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機関誌「旅なかま」掲載記事など最新のトレンドがわかるブログ

旅のアクセント

2016年03月14日

旅なかま3月号 陣内秀信先生スペシャルトーク 多様なイタリア(後編)~自然、歴史文化、食文化からみて~

〔本稿は会員誌『旅なかま』2016年3月号に掲載されたものです〕
ご新規のお客様には見本誌を無料でお送り致しますので、こちらのフォームからお申込みください。その際、「旅なかま3月号希望」とご記入下さい。なお、部数に限りがございますので、お早めにお申込みください。

イタリア大特集 陣内秀信先生スペシャルトーク 多様なイタリア(後編)~自然、歴史文化、食文化からみて~ 2月号で大好評をいただいた陣内先生のスペシャルトーク。あらためてイタリアの面白さを再発見した方も多いのでは?後編は先生のご専門・建築史の一旦に触れる都市空間の魅力と、古代からつながる「今」を生きるイタリア人について語っていただきます。
プロフィール 法政大学教授 陣内 秀信(じんない・ひでのぶ) 1947年、福岡県生まれ。東京大学大学院工学研究科終了・工学博士。専門はイタリア建築史・都市史。ヴェネツィア建築大学に留学、パレルモ大学、トレント大学、ローマ大学にて契約教授。サントリー学芸賞、建築史学会賞、地中海学会賞、イタリア共和国功労勲章、日本建築学会賞、パルマ「水の書物」国際賞、ローマ大学名誉学士号、サルデーニャ建築賞2008、各受賞。主な著書に『ヴェネツィア―水上の迷宮都市』(講談社)、『イタリア 小さなまちの底力』(講談社)など多数。
都市空間の魅力

多様性というのは、何も教会建築だけではありません。北から南、様々な土地に様々な都市ができていて、その都市空間がまた多様性に富んでいます。イタリアの場合、都市の骨格ができるのも早くて、だいたい古代ローマの都市の上の中世の都市ができるわけです。都市というのは、限られた土地に多くの人が密集して住む、いわば高密度な空間になるわけですが、イタリアの人はその都市に住むことが、伝統的にとても上手です。これは地中海全体と共通していると思いますが、プーリアの高密集落とか、アマルフィとか、ヴェネツィアとか、そこに上手に皆住んでいるわけです。人と人との関係が近く、狭く、ぎっしりしたところに住んでいるわけですから、互いに調整しなければならないわけです。だから、うまく中庭を取ったり、共通の袋小路を通ったり、小さな広場を通ったり、家からパノラマが見えるようにするとか、実に建築のプランニングや組み合わせが上手です。たとえば、夏でも7時、8時であれば外の方が気持ちがいいので、家から出てきます。椅子をそのまま持ち出して、家のリビングルームがそのまま路上に出たというか。広場はいかに積極的に使うかという事が重要なんですが、イタリアの人たちは広場に集まってワイワイやるわけです。広場は家の中の延長というか、共有のサロンという感じです。北イタリアではその要素は少なくなりますが、それでも「建築と都市空間は一体、家は小さな都市、都市は大きな家」という感覚は、イタリアが圧倒的に強いです。ですから、イタリアの観光は、広場を見るだけでも十分堪能できます。私もツアーに同行した時は、場所によっては1時間くらい広場で解説することがあります。イタリア全体ではそれこそ無数の都市があるわけですから、都市と広場だけでも、イタリアは無限の魅力を秘めいるといえます。

ダイナミックなイタリア
古代の上に中世が乗った街アオスタ

気候風土、地形といった自然資産、都市空間も含めた文化歴史資産、そこにインタンジブル、無形文化財としての食文化を入れると非常にわかりやすくなります。最初の二つは形がありますが、結局は自然と歴史文化と合わせたところに食文化が生まれるわけです。それは人間とってわかり易く、とっつきやすいことです。
それで、3つを組み合わせるとその地域の質の高い観光になりますし、町興しにもなります。この3つ全部がイタリアは多様です。自然=地形が多様、海あり、山あり、川あり、水が豊か。歴史=外と繋がっていたので民族的な多様性、それら全部が食文化に反映させるわけです。
したがって、イタリアがダイナミックなのは当たり前ことで、観光で行った場合、その3つをいやが上でも見てくることになります。

プーリア地方を代表する高密集落オストゥーニ 写真提供:Wikipedia Commons
かつてのコロッセオがそのまま広場になったルッカのアンフィテアトロ広場
イタリア人とグローバリゼーション
狭くぎっしりしたところに住む(イメージ)

それとやはり、もうひとつ大切なことは都市が大きくなくても魅力的で、生き生きしていて、人々が自慢しています。自分の街が世界で一番だと信じていて、自信を持っている。舞台が揃っていて、かっこよくて、さまになる都市空間となっています。
かつて、日本にもこういう場所が本当はあったと思います。まともな濃縮したすばらしい居住空間、都市空間、集落空間が、なにか解体してしまって、吸引力がなくなってしまっています。それがイタリアにはどこに行ってもあります。それがやはり人が使いこなしている現在も、長い歴史、過去と現在が重なっているところが見事なのです。
イタリアには失ってはいけないものへのこだわりが随分あります。彼らは絶対に自信を持っていて、自分にとって価値があるというだけではなく、客観的にもすばらしいと思っているものが多いのです。だから、それを失ってはいけない。
しかし、歴史あるものにしがみついているか、というとそうでもない。新しいものに対しても貪欲です。グローバリゼーションはそれが余りにも広がると地域性が失われて、個性がなくなってよくないと思いがちですが、イタリア人はそうは考えていません。そんなことで失うような軟なものではないということもありますが、逆にそれを大いに使っちゃえということがあります。だからグローバリゼーションか生まれてきたコンピューターやネットとか最新のコミュニケーションツールをどんどん使って、それで世界と繋がるわけです。実際、どんな小さなB&Bに行っても外国人がいます。そして改めて地域の価値を発見できるわけです。自分たちの地域に眠っている可能性をグローバルな視点で見れば、よくわかります。

断崖にへばりつくように築かれたチンクエテッレの村

(談・陣内 秀信)

イタリアの街角からスローシティを歩く「スローシティ」を視座に、路地を歩き、人々とふれあいながら、まちに眠る歴史、伝統、自然、風景を再発見。南イタリアをはじめ、蘇る都市の秘密に迫ります。イタリアの変わらぬ魅力、価値を語りながら、日本の都市における問題にも思いを馳せます。図書出版 弦書房 定価 2100円 (+税)

≪関連パンフレット≫
【首都圏発】「TANTO TANTO イタリアの旅 全14コース」

前編こちらからご覧いただけます。

投稿:朝日インタラクティブ