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機関誌「旅なかま」掲載記事など最新のトレンドがわかるブログ

旅のアクセント

2015年10月30日

旅なかま9・10月号 システィーナ礼拝堂の魅力を語り尽くす

タイトル 旅なかま9・10月号 システィーナ礼拝堂の魅力を語り尽くす

〔本稿は会員誌『旅なかま』2015年9・10月号に掲載されたものです〕

ご新規のお客様には見本誌を無料でお送り致しますので、こちらの資料請求からお申込みください。その際、「旅なかま9・10月号希望」とご記入ください。なお、部数に限りがございますので、お早めにお申込みください。

システィーナ礼拝堂の魅力を語り尽くす

3月に実施する「ヴァチカンの至宝貸切見学」で解説をお願いする塚本博先生に「システィーナ礼拝堂」の魅力を伺いました。現地でこそわかる、その偉大さとは?

システィーナ礼拝堂 3つのパート

システィーナ礼拝堂

鹿野(以下し):これまで朝日旅行ではいろいろな美術館の貸切見学を実施してきました。「システィーナ礼拝堂」も2度目ですし、「ウフィッツィ美術館」「ボルゲーゼ美術館」と、多くのところを貸切見学してきたわけですが、やはり「システィーナ礼拝堂」は一番貸切のメリットが大きいと思います。理由は、通常はとても混雑していて、ゆっくり見ることができない、ガイドさんの説明も聞けない、と制約が多いからです。貸切だとその制約はなくて、先生に十分に解説していただけます。今から楽しみですが、最初に「システィーナ礼拝堂」について予備知識を少しお伺いできますか?

塚本先生(以下つ):「システィーナ礼拝堂」は、絵画の見どころが、時代ごとに3つのパートに分かれています。最初は1480年代、初期ルネサンスのころに側壁の右側・左側の連作が描かれます。これは相当な量で、画家のペルジーノ、ボッティチェリ、ギルランダイオなど当時の一流の芸術家が選ばれて、制作しました。内容は、キリストの物語、モーセの物語です。これは後の盛期ルネサンスと異なり、初期ルネサンス的な「物語る」、つまりキリストやモーセの話を、時間の経過とともに、詳しく「物語る」という性格の壁画です。その次が16世紀、盛期ルネサンス、1510年くらいですね、天井画が描かれます。これはミケランジェロがほとんど独力で描いたもので、ここで初期ルネサンスから盛期ルネサンスに、美術のスタイルが大きく変わってきます。何が一番違うかというと、表現の仕方です。物語るという要素以上に、人物を大きくとらえて、非常に調和のとれた画面になっています。そして第3に1530年代、ミケランジェロが「最後の審判」を祭壇側に描きます。この3番目と2番目の間にヨーロッパ全体では、ルターの宗教改革(1517年)や農民戦争など、様々な大事件が起こります。ミケランジェロは当然それを知っていますから、そういった混乱した時代を絵画の中に映し出したように、天国と地獄を表現しています。

:よく見ると、非常に暴力的だったりするわけですよね、這い上がろうとする人を天使が地獄にたたき落としたり。

:特に地獄の場面が激烈ですね。15世紀に比べると、ヨーロッパ全体が嵐の中にあるわけですから。それは、ある意味では、もうルネサンスではなくて、そこからはみ出したマニエリスム、新しい時代の現れ、始まりでもありますね。

彫刻家ミケランジェロの「絵画」

創世記の物語を囲む裸体画

:2つ目の天井画ですが、ミケランジェロは天井に直に描いているわけですね。普通では考えられませんが。

:あの天井画はキャンバスに向かって描くのではなく、礼拝堂という三次元の、それも天井画ですから、構図のバランスがとても重視されます。天井全体をデザインするわけで、中央に創世記、旧約聖書のテーマが展開している。そして創世記の物語を、周りから青年の裸体画、美術用語でイニューディー(ignudi)といいますが、それが取り囲んでいます。このあたりが彫刻家ミケランジェロらしいところです。

:あの沢山の裸体画は物語とは直接関係ないわけですね?

:関係ないです。ミケランジェロの彫刻が絵になって、創世記の絵を枠づけているわけです。ですから、創世記の物語を詳しく見ると同時に、裸体像を併せて見ることが、非常に大事ですね。

:それまでミケランジェロは彫刻が中心でしたね?

:ミケランジェロは最初画家であるギルランダイオの工房に弟子入りしました。ギルランダイオはボッティチェリと並ぶ人気作家です。だからミケランジェロは少年期に、その工房で絵画のテクニックはある程度学んでいます。ウフィッツィ美術館に、中期の作品で「聖家族」(トンド・ドーニ)がありますが、これが同時期のダ・ヴィンチの作品とは、決定的に違っていて、マリアとかイエスの輪郭線が非常にくっきりとしていて、彫刻を絵画に置き換えたようなスタイルなんですね。絵画だけれども、そこには彫刻家としての感性が反映されています。「絵になった彫刻」と説明されることもあります。

旧知の間柄 塚本先生(右)と鹿野(左),「聖家族」

重要な「見る位置」貸切の醍醐味

:「システィーナ礼拝堂」に戻りますが、見学のポイントはどういった点でしょう

:やはり大きな空間ですから、どの位置から見るかというのは、非常に重要です。面白いことに、入口側と祭壇側では、天井画の見え方が全然違うんです。入口側から見ると、天井が湾曲しているので、連続的に物語が見えます。ところが、祭壇側から見ると、絵が逆さになって見えます。おそらくミケランジェロは、どの位置から見るかということも含めて、天井画を描いていますね。あとは、たとえばヨナの位置が重要です。

:魚に飲みこまれてしまうヨナですね。

天井画のポイント・ヨナ

:創世記の隅にいます。それを最初に発見できると、ヨナの視線にあわせて天井画に入っていけます。ヨナの視線の先に天地創造の神がいます。逆にいうと、ミケランジェロは「ヨナから見てください」と言っているのかもしれない。

:私は何度もシスティーナ礼拝堂を見ていますが、全く気が付かなかったです。

:普段は中で説明ができませんし、仮にあの位置から見た方がいいとわかっていても、混んでいて簡単には移動できませんから、難しいですね。

:貸切だとそれができますね。

:私も普段解説できない分、沢山お伝えしたいですね。創世記の物語はもちろん、歴史的な順番なり、テーマなりを、是非解説したいです。それから、見るポイント、この位置から見るとこう見えますとか、この位置からだけこれが見えますとか、現場でないとお伝えできないことを、是非お話ししたいですね。そして、実際にその位置からみていただきたい。その視点で見て、初めて、天井画の芸術性を十分に鑑賞することができるわけですからね。

システィーナ礼拝堂

ルネサンスの精神と「アテネの学堂」

アテネの学堂

:ミケランジェロに天井画を描くよう命じた教皇ユリウス2世は、同時期にラファエロにヴァチカンの執務室の絵を描かせています。俗な想像ですが、ミケランジェロとラファエロは、お互いの作業を見たりしたことはなかったのでしょうか?

:あったでしょうね。たとえば、ラファエロはミケランジェロが気になってしょうがなくて、ある時、制作途上の「システィーナ礼拝堂」を見て、非常に感銘を受けて、あの「アテネの学堂」にミケランジェロを登場させたと言われています。

:「アテネの学堂」の部屋(ラファエロの間)は、教皇の居所、執務室ですよね、そこになぜ、キリスト教の絵ではなく、ギリシャ哲学の絵があるのでしょうか?

:これがルネサンスの面白いところで、掘り下げると、ルネサンスの一番大事なところにたどりつく。それは何かというと、もともと古代は、ギリシャ神話やローマ神話という「異教」の世界だった。でも、ギリシャ哲学とかきちんと読み返してみると、そこにはしっかりとした思想が書かれている。そして、その思想はキリスト教の精神と結びつける必要があるということを、ルネサンスの文化人は考え出したわけですね。教皇の側も古代の精神とキリスト教の精神を融合させようとして、それを画家に求めた。だから、ラファエロもそれに応えて、尊敬するダ・ヴィンチやミケランジェロといった同時代の芸術家の姿を、ギリシャ時代の思想家に似せて「アテネの学堂」に登場させた。そういった精神性も含めて「アテネの学堂」はラファエロの最高傑作と言われているんですね。

「神なる芸術家」ミケランジェロ

:「システィーナ礼拝堂」は、先に部屋ができていたところに描いたわけですが、制約も多かったでしょうね。

:そこが、ミケランジェロの芸術家としての器の大きいところですね。たとえば、フィレンツェにある「ダビデ像」も、もともとは先輩彫刻家ドゥッチョが手掛けて放置されていたのを、ミケランジェロが引き受けて完成させました。システィーナも前の時代に建物が完成して、天井にも星空とか装飾があったんです。そういった制約を与えられ、その条件の上にたって、あれだけの天井画・壁画を描いたわけですね。

:条件を壁としないんですね。

:天井が湾曲しているのも、別にミケランジェロが作ったわけではないですよね。だからそれを見上げて、どうやって、その湾曲している空間を絵で埋め尽くすか考えた。いくつかの区画に分け、その順番も考えて、自分の芸術を創り出していったわけです。その器の大きさというのが、ミケランジェロが「神なる芸術家」として多くの人々に支持され、認められていく大きな要因だったと思います。

:改めて凄さに感服します。

:一作ごとに高い階段を上っていますよね。ピエタ、ダビデ、システィーナと。

:ピエタは、大聖堂で見学します。

:あのピエタはミケランジェロが20代の頃の作品で、芸術的にも宗教的にも最も完成されたピエタと言われています。そういう作品と、「システィーナ礼拝堂」を同時に見学できるということは、素晴らしいことだと思います。

(次号につづく)

塚本 博氏の横顔

◎関連コース:<成田発>「システィーナ礼拝堂とヴァチカン美術館」貸切見学 全8コースこちらよりご覧ください。

 

◎関連コース:<関空発>「システィーナ礼拝堂とヴァチカン美術館」貸切見学 全2コースこちらよりご覧ください。

 

投稿:朝日インタラクティブ