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機関誌「旅なかま」掲載記事など最新のトレンドがわかるブログ

旅のアクセント

2016年07月22日

ナポリとカンパニアは歴史と美術の宝庫 ナポリ湾

〔本稿は会員誌『旅なかま』2016年7・8月号に掲載されたものです〕
ご新規のお客様には見本誌を無料でお送り致しますので、こちらのフォームからお申込みください。その際、「旅なかま7・8月号希望」とご記入下さい。なお、部数に限りがございますので、お早めにお申込みください。

ナポリとカンパニアは歴史と美術の宝庫 ナポリ湾

ナポリ湾

ナポリと言えば、絵はがきのような、なだらかに裾を広げるヴェスヴィオ山に見守られたナポリ湾の景色がまぶたに浮かびます。近年では、地下遺構の発掘と美術品の修復公開が進み、スパッカナポリなどの旧市街が再注目されていますね。地下鉄駅のモダンなデザインも話題になりました。先頃訪れた時には、カステルヌオヴォの周辺で盛んに発掘作業が行なわれており、ギリシア時代にまでさかのぼる船舶なども出土していました。

プロチダ島、コッリチェッラ地区

プロチダ島、コッリチェッラ地区

古代から近世まで、イタリアで最も豊かであり、中世以降常にローマ教会の後ろ盾となってきた王国の首都であったナポリは、景観のみならず、歴史的モニュメントや美術に見るべきものが多く、それだけで一級の観光地だと言えるでしょう。さらに周辺にもユネスコに指定された世界遺産がたくさんあります。ポンペイやエルコラーノといった古代都市、景勝と歴史を誇るカプリ島やイスキア島、瀟洒なプロチダ島、ソレントやアマルフィなどのリゾート地は言うまでもありません。コアな古代ローマファンにとっては、カンピフレグレイの古代遺跡など、垂涎の的でありましょうが、ここでは二つ観光地をご紹介することにします。

パエストゥム、壁画をもつ石棺

パエストゥム、壁画をもつ石棺

エルコラーノ: 海神ネプトゥヌスの家のモザイク

エルコラーノ: 海神ネプトゥヌスの家のモザイク

まずは、南イタリアに入植したギリシア人によって前六〇〇年頃に建設された都市の遺跡です。サレルノからさらに南下した沿岸部にあり、保存状態の良い三基のギリシア神殿が圧巻です。付属の考古学博物館には、同遺跡からの出土品のほか、周辺の古代墓地から発掘された壁画をもつ石棺と豪華な副葬品が数多く展示されています。博物館の中央ホールに置かれているメトープ彫刻は、市域の北を流れるセーレ川の手前にあった神殿群のもので、テーマは、オデュッセイアやイリアス、アルゴー号の冒険などのギリシア神話です。神域が、他民族の南下を阻止する防衛施設の役目も果たしていたものと思われます。その一帯は今では、名の知れた水牛の牧場となっており、新鮮で美味しい水牛のモッツァレッラやヨーグルトを食べられる酪農場も多々あります。グルメにとっては見逃せません。

もうひとつの見どころは内陸部のカプアとカセルタです。ヴォルトゥルノ川に潤され、古代から「耕作の地」「幸多きカンパニア」と呼ばれた豊かな農地が広がり、こちらも水牛のモッツァレッラの産地として有名です。ポエニ戦争やスパルタクスの反乱で名の知れた古代有数の都市カプア(サンタ・マリア・カプア・ヴェテレ)は今ではすっかり寂れてしまいましたが、帝政期に再建された円形闘技場はコロッセオに次ぐ規模を誇っていました。市内には、ローマで流行ったイラン起源の秘儀ミトラ教の聖所の遺構もあり、牛をほふるミトラ神の貴重な壁画も残っています。また、この古代都市を見下ろすティファタ山の頂きには、中世にこの地を支配したランゴバルド族が信奉した大天使ミカエルを祀る聖堂(サンタンジェロ・イン・フォルミス)があり、堂内を埋め尽くす中世の壁画がみごとです。これもユネスコの世界遺産候補になっています。

カセルタ、王宮の庭園

カセルタ、王宮の庭園

サンタンジェロ・イン・フォルミス聖堂の後陣

サンタンジェロ・イン・フォルミス聖堂の後陣

そして、スペインの属国であったナポリ王国が十八世紀に独立してからのモニュメント、カセルタの王宮と庭園を見ずにはブルボン朝の栄華を知ることはできません。この王朝の創始者カルロ王は、フランスの太陽王ルイ十四世を曾祖父に持つ啓蒙君主で、それまで「聖域」とされていた教会財産にまで課税することで国庫を富ませ、いくつもの豪華な宮殿建設のみならず、産業を振興し、福利厚生にも心を砕きました。エルコラーノとポンペイの発掘に着手し、出土品の版画集をヨーロッパじゅうの王侯貴族に贈ったことが新古典主義のブームに火をつけたといえるかもしれません。近郊のマッダローニで見られる、カセルタのために建設された水道橋や、万民平等の理想郷として建設された絹織物の名産地サン・レウチョも世界遺産に登録されています。

ナポリとカンパニア州だけで十日間を過ごしても飽きることなどあり得ません。むしろ足りないくらいでしょう。

カセルタの水道橋

カセルタの水道橋

カプア、円形闘技場

カプア、円形闘技場

(イタリア史研究家・小森谷慶子)

小森谷慶子氏の横顔

投稿:朝日インタラクティブ