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機関誌「旅なかま」掲載記事など最新のトレンドがわかるブログ

旅のアクセント

2016年04月08日

旅なかま4月号 樺太と呼ばれたサハリン

〔本稿は会員誌『旅なかま』2016年4月号に掲載されたものです〕
ご新規のお客様には見本誌を無料でお送り致しますので、こちらのフォームからお申込みください。その際、「旅なかま4月号希望」とご記入下さい。なお、部数に限りがございますので、お早めにお申込みください。

樺太と呼ばれたサハリン 松平 盟子 俳人・「プチ★モンド」主宰

緑豊かな自然が残るサハリン @Wikimedia Commons

北海道よりもさらに北に位置するサハリンは、かつて樺太と呼ばれていました。
一九一五年(明治38)、日露戦争に勝利した日本はポーツマス条約により樺太の北緯五〇度以南を領土とします。いわゆる南樺太です。豊富な資源を持つその地に夢を抱いた日本人たちは、開拓と開発を目指して次々と移住したのでした。
樺太庁が置かれたのは豊原(現・ユジノサハリンスク)。駅を中心に「碁盤の目」状に都市整備された美しい街並みは札幌と同様ですが、豊原という地名の美しさ豊饒感からは日本人の夢と期待が大きく託されていたことが察せられるのです。大正期には四十二万人にまで人口が膨らんだそうです。
しかし第二次世界大戦後、日本の敗戦によって豊原を含む南樺太はソ連の統治下に入ります。現在に至るまでその状況は続き、パスポートを所持しなければ行けない場所になってしまいました。
これは残念なことに、日本人の関心をサハリンの地からすっかり遠ざけてしまったようです。私たちはサハリンに殊更なイメージを抱きにくくなっているのです。
だからこそ今、サハリンの魅力を見直してみたいと思います。かつてサハリンを旅した文学者も決して少なくありません。彼らが書き残した、日本本土とはまったく違うその地の面白さを追体験し、現代のサハリンとの新しい出会いを見出してみたいものです。

三人の文学者とサハリン

樺太を旅した文学者には、たとえば『放浪記』の作者・林芙美子もいますが、今回のツアーでは詩人、俳人を含む詩歌ジャンルの三人を対象としました。
短歌・詩・童謡など幅広く活躍した北原白秋。詩と童話に独自の世界を開いた宮澤賢治。硬質で色彩感ある俳句で知られる山口誓子。
この三人はなぜ樺太の地に足を踏み入れたのでしょう。そこにどんなドラマがあったのでしょう。彼らは何を感じ、どんな作品を残したでしょう。そのさまざまを探りながら、実際に日本の本土とは自然も風土も異なるこの地に新鮮な発見をしたいものです。

左:山口 誓子 真ん中:宮澤 賢治 右:北原 白秋

私が担当する白秋について、少しだけお話してみると、彼が樺太を船で訪れたのは一九二五年(大正14)八月。千葉は印旛沼の歌人・吉植庄亮と鉄道省主催の観光団の一員として赴いたのですが、二週間の旅中には樺太の陸路横断も果たし、海豹島にまで足を延ばしています。ワクワク感で一杯の旅の模様は、紀行文集『フレップ・トリップ』(岩波文庫)に存分に描かれています。
冒頭部に幾度も繰り返される「心は安く、気はかろし、/揺れ揺れ、帆綱よ、空高く……」。心の高ぶりが伝わって来ます。
「ただ未だ見ぬ北方の煙霞に身も霊もうちこんで見たかったのである。ほとんど境涯的にまで、そうした思邪気の旅ごころを飽満さしたかったのだ。南国生れの私として、この念願は激しい一種の幻疾ですらあった」
「ハロウとでも呼びかけたい八月の朝凪」
福岡県柳河を出身地とする白秋ゆえに、北の大地への憧憬は格別だったのでしょう。文章の浮き立つような陽気さは、白秋の生涯を通して他に見ることはできません。妻と幼い子供二人を小田原に置いての旅は、あるいは家族への報告でもあったかもしれません。
私自身もまた今回のサハリンの旅はとても楽しみです。白秋が体験した九〇年前の樺太との比較もしてみたいと心が弾みます。

旧拓殖銀行/ユジノサハリンスク
州立郷土博物館/ユジノサハリンスク @Wikimedia Commons
著者紹介 松平 盟子 略 歴:1954年、愛知県生まれ。南山大学国語国文学科卒。歌人、与謝野晶子研究家。Eテレ「NHK歌壇」元選者。日本芸術家協会会員。 歌人としての活動:歌誌「プチ★モンド」代表(創刊1992年~)。角川短歌賞。歌集に『帆を張る父のやうに』、『シュガー』、『プラチナ・ブルース』(河野愛子賞)、『天の砂』、『愛の方舟』など。エッセイ集に『パリを抱きしめる』。他に『百人一首 練習帳』『こども短歌教室』など。 与謝野晶子研究家としての活動:「パリにおける与謝野晶子の足跡と業績」をテーマに国際交流基金を受けパリ第7大学に研究留学。著書に、『母の愛 与謝野晶子の童話』、歌集『みだれ髪』評伝・解説、『風呂で読む与謝野晶子』。

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投稿:朝日インタラクティブ