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機関誌「旅なかま」掲載記事など最新のトレンドがわかるブログ

旅のアクセント

2011年01月14日

2011年1月14日 「旅なかま」2011年1月号 巻頭インタビュー

鹿野海外旅行部長と作家・井形慶子さん

~風景の中に暮らしを見る~

近年、「英国式」という言葉が身近になり、生活スタイルや庭づくりなどに取り入れる方が増えています。また、コッツウォルズなど田舎を訪ねるツアーも不動の人気があり、日本人のイギリスに対する興味が高いことを感じます。イギリスに関する著書がベストセラーにもなり、講演会なども多数行っている作家の井形慶子さんにインタビューをさせていただきました。美しい風景だけでなく、その奥にある魅力をみつける旅とは・・・

[左:海外旅行部 部長 鹿野 真澄 右:作家 井形 慶子さん]

鹿野:まずは、「イギリスの風景」というとどこをパッと思い浮かべますか。
井形:おなじみですけれども牧草地と草をはむ羊、ですね。スコットランド・ハイランド地方の荒涼とした谷間や石清水などの景色、それからコッツウォルズ、ウェールズ、ヨークシャーなどもそうですね。私にとってはロンドンよりカントリーサイド(田舎)の方が、「イギリスの風景」です。
鹿野:田舎の魅力はどういうところにあるのでしょうか。
井形:日本人の田舎暮らしのイメージは、都会で頑張って働いてきた人が、自分の好きな海辺や山へ行って癒されるという感覚があるんですが、イギリス人のカントリーライフ(田舎暮らし)の楽しみ方というのは、ローカルパブやティールーム、教会に行って村の人と顔を合わせ、人と交わるコミュニティにあるんです。風景を見るというより、「暮らし」を楽しむんですね。
鹿野:すると、私たちがイギリスの田舎へ行った場合、どんなところに注目すればいいのでしょうか。

[ウェールズ。丘陵の向こうには小さな村がある。
(写真提供:英国生活情報誌ミスター・パートナー)]

ウェールズ
井形:人々の生活ぶりですね。例えば人気のコッツウォルズの村などは、そこに、草や木と同じように建っているコテージや、その庭、民家の玄関周り、ゲートの雰囲気だけでも見ていただくと、住まいと庭という関係性もわかるし、小さなスペースで人がどんなに工夫をしているかというのもわかるので、とても楽しいと思いますよ。
鹿野:最近は、日本でもガーデニングばやりで小さい庭を自分の好みにかえていくといった話も聞きますが、イギリスの庭には興味がありますからね。
井形:そうですね。イギリスでは心強いガーデナー(庭師)がいて、どんな小さなお庭でも、高齢の方は定期的にガーデナーをお願いするなどして、人の力を借りながら大事にするものなのです。
鹿野:マンション暮らしで庭のない人はどうするのですか。
井形:マンションでは共有庭というのがありますから、住人全員が庭での時間を楽しみますね。草木のお世話も管理人が一人でやるのではなくて、ベーシックなところは全部ガーデナーがやりますよね。
鹿野:なるほど。あれだけ花をたやさないで庭をきれいにするのは、工夫と努力が必要なのですね。田舎の民家と庭先に注目したいというところですね。ところで井形さんの著者のベストセラー「古くて豊かなイギリスの家 便利で貧しい日本の家」を読みますと、先生の体験からイギリス人の暮らしぶりが、日本との比較でとてもわかり易く、また痛快なタッチで描かれています。特に「家」についての考え方の相違は、私たちの想像を超えるものがあります。築60年以上の家が人気があるとありましたが、そのあたりの話をお願いします。
[コッツウォルズ地方で見た玄関周り
(写真提供:英国生活情報誌ミスター・パートナー)]

コッツウォルズ
井形:イギリス人の家に対する考え方は、日本人のものとは180度違います。イギリス人にとって家っていうのは、チーズやワインと同じように、成熟していくものなんです。家は持った時が始まりで、理想の家は手をかけ時間をかけ出来上がるものという概念があるんですね。私たちは、家というのは新しいものがよくて、機能性とか利便性というものを追求してきましたよね。そこがまったく違う。なぜ60年より100年、100年より200年と古くなるほど家の価値があがっていくかというと、例えばビクトリアやチューダー様式の家は、その時代でしか使われない部材?窓ガラスや梁、石材など、そういうものにより価値をおくという考えがあるんです。また、イギリスは家を簡単に取り壊しをさせないこともあげられます。例えば窓ガラス一枚取りかえるにしてもレギュレーション(規定)があって、勝手に新しいガラスに変えたりすると、役人が飛んできて「すぐに元に戻しなさい、」と厳しい。言う事を聞かなければ裁判所行きです(笑)。今回、新刊を執筆している時も、ロンドンで家を購入した時の日本では考えられない家にまつわる規制を思い出しました。
鹿野:一般的に、ヨーロッパの他の国もそういう傾向かと思いますけれど、大事にものを使うというのはかつての日本もそうだったと思うんです。私は子供の頃、ものを粗末に扱うとよく親にしかられました。戦後アメリカナイズされて新しいものや利便性を追求してきましたが、最近はイギリス人のライフスタイルみたいに質素で堅実な暮らし…って見直されてきた感じでしょうか。
井形:やはりアメリカ型の大量生産、大量消費というのは日本人の本来の性質とは違っていたと思います。バブル経済にくみこまれて、ものすごい疲れや罪悪感も伴っていたと思うんですよね。イギリスの場合はパブリックなものを大事にしますよね。家が何故こんな形で保存されてきたかと言うと、教会、公園、橋と同じように社会資産であるということで大事にしましょうと、国民みんなの資産になった。そういう考え方に日本人が気づいた時、ペンシル型のビルディングやコインパーキングだらけになって、こういう街並みは自分たちが望んでいたものじゃないと気付いたと思います。
鹿野:私たちはイギリスの田舎へは、懐かしさと、憧憬をもって行くのかもしれませんね。ところで素朴な質問ですが、イギリスは、いつがおすすめの季節でしょうか。やはりイギリスは北国ですから時期が限られてしまうと考えがちなのですが。

[写真左:自ら50代で半分イギリス暮らしに踏み切る。 写真右:B&B(民宿)のクリスマスパックは手料理ざんまい 写真提供:英国生活情報誌ミスター・パートナー)]

井形慶子さん B&Bのクリスマス井形: やはり初めての方は4月から9月くらいまでの、日の長い時期のイギリスに行かれると、バラをはじめ花が咲き誇って、なにもかもが明るくてキレイに感じられると思います。でも個人的には晩秋からクリスマスの前後が好きですね。どんな小さな村や街でも通りにクリスマスデコレーション、イルミネーションが飾られますよね。教会の鐘が鳴り響いたり…一度体感してください。それから女性にはうれしいウィンターセールも開催されますが、あれも風物詩じゃないかと。
鹿野:確かにクリスマスの頃は観光の季節ではない、普段着のイギリス人の生活が見えるのかもしれませんね。生活に密着して旅をするのは私たち観光客にはなかなか難しいかもしれませんが、最後にイギリスの旅をもっと楽しくするヒントなどを教えていただけますか。
井形:そうですね、イギリス人というのはレジャーにお金をかけないんですね。タダで豊かな時間を過ごす場が多いのも特徴です。パブリックフットパス(公的な散歩道)の標識とか、小さな村の教会などのチャーチヤード(庭)とか、入場料は無料で素敵な個人のお庭を見る。あとは大英博物館のように資産を無料で公開しているという懐の広さなど、イギリス社会の在り方も楽しんで頂きたいですね。物価の高いロンドンでも、ハイドパークをパンを持って散策すると白鳥やカモなどたくさんの水鳥が集まってきます。
鹿野:「風景」だけではなく「暮らし」の中に本当の「イギリス」が見えるという、貴重なお話をうかがいました。ありがとうございました。

PROFILE
井形 慶子(いがた けいこ)
長崎県生まれ。大学在学中から出版社でインテリア雑誌の編集に携わる。その後、世界90ヶ国に流通する外国人向けの情報誌を創刊。出版社を立ち上げ、英国の生活をテーマにした情報誌「ミスター・パートナー」を発刊する。同誌編集長。90回を超える渡英経験を通じ書き下ろした著書は多数。ベストセラーになった『古くて豊かなイギリスの家 便利で貧しい日本の家(新潮文庫)』『イギリス式月収20万円の暮らし方(講談社)』ついに50代で夢をかなえたノンフィクション「突撃!ロンドンに家を買う」(講談社)が話題に。
http://www.mrpartner.co.jp

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投稿:朝日インタラクティブ