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機関誌「旅なかま」掲載記事など最新のトレンドがわかるブログ

旅のアクセント

2014年01月24日

旅するもの書き 江藤詩文の世界食べある記vol.8 アルプスの伝統食inスイス

〔本稿は会員誌『旅なかま』2014年1月号に掲載されたものです〕
ご新規のお客様には見本誌を無料でお送り致しますので、こちらのフォームからお申込みください。その際、「旅なかま1月号希望」とご記入下さい。なお、部数に限りがございますので、お早めにお申込みください。

旅するもの書き 江藤詩文の世界食べある記vol.8 アルプスの伝統食inスイス

「さぁ、冷たいミルクをどうぞ」

ぽってりした陶器のカフェオレ・ボウルに入っていたのは、朝いちばんのしぼりたてをゆっくり冷やした牛乳。アルプスの山の空気は意外と乾燥していて、ハイキングで軽く汗をかいた身体に、穏やかなひんやり感がうれしい。
ふくよかな甘味と生クリームのようにまろやかなコクが、じんわりと口いっぱいに広がっていきます。
続いて登場したのは、不要な木材をそのまま使ったプレートに載せられた、燻製肉とチーズの盛り合わせ。豚肉のベーコンや豚バラ肉の燻製、牛肉を燻したビーフジャーキーのようなスライス肉、
旨味がぎゅっと詰まったソーセージ。クセのない牛乳のチーズは、熟成期間による風味が異なる2種類。添えられているのは、小玉ねぎと小さなきゅうりのピクルス、そしてライ麦パン。すべて自家製の心づくしが、
テラス席の食卓に並びました。

名物のじゃがいも料理ロスティ

“大人になったハイジ”のチーズ

ここはハイキングコースの途中にある、休憩にぴったりの小さな山小屋。ツェルマットなどアルプスの山々には、トレッキングやハイキングを楽しめるコースがたくさんあります。この日は、チーズ小屋を見学して、花に彩られたなだらかな小路を下るロマンティックなコース「アルプス花の道」を選びました。どこまでも広がるアルプスの山々に目を奪われ、抜群の透明度をもつ湖や清流のせせらぎ、
赤、白、黄色、ピンクと色とりどりの小さな花たちを楽しんでいると、放牧されている牛が鳴らすカウベルの音が、澄んだ空気のなかで、やわらかくこだまします。
チーズ小屋では、チーズ学の博士課程を修めたカリンさんが働いていました。「アルプスの少女ハイジ」が大人になったような純粋な目を持つ彼女は、大きな銅なべいっぱいに汲んだ牛乳を薪火で温め、酵素を加えてゆっくりかきまぜ、
木綿布で漉す。そんな昔ながらの製法で、何ひとつ工業化することもなく、ひとりチーズを手づくりしていました。

カリンさんのチーズだな
種類豊富な肉の加工品

車いすでもアルプスの眺望を

こんなランチを楽しめることも

チーズも燻製肉もピクルスも、今ではスイスの名物ですが、もともとは山岳地帯の短い夏がもたらす恵みを生かし、厳しい冬を生き抜くためにつくられた伝統的な保存食。世界中から極上の食材を集めて味を構築するガストロノミーとは、いわば対極に位置する食べものです。けれども、この美しい景観のなか、清涼な空気を胸いっぱいに吸い込み、
スイスの伝統的アーミーナイフ「ビクトリノックス」で切った肉やチーズを、指でつまんで食べるのは、そのスタイルまで含めて格別な味わいです。
テラスでは、この喜びをだれもが享受していました。大きなバックパックにザイルを括りつけた、いかにも強そうな風貌の3人組。国境を越えて自転車でやってきた冒険青年グループ。と思えば、上品な白髪の車いすに乗った女性や、杖をついたシルバーカップル、小さな子どもを連れたファミリーまで。アルプスでは、世界的に知られた登山列車をはじめ、
ロープウェイやケーブルカーなどライドが充実していて、それぞれの体力や技術に合わせて、無理のないコースを選択できるのです。
屈強な山男とワンピース姿の車いすの女性が、山のいただきで並んで食卓につき、一食をともにしている。その場面はとても美しく、味わい深いものでした。

取材協力:スイス政府観光局、スイストラベルシステム
撮影:江藤 詩文

プロフィール 江藤詩文

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投稿:朝日インタラクティブ