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旅のアクセント

2011年11月30日

2011年11月30日 旅なかま12月号 巻末特集 ヴァチカンとボルゲーゼ

〔本稿は会員誌『旅なかま』2011年12月号に掲載されたものです〕

ヴァチカンとボルゲーゼ 宮下規久朗

ローマは世界の美術でもっとも重要な都市である。古代ローマの遺産は言うまでもなく、ルネサンスとバロックの都として、300年にわたって西洋美術の中心地であった。ローマには数多くの美術館があるが、それだけでなく、生きた美術館ともいうべき教会や宮殿が建ち並び、町中に美術品が満ちている。中でももっとも重要なのはヴァチカン美術館である。これはローマ教皇庁のある巨大なヴァチカン宮殿に設けられたいくつもの美術館の総称で、ピナコテカ(絵画館)やエジプト美術館もあるが、中でもミケランジェロの壁画《天地創造》と大壁画《最後の審判》のあるシスティーナ礼拝堂、ラファエロの《アテネの学堂》の壁画のある「署名の間」や「ヘリオドロスの間」、「ボルゴの火災の間」の3つの部屋(スタンツェ)は最大の見どころである。
ラファエロ アテネの学堂
それらは古代芸術の研究と現実の人間観察に基づく完璧な人体による堂々たる群像表現で、西洋絵画の最高峰として何百年にわたって繰り返し模写され、つねに美術の規範となってきた。そのため、いつ訪れても世界中から来た膨大な観光客でごったがえしているが、今回は、このシスティーナ礼拝堂とスタンツェを借り切ってじっくり見学できることになった。いずれも近年修復が終わり、鮮やかな色彩が蘇っている。巨大な壁画の間近で天才の筆づかいと息づかいを感じることができ、人類の残した最高の至宝をじっくり鑑賞できるまたとない機会である。
ローマのルネサンス美術の粋がヴァチカンにあるとすれば、バロック美術の最高峰はボルゲーゼ美術館にある。この美術館は教皇の輩出したボルゲーゼ家の別荘として建てられ、17世紀の美術収集家として名高いシピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿のコレクションを中核としている。作品群は、ボルゲーゼ家の歴代の当主たちが工夫をこらして配置・展示し、各部屋には作品と調和した天井画が描かれている。
ティツィアーノ 聖愛と俗愛
ボルゲーゼ枢機卿は、西洋美術に最大の革命をもたらした鬼才カラヴァッジョを庇護し、その作品を精力的に集めた。カラヴァッジョの最初の師であるダルピーノを逮捕させて《病めるバッカス》などカラヴァッジョの貴重な初期の作品を押収し、カラヴァッジョが教会から受け取りを拒否された《蛇の聖母》を奪取し、カラヴァッジョが行き倒れたとき所持していた《洗礼者ヨハネ》をナポリから送らせた。また、バロック最大の巨匠ベルニーニについては、彼が少年のころからその才能を見抜いて愛顧し、《アポロとダフネ》や《プロセルピナの略奪》のような西洋彫刻史上最大の傑作を制作させた。
こうしたバロックの至宝だけでなく、古代やルネサンスの傑作も揃っている。ラファエロの初期の傑作《キリストの埋葬》は、ペルージャの教会に飾られていた祭壇画であったが、枢機卿によって強奪されたもの。ティツィアーノの最高傑作のひとつ《聖愛と俗愛》は20世紀に没落したボルゲーゼ家からユダヤ富豪ロスチャイルドが大金を積んで買おうとしたが拒絶されたという。19世紀の当主に嫁入りしたナポレオンの妹パオリーナをモデルに、新古典主義の巨匠カノーヴァが制作したヴィーナス風の彫像も有名だ。
ルーヴル美術館やメトロポリタン美術館といった世界の名だたる大美術館は展示されている美術品が多すぎて、一度に全部見ることは不可能である。それに対し、この美術館はほどよい点数で、しかも粒ぞろいであり、世界最高の美術館だという評論家もいる。
ボルゲーゼ美術館は修復のため20年ほど閉館していたが、これがリニューアルオープンして以来、時間指定の完全予約制となった。入れ替え制なので、時間に追われて人ごみの中であわただしく見るしかなかった。今回のツアーでは、閉館後に貸し切りでこの珠玉の美術館を隅々までじっくり堪能できるきわめて貴重な機会だ。
ベルニーニ プロセルピナの略奪

★★★★★関連ツアー
宮下規久朗先生全行程同行解説
No. 7734 【美の旅】カラヴァッジョからはじまる17世紀美術の旅~オランダからローマへ~ 9日間
他、システィーナ礼拝堂とボルゲーゼ美術館の貸切見学と宮下規久朗先生による講義が含まれるコースは以下の通りです。

No. 7741 【美の旅】ローマとウンブリアの美術を訪ねて 10日間
No. 7732 【美の旅】カラヴァッジョ・美の巡礼 10日間
No. B787611 ボルゲーゼ美術館貸切見学 滞在型ローマ&フィレンツェ美術散歩 8日間
No. B402711 ボルゲーゼ美術館貸切り見学 ウンブリアとトスカーナ小さな宝石を探して 10日間

投稿:朝日インタラクティブ