出発地を選択してください。出発地はいつでも変更できます。
出発地を選択してください。
×
MENU

機関誌「旅なかま」掲載記事など最新のトレンドがわかるブログ

旅のアクセント

2018年08月29日

旅なかまVol.295 メディチ家とウフィッツィ美術館

〔本稿は会員誌『旅なかま』2018年Vol.295に掲載されたものです〕
ご新規のお客様には見本誌を無料でお送り致しますので、こちらのフォームからお申込みください。その際、「旅なかまVol.295希望」とご記入下さい。なお、部数に限りがございますので、お早めにお申込みください。

メディチ家とウフィッツィ美術館(東京大学大学院総合文化研究科教授 池上俊一)
295-22

15世紀のフィレンツェ

295-23

メディチ家の紋章

ルネサンスと言えばフィレンツェ、そしてフィレンツェと言えばメディチ家と、すぐ口を衝いて出てくるほどこの三者には密接なつながりがある。フィレンツェ観光に出掛ける人々は、そう思い込んで美の都を目指すのだろう。
しかし、私たちが現在フィレンツェを訪れて感嘆する美しい建築や芸術作品には、メディチ家とは直接関係のないものも多いことに注意したい。そもそもサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂は、クーポラを除けば基本的にゴシック建築だし、ヴェッキョ宮殿もそうである。他の多くの教会や修道院も中世に遡り、市当局や同職組合が出資して造られていった。メディチ家が実権を握った15世紀後半になってからも、メディチ家以外の有力家門もすばらしい邸館(パラッツォ)を造り、また才能ある彫刻家・画家のパトロンとなって多くの作品が生み出された。もちろん最大のパトロンがメディチ家であり、他の家門はその顔色を窺いながら振舞っていたことは否定しようがないのであるが。
私は近著『フィレンツェ―比類なき文化都市の歴史』(岩波新書)を書いたとき、メディチ家を過大視する世間の通念を修正したいと密かに願っていた。しかしながらウフィッツィ美術館のことを考えると、やはりメディチ家に感謝せずにはいられない。

295-24

メディチ家礼拝堂

ウフィッツィ美術館は、初代トスカーナ大公になったメディチ家のコジモ一世(在位1569~1574年)が、画家・建築家のジョルジョ・ヴァザーリを総監督に任じ、当時を代表する芸術家を起用して造られたものである。じつはそれは最初美術館ではなくて、その名の通り「オフィス」Uffizi ビル、すなわち総合行政庁舎であった。それまで市内各所に散らばっていた司法・行政の役所、そして議会を、小さいながら中央集権的な絶対主義国家にふさわしいように一所にまとめてしまおう、との企てであった。完成は1580年である。
ところがここをギャラリー(画廊)にして、その美の力でメディチ家の国際政治上の威信を高めようというアイディアが、コジモ一世を継いだ息子のフランチェスコ一世(在位1574~1587年)の頭に浮かんだ。そしてすぐさま役所の上階に、お抱え建築家のブオンタレンティによってギャラリーが造られたのである。当初はメディチ家の私的な施設であったが、10年後には一般の見学も許されるようになった。このフランチェスコの目論見は見事あたり、その後数百年、一族や傍系親族が各自のコレクションを持ち寄り、絵画・彫刻、素描・版画、タピスリー、考古学的遺物、メダルなどが充実していったし、それがメディチ家とフィレンツェの国際的評価を高めつづけたのである。

295-25

コジモ一世

もう一人の功労者は、パラティーナ選帝侯妃アンナ・マリア・ルイーザ(ルドヴィーカ)である。弟のジャン・ガストーネ(在位1723~1737 年)がメディチ家最後の大公として嗣子を残さず亡くなると、フィレンツェの支配は、ハプスブルク・ロートリンゲン家へと移ることになった。アンナ・マリア・ルイーザはメディチ家伝来の夥しい芸術品を一手に相続したが、それを1737年、永久に―今やメディチ家の手を離れた―トスカーナ大公国に寄贈したのである。ただし大切な条件を付けた。それは断固として、誰であ
れこれらの芸術品はフィレンツェの外に持ち出してはならない、という条件である。その迫力ある厳しい要請に逆らえる者はおらず、その後はヒトラーが大がかりな窃盗を働いた(ほとんど取り戻された)以外、誰も手を付けられなかったのである。
一族の多くに優れた芸術鑑識眼があり、巨万の富を芸術に投じることを支配者の任務と考え、さらにフィレンツェという都市を愛しつづけたメディチ家は、功罪ともにあるとはいえ、芸術・文化の観点からするとやはり偉大であった。(池上 俊一)

295-26

Profile
池上 俊一(いけがみ しゅんいち)
1956 年愛知県生まれ。2002 年より東京大学大学院総合文化研究科教授。
イタリア、フランスを中心に中世・ルネサンス期の文化史・心性史を研究している。
『フィレンツェ 比類なき文化都市の歴史』の他、著作多数。

「ウフィッツィ美術館」を貸切見学!
贅沢な時間 名画の前で静かなひと時を

 来年3月18日(月)、美術館の休館日にウフィッツィ美術館の貸切見学をします。
2019年はレオナルド・ダ・ヴィンチの没後500年にあたり、ダ・ヴィンチを始め、ルネサンス絵画がひときわ注目される1 年となります。ウフィッツィ美術館は、ダ・ヴィンチの3 作品の他、初期ルネサンスのジョットーから盛期ルネサンスのボッティチェリ、ラファエロ、ミケランジェロ、そしてティツィアーノを始めとするヴェネチア絵画、カラヴァッジョなどのバロック絵画までイタリア絵画の最高芸術を所蔵する美術館で、貸切ってゆっくり鑑賞することにより、たいへん贅沢な時間を体験いただけます。ウフィッツィ美術館はコの字形で2階と3階に分かれていますが、ここ3~4年で絵画の展示が大幅に変わり、多くの作品が3 階から2 階に移りました。たとえば、ダ・ヴィンチの3点だけを展示する特別室やティツィアーノの部屋が新設され、ボッティチェリの作品もレイアウトが変わるなど、スペースが広くなった分、ゆったり鑑賞していただけるようになりました。また、かつて館内の写真撮影は禁止されていましたが、自由に撮影ができるようになりました。
貸切見学の直前には、ルネサンス美術がご専門の塚本博先生による事前レクチャーをお聴きいただき、より充実した名画の鑑賞を楽しみいただきます。以前、美術館を訪れた方にも、新たな感動を得ていただけるでしょう。

3月18日(月) ウフィッツィ美術館貸切見学 スケジュール 

14:00~15:20 塚本博先生による講座「ウフィッツィ美術館の楽しい名画鑑賞」
(ベルニーニパレスホテル内大広間にて)
終了後、ウフィッツィ美術館へ移動。(徒歩約5 分)
16:00~18:00 貸切にて、自由に名画鑑賞(約2 時間)
18:00~18:30 ミュージアムショップにてガイドブック等をご購入ください。
18:30     終了予定。

※全ての画像はWikimedia Commons 提供です。

来年3月の「ウフィツィ美術館貸切見学ツアー」発表を記念して、記念講演会を開催いたします。

詳細はこちらからどうぞ!

ウフィッツィ美術館貸切見学ツアー ラインナップはこちらからどうぞ!

 

 

投稿:首都圏発海外旅行担当