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機関誌「旅なかま」掲載記事など最新のトレンドがわかるブログ

旅のアクセント

2016年02月17日

旅なかま2月号 陣内秀信先生スペシャルトーク 多様なイタリア(前編)~自然、歴史文化、食文化からみて~

〔本稿は会員誌『旅なかま』2016年2月号に掲載されたものです〕
ご新規のお客様には見本誌を無料でお送り致しますので、こちらのフォームからお申込みください。その際、「旅なかま2月号希望」とご記入下さい。なお、部数に限りがございますので、お早めにお申込みください。

イタリア大特集 陣内秀信先生スペシャルトーク 多様なイタリア(前編)~自然、歴史文化、食文化からみて~ 「朝日移動教室」の同行講師として、また数々の講演会でイタリアの魅力を伝えてくださる陣内先生。ご専門はイタリア建築史・都市史ですが、地中海文化圏の他、東京(江戸)についての著作を発表されるなど、幅広い、多彩な活躍で知られています。そんな陣内先生に、あらためてイタリアの魅力を語っていただきました。前・後編2回でお届けします!
プロフィール 法政大学教授 陣内 秀信(じんない・ひでのぶ) 1947年、福岡県生まれ。東京大学大学院工学研究科終了・工学博士。専門はイタリア建築史・都市史。ヴェネツィア建築大学に留学、パレルモ大学、トレント大学、ローマ大学にて契約教授。サントリー学芸賞、建築史学会賞、地中海学会賞、イタリア共和国功労勲章、日本建築学会賞、パルマ「水の書物」国際賞、ローマ大学名誉学士号、サルデーニャ建築賞2008、各受賞。主な著書に『ヴェネツィア—水上の迷宮都市』(講談社)、『イタリア 小さなまちの底力』(講談社)など多数。
イタリアの魅力

イタリアに初めて行く時は、まずローマやフィレンツェ、ヴェネツィアといった代表的な街を訪ねる方が多いと思います。いずれも何度行っても見飽きることのない、魅惑的な街ですが、是非他の街や地方、田舎にも行っていただきたいと思いますね。なぜなら、イタリアのあちこちへ行くと本当に多様性がすごいことを感じるはずで、そしてこの多様性こそがイタリアの最大の魅力だからです。その前提として、今の世界、つまりグローバルゼーションが進み、だれもが同じような方向を目指し、身の回りに固有なものとか、そこにしかないものがどんどん失われてしまっている現状があります。それで、本物の多様なものに惹かれる心情があるのでしょう。また、バーチャルなものばかり見ているので、本物の力強さ、たとえば、人と出会うことの面白さや、自分が舞台に上がって演じることを含めた体験といったものを求めている時代だと思います。

自然の多様性
世界遺産チンクエテッレ(イメージ)

さて、イタリア最大の魅力である多様性ですが、これは国土が大きくはないけれど南北に長いこと、地形が多様であることによります。
私は大学で学生たちと港町の研究をずっとしてきました。たとえば、アマルフィ海岸のでこぼこしたリアス式海岸では、背後に山や丘が迫っており、谷間と小さな入り江があって、斜面は高密で、そこにいい海が開らけているわけです。イタリアにはそういう港町がたくさんあります。プロチダ島、ポルトフィーノを始め、リグリア地方やシチリア島も入り江に海が開けています。そのような港町というのは、あまりヨーロッパにはありません。スペイン、フランスに若干ありますが、それも限られた地域です。それからドイツ、オランダ、イギリスなどは土地は基本的に真平らで、あまり変化がありませんよね。オランダは国土全て自転車で走れるくらい平らですし、ドイツも丘陵地帯はありますが、基本的に南のアルプスまで山はありません。でも、イタリアの場合は山あり、丘あり、湖があり、ラグーナ(潟)がありと本当に地形が多様です。ヨーロッパ一の活火山(エトナ山)もシチリア島にありますし、全土に温泉が豊富です。それは日本とよく似ています。
また、イタリアの気候風土も南北に長いため地域によって違います。たとえば北のミラノなどは、車で2時間走ればスキー場に着きますし、南のシチリア島だったら、ローマに行くよりアフリカの方がずっと近いくらいですからね。

保存状態も素晴らしいアグリジェント「神殿の谷」のコンコルディア神殿
歴史・文化の多様性

歴史も他の地域との繋がりがあり、ものすごく複雑です。南に行けば地中海を通じてギリシャあり、フェニキアあり、ローマが長く支配した後アラブ、ノルマン、そしてスペインと繋がっています。一方、北は陸続きでフランス、オーストリアが入ってきますが、これは日本と決定的に違うところです。日本は海という自然の国境に囲まれていますが、イタリアは北が大陸と接しているので、ダイレクトに影響を受けざるをえなかったんですね。つまり、南北に長いことによる多様性にプラスして、人類の歴史と文明の多様性、結局は民族の多様性、言語の多様性が生まれた。そこに美術や建築とかがそれらの影響を受けているわけです。地形が多様で、自然条件が多様であることは、建築の多様性、バナキュラー(土着的)なものの多様性があるということになります。
たとえば、住居一つとっても地方によって違いがあります。南に行くとアマルフィ海岸やプーリア地方ではどんなに貧しい家でも天井や屋根までも石でできています。世界遺産のアルベロベッロなど有名ですが、歴史はとても古いのです。一方アルプスの南辺り、ヴェネトの北のほうに行けば、ログハウスみたいな丸太を組み合わせたような木造建築となります。それから、ラグーナ(干潟)には日本の茅葺みたいな質素な漁民の家がつくられてきました。いずれも、地産地消といいますか、地産地築といいますか、地元の材料を使ってその土地の風土にあった建物を作るわけです。つまり、南と北ではバナキュラーな建築が違うわけで、それを見るだけでも飽きない。

迷宮都市ヴェネツィア
ビザンチンモザイクが見事なモンレアーレ大聖堂
かつて海洋王国として栄えたアマルフィ

更に、そこに外からの建築の文化が入ってくるわけです。南に行けば、たとえば、ギリシャ神殿とギリシャ劇場が、とてもよく残っています。これは、紀元前にギリシャの都市国家が栄えていた頃、ギリシャの人たちが地中海沿岸に「植民地」を作った名残なんです。植民地はイタリアだけでなく、フランスにもありましたが、とにかくたくさんあって、あちこちでギリシャ文化が栄えた。その文化はギリシャ本土の都市国家が衰退したあとも残って、遺跡などは、本家のペロポネソス半島よりも、むしろ南イタリアやシチリアほうが逆に多いのです。保存状態も良くて、特にシチリアのアグリジェントやセジェスタ、カンパーニャのペストゥムなどは素晴らしいです。それからビザンチン建築の金のモザイクにしても、ギリシャ本土やトルコに行くと、オスマン帝国が支配していたため、キリスト教の教会はモスクになってしまいました。イスラム教は偶像を否定していたので、モザイクの上から漆喰を塗ってしまい、元のきれいなモザイクがそのまま残っているケースは少ないわけです。でも、イタリアではそのまま残っているので、シチリアのモンレアーレやパレルモ、ラヴェンナでは、本家のギリシャやトルコより、良い金のモザイクを見ることができるのです。勿論、ルネサンス建築もバロック建築もイタリアで生まれています。ともかく、こんなにいっぱい、建築の様式が多様に見られるところは他にはありません。イタリアの多様性を表す好例だと思います。

(談・陣内 秀信)
〈後編・3月号に続く〉

イタリアの街角からスローシティを歩く「スローシティ」を視座に、路地を歩き、人々とふれあいながら、まちに眠る歴史、伝統、自然、風景を再発見。南イタリアをはじめ、蘇る都市の秘密に迫ります。イタリアの変わらぬ魅力、価値を語りながら、日本の都市における問題にも思いを馳せます。図書出版 弦書房 定価 2100円 (+税)

≪関連パンフレット≫
【首都圏発】「TANTO TANTO イタリアの旅 全14コース」

後編こちらからご覧いただけます。

投稿:朝日インタラクティブ