丘陵地帯が描かれている。また、緻密な遠近法が用いられている

間辺:印象派の絵画は世界中にあるのだけれど、イタリア絵画はやはりイタリアに一番あるわけで、それをわざわざ見に行っていただきたいんですよ。イタリアの中にはルネサンスの世界が残ってますからね。ダ・ヴィンチにしても、ラファエロにしても背景に糸杉とか描かれてるけどそれは典型的なトスカーナの風景であって、アメリカにはないでしょう?現場にあるわけですよ。そういう環境の中で絵を見るというのが、楽しいわけなんですよ〜!!
叶谷:なるほど!それはよくわかります!
間辺:それによって、ただキャンバスの中の絵を見るんじゃなくて、イマジネーションというか、感性が膨らんでいくから、そういうのに魅かれてイタリアまで行くんじゃないかな。 街とか風景がね、絵の中に描かれてるわけ。そういう世界をつぶさに、風とか空気とか感じながら一緒に絵を鑑賞するというのははるかに臨場感があると思うし、うける印象が全然違うと思う。
叶谷:そうですね。その教会や修道院の、そこの壁にあってこそ生きる絵というものがルネサンスではあるから、現場で見てほしいというのはすごくよくわかります。逆に印象派の絵画の場合、もちろん舞台を訪ねるのも素敵だけれど、絵だけ単体で見てもストレートに心をうつ場合も多いと思うので、その絵を見にだけに世界中を周って追いかけてもいいと思います。特に、アメリカには本当に印象派の宝みたいな作品が多くありますから。
間辺:間辺さんが大好きなバーンズとかね(笑)。
間辺:そうだった!ルネサンス絵画のよさを語ってきたけれど、「さよならバーンズ美術館」のこともお伝えしたかったのでした…まだ何ページ話せる?え、もうスペースがない?…それでは詳しくは、「さよなら、バーンズ美術館」をお読みください!

奥深い「美」の世界にご興味を持たれた方、これからの季節は観光客も少なくなり美術館巡りに最適。「美の旅シリーズ」「都市を歩く」などで、お客様の「お気に入りの絵」を見つけにぜひ、おでかけください!

【出席者】
ダ・ヴィンチ間辺 セザンヌ叶谷ダ・ヴィンチ間辺 = 間辺恒夫(右)インターネットの検索より早く何でも答えてくれる、サンツアーズの大辞典(?)。瞳をキラキラさせ宙を見つめながら「美」についてとうとうと語った今回の対談はぜひ動画でお見せしたかった!/編
セザンヌ叶谷 = 叶谷真起子(左)永らく「旅の中の旅シリーズ」の顔。美術やロマネスク、音楽を愛する「芸術カルチャー系」添乗員代表!・・・と思わせつつ、実は砂埃舞う中近東なども大得意のマルチな顔をもつ/編

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【特別企画】さよならバーンズ美術館 米国東部の名画を訪ねて 9日間  (この旅行の募集受付は終了しました。参考にご覧下さい)

投稿:朝日インタラクティブ