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機関誌「旅なかま」掲載記事など最新のトレンドがわかるブログ

旅のアクセント

2017年01月31日

旅なかまVol.276 北スペイン・レオン 珠玉のロマネスク美術

〔本稿は会員誌『旅なかま』2017年1月号に掲載されたものです〕
ご新規のお客様には見本誌を無料でお送り致しますので、こちらのフォームからお申込みください。その際、「旅なかま1月号希望」とご記入下さい。なお、部数に限りがございますので、お早めにお申込みください。

2017年・7月 北スペイン・レオン 珠玉のロマネスク美術 パンテオン貸切見学と特別セミナー 美術史家 池田 健二氏 聞き手 鹿野真澄

レオン市長 アントニオ・シルヴァン・ロドリゲス  朝日旅行の皆様、レオンへようこそおいでくださいました。  古くから、ヨーロッパやアメリカのお客様たちからは、歴史や文化、グルメの中心地としてその名を馳せておりましたが、日本の皆様にはまだ十分に知っていただいていない場所も多いかもしれません。是非、この機会に楽しんでいただきたいと思います。  また、サン・イシドロの特別貸切見学は、これまで他の一般のお客様には行われておりませんでした。今回、特別に朝日旅行の皆様がその機会を得られたことに、大きな喜びを感じております。   また、カスティーリャ・イ・レオン州は高地になるため、7月でもそんなに暑くはありません。スペインの光と影を感じていただくのと同時に、奥の深いカスティーリャ・イ・レオン州の文化、歴史、グルメも、是非ご堪能ください。

鹿野 本日は美術史家・池田健二先生のご自宅にお邪魔しています。先生のご専門は中世ヨーロッパで、とりわけロマネスク芸術の専門家として著書も多く、現場にも30年来足を運んでいらっしゃいます。朝日サンツアーズでは今年の夏、特別企画としてスペイン北部の都市レオンにて特別貸切見学と池田先生のセミナーを開催することになりました。本日は、ロマネスク芸術と特別見学予定のサン・イシドロ教会にある天井画・パンテオンについてお話をお伺いします。ところで、昨年の夏に先生は個人旅行で北スペインを回られたということですが、その辺りから話をお願いします。

スペインは、今が行き時 旬!

池田 私がスペインを個人で訪れるのは久しぶりのことでしたが、その変化の大きさに驚きました。何がどうかというと、私が知っている20年・30年前のスペインは、フランスに比べて少し古めかしくて、それが魅力なのですが、不便なところという印象を持っていました。
それが今回行きますと、どこへ行っても非常に整備が行き届いて、きれいになっているわけです。観光をするという点においては観光がし易くなったといえます。ホテルは以前ですとパラドール以外は心配で泊れなかったのですが、今はホテルが良くなり、修道院の中に宿泊施設ができたりして、まるで民間のパラドールのようです。次に食べ物ですが、以前はなんと言うか、同じような味が大量に出てきて、困ることがありました。これもEU基準なのでしょうか、盛り付けもお洒落になり、味もよくなりました。バールに入りますと、ピンチョというおつまみがたくさん並んでいて、バリエーションも非常に増えました。食という点においても楽しめるのではないでしょうか。そして更にうれしいことは、物価がフランスやイタリアと比べて安いのです。フランスの半分ぐらいでしょうか。
あと治安がどうかという質問がよくあります。これは移民によるところが大きいのですが、北アフリカからの移民は大抵は南スペインや、マドリード、バルセロナなどの大都市に限られ、北部の都市で移民の姿を見かけることはほとんどありません。安全できれいになったスペインを美味しいものを食べながら旅行をしていただけるという状況になっています。
しかし、こうした情報が余り知られていなく、観光客はそれほど多くありません。これもよい点かなと思います。この夏スペインを巡って、そのようなことを感じました。今が行き時、旬だと言えます。

池田健二氏

鹿 今、お客様はヨーロッパに行くのが何となく不安という中で、お勧めだということですね。さて、北スペインへ行きますと南とは違う、濃密なキリスト教文化の足跡がよく残っています。先生はヨーロッパ各国、特にフランスやイタリアのロマネスクをたくさんご覧になられ、北スペインのロマネスクとどう違いますか。

プレロマネスクがあるスペインロマネスク

 そうですね。スペインの歴史というものがスペインの文化的個性を生んだと思います。基本的には古代ローマの支配時代は他と変わりませんが、その後、ゲルマン人の侵入があり、スペインでは西ゴート族が国を建てました。そこから先に大きな違いが生じました。8世紀に北アフリカからイスラム勢力が渡ってきて、スペインの大半の地域、実際には一番北と東の端だけはキリスト教の勢力ですが、それ以外はイスラムの支配下に入ったわけです。しかし、そのままではなく、いわゆるレコンキスタ=国土回復運動が始まり、これはとりわけ北と東に残った勢力から始まって、だいたい10世紀頃までにドゥエロ河辺りまでレコンキスタが進みます。その頃、南にいたキリスト教徒が北に逃れてくるのです。彼らはモサラベと呼ばれ、10世紀にモサラベ様式という独特のロマネスクの前に、プレロマネスクの様式の教会を建てていきます。それより少し前、レコンキスタを始めたアストリアス王国で独特の様式が生まれて、9世紀を中心にプレロマネスクの教会が建てられました。更に遡っていくと、西ゴートの時代に、西ゴートは元々異端派のキリスト教徒でしたが、6世紀末には正統派のアタナシウス派というローマと同じキリスト教徒に改宗し、7世紀になると教会を建てました。従いまして、7世紀の西ゴート、9世紀のアストリアス、10世紀のモサラベと三段階のプレロマネスクが残っているのも、スペインならではの魅力ではないかと思います。

鹿 サンチャゴ巡礼路はフランスからの影響を大きく受けたと思いますが、それ以前にあったものとの融合が、スペインロマネスクの魅力と言ってよいのでしょうか。

 そうですね。観光的に考えれば、南のアンダルシアにはイスラム建築があり、北ではサンチャゴ巡礼を通じてキリスト教スペインの魅力が再発見されてきたわけですが、まだまだと言えます。本当は巡礼路だけではなくて、地域とすればカスティーリャ・イ・レオンを中心として非常に数多くのロマネスク教会がありますが、実はあまりよく知られていません。
スペイン人自身が今世紀に入って自分たちの国にこんなに素晴らしいロマネスクがあるということを再発見し、その紹介が始まっているのが今の段階であろうと思います。

鹿 スペインの近代においては、鎖国とは言いませんが他国からスペインはあまり知られていなかったと思いますが。

 スペインの黄金期は二回あって、ひとつは11、12世紀にレコンキスタが進みサンチャゴ巡礼が盛んになった頃、もうひとつは16世紀のカルロス1世とフェリーぺ2世の大航海時代で、スペインが世界帝国となった時代です。スペイン人は16世紀の大聖堂だったり、とりわけバロックの黄金の祭壇にしか興味がありませんでした。やっと、最近ロマネスクに関心を持つようになり、実は今スペインではロマネスクブームなのです。まだ研究が追いつかず、研究者が発表したものよりもアマチアの方の情報が中心になっています。
バロックが好きなスペイン人というのは、教会での教育のせいでしょうか。実際には1970年代までのフランコ政権は教会との結びつきが深く、あの時代の独特な雰囲気がありました。その時代が終ってEUの時代となり、EU各国でロマネスクが再発見されたように、スペインの中で同じことが興きています。

鹿 そろそろ本題に移りますが、スペインに入ってサンチャゴ巡礼路の中間点より少しサンチャゴよりにレオンという街があります。そこにあるサン・イシドロ教会のパンテオンについて話をお伺いします。

ロマネスク壁画の至宝パンテオン

パンテオンの壁画 天使

 まず、レオンという街ですが、先ほどのレコンキスタの歴史と深く係っていて、最初は北のオビエドを中心としたアストリア王国が、8世紀、9世紀に活発にレコンキスタを進めていきます。南に下っていくとその拠点も南に移すこととなり、10世紀始めにアストリアス王国の都をオビエドからレオンに移したわけです。
それ以降はレオン王国ですが、元々は同じものです。そしてレオンを拠点としてレコンキスタを南へ南へとトレドに向けて進めて行きます。
レオンは都となり、そのために王たちを埋葬する場所、霊廟が必要となりまして、そこで定められたのがサン・イシドロ教会であった訳です。レオンにはもちろん後にゴシックの大聖堂が建てられますが、修道院の教会であったサン・イシドロ教会の方に墓所が置かれました。そして、11世紀に建てられたこの教会のナルテックスの部分に棺が並び、特別な聖なる場所となりました。そして12世紀の中頃に当時の最高の画家たちが集められ、壁画、実際は天井画が描かれたのです。
その画風、作風はどこのものとも違うのです。たとえば、スペインで有名な壁画といえば、カタルーニャ地方のタウルのサン・クレメンテ教会のキリストです。大変個性的で素晴らしい訳ですが、それとは全く違った画風で描いています。その壁画の題材は「荘厳のキリスト」ですが、パンテオンはキリストの降誕、受難の物語、最後の審判の図で、図像の展開が非常に豊かである点もこの天井画の特徴と言えます。双方の壁画ともほぼ12世紀の中頃に描かれましたが、タウルが少し早く、パンテオンが少し遅いといわれています。しかし、パンテオンにその影響は見られません。したがってパンテオンの壁画は各地から画家を集めて描いたものであり、ロマネスク世界、フランス・イタリア全てを見渡しても最も優れたもののひとつであることは間違いありません。

鹿 王廟ということで王権を権威づける図像はありませんか。

 そうですね。とりわけ、王権を強調する図像というのはなく、「荘厳のキリスト」の像は唯一の支配者を示すということで、王権を象徴するものと言って間違いない訳ですが、他は非常に優しいタッチでキリストの降誕の物語が描かれています。全体のタッチの特徴は、これはロマネスク芸術全体に言えることですが、いかめしいというよりも非常に優しく柔らかな画風に特徴があるのではないかと思います。にもかかわらず、非常に荘厳であり、広い天井面でありますが、巧みに場面が配置されています。そして全体を装飾的なもので連続させて一体感があり、それも素晴らしい点です。

鹿 私の印象では本当に間近と言うか、目の前で壁画を見ることができますよね。

 対象との距離ですね。おっしゃる通り、たとえば、ヴァチカンのシスティーナ礼拝堂であれば、もちろん素晴らしいのですが壁画までの距離がかなりあります。レオンの場合は手を伸ばせば、届きそうなところにあり、むしろ近すぎて、しゃがみ込んで、お棺に座ってはいけませんけど、淵に座って見上げるのが一番いいですね。

鹿 そういう意味では、知る人ぞ知る貴重な作品と言えると思いますが、もっと評価されてもいいのではないでしょうか。

 ひとつ、中々広がっていかない理由として写真の撮影が厳しいということがいえます。今の時代ですから、携帯で撮って簡単に広がるわけですが、一切撮らせません。一般の観光客が自分で撮って広められない場所であり、これも意外に知られていない理由だと思います。

鹿 そして、レオン近郊にモサラベ様式のサン・ミゲル・デ・エスカラダ教会がありますが、これとの関係はどうなのでしょうか。

サン・ミゲル・デ・エスカラダ教会 外観

サン・ミゲル・デ・エスカラダ教会 内部

 サン・ミゲル・デ・エスカラダ教会は10世紀のモサラベ建築の傑作といえます。レオンから30分で行け、田園の中に孤立して残ってますが、いわゆる馬蹄形アーチという上が広がったアーチ、これは実際にはモサラベ建築だけではなく、その前の西ゴート建築にも使われ、そしてイスラム建築にも非常に多く使われており、何故、三者が同じアーチを好んだかは説明が難しいわけです。しかしながら、モサラベはイスラムの世界から逃れてきたキリスト教徒であると考えれば、やはりイスラム世界で自分たちがいつも見ていた形を持ち込んだということが言えます。
しかしその一方で、モサラベの様式というのは、実際にはイスラムに滅ばされた西ゴートをもう一度甦らせるという意味もあったといわれております。もちろん、西ゴート時代にも馬蹄形アーチがありました。したがって、西ゴート、イスラムの二つに源泉を求めることができるのが、モサラベの馬蹄形ではないかと思います。
サン・ミゲル・デ・エスカラダ教会ほど一貫してあらゆるアーチが馬蹄形になっているのは他に類が見ません。たとえば、南側のポーチも全て馬蹄形アーチ、そして教会堂の中は三廊式のバシリカなのですが、その空間を仕切るのも全て馬蹄形アーチ。あと柱頭彫刻も魅力的ですね。柱頭も同じことが言え、モサラベの柱頭というのはイスラムや西ゴートの文様とも似ています。

鹿 まさにスペインのロマネスクを見る上で、見ておくべき大切なものと言えますね。

 レオンのパンテオンの壁画が、12世紀のスペインを代表する作品であるとすれば、その前の10世紀、モサラベの最高傑作がサン・ミゲル・デ・エスカラダ教会であるわけです。この二つの傑作が僅か30分の距離にあるということは素晴らしいことですね。

鹿 本日はありがとうございました。ぜひ、今年の夏、先生とご一緒に、また、いろいろなコースがありますので皆様の好みに合わせてぜひ、ご参加いただきたいですね。

 レオンのパンテオンを貸し切って見るということは、これまで日本では行われたことはないし、世界でも初めてではないかと思う試みです。これ以上の贅沢はないと思いますので、ぜひとも皆さんとご一緒したいと思います。

ゾディアック叢書他専門書でいっぱいの書斎にて

池田 健二氏 1953年、広島県尾道生まれ。美術史家 30年以上にわたり、ヨーロッパ全地域のロマネスク教会を詳細に調査。 カラー版中公新書

スペインの写真 池田健二氏提供

7月23日

レオン パンテオン貸切見学とロマネスクセミナー

10:00
レオン郊外、モサラベ建築の最高傑作「サン・ミゲル・デ・エスカラダ教会」見学。
12:00
かつての騎士団の館を改装した5ツ星パラドール「サン・マルコス」にて、池田健二氏によるパンテオン事前セミナー開催
引き続き、パラドールサン・マルコスにて昼食
16:00
閉館後、サン・イシドロ教会内にある王家の廟「パンテオン」と宝物館の貸切見学
2グループに分かれてパンテオンと宝物館を交互に見学します(約1時30分)
教会内の回廊にて、歓迎レセプションを開催
その後、赤を基調としたステンドグラスで有名なレオン大聖堂見学。
19:30 ホテル

2017年7月発 全5コース

1. 〈美の旅〉サンチャゴ巡礼路を行く ル・ピュイの道

7月15日(土)~7月28日(金)14日間 668,000円

「フランス人の道」のル・ピュイを出発し、コンク、モワサックの名刹を経由し、ピレネー越えてスペインに入り、一路サンチャゴへ至る「ル・ピュイの道」のルートを辿ります。

2. 〈美の旅〉サンチャゴ巡礼路を行く 緑の北スペイン (東京・大阪発着)

7月17日(月)~7月28日(金)12日間 588,000円

バスク地方のビルバオを出発し、カンタブリアの海ルートに残るロマネスク教会、アストゥリア様式のプレロマネスク教会群、そして本道のレオンからサンチャゴへの道を辿る。

3. 〈朝日移動教室〉カスティリャ・イ・レオンロマネスク探訪の旅

7月17日(月)~7月31日(月)15日間 658,000円

美術史家・池田健二氏が同行し、カスティリャ・イ・レオン州に残るプロマネスクからロマネスクの教会群を踏破。

4. カスティーリャの古都めぐり

7月20日(木)~7月29日(土)10日間 468,000円

スペイン中央部・カスティリャの大地に重層な歴史と独特の景観を持った選りすぐりの8都市を巡り、レオンにて特別見学に参加。

5. 〈音楽の旅〉 マドリード・バルセロナオペラ鑑賞の旅

7月20日(木)~7月27日(木)8日間 568,000円

マドリードのテアトロレアル劇場とバルセロナのリセウ劇場にて、イタリアオペラを鑑賞とレオンにて特別見学に参加。

※総合パンフレットは1月末に完成予定です。パンフレットをご請求ください。

投稿:首都圏発海外旅行担当