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機関誌「旅なかま」掲載記事など最新のトレンドがわかるブログ

旅のアクセント

2011年02月10日

2011年2月10日 「旅なかま」2011年2月号 巻末特集

タイトル
四姑娘山双橋構

 横断山脈は世界最多の植物種を擁する中国でも圧倒的に多彩な野生の花々が咲き誇り、今日でも新種の発見が相次ぎ世界中の研究者や植物愛好者の熱い視線を集めています。
 横断山脈の植物の魅力については、これまでも本誌で紹介してきましたが、今回はまだ一般的にはほとんど知らず、訪れた方も少ない地域を含め、更に近年新種として紹介された植物の自生地についても紹介してみたいと思います。

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(写真・左から)[Lilium taliense] [青いケシの新種] [四姑娘山群] [クッション化したハハコグサの仲間]

~四姑娘山周辺の名花~
 横断山脈の植物を訪ねるなら、先づ最初に訪れたいのが四姑娘山の一帯です。四川大地震でかつての表玄関だった臥龍から巴朗山越えの道は傷んでしまいましたが、その代わりに整備された夾金山越えのコースは、近年になって新種と認定された青いケシの変り種、黒い花を咲かせるメコノプシスに出逢う事ができます。
 毛沢東の大長征時に高山病と寒気により多くの犠牲者を出した夾金山も、今では車で難なく越えられるが、この峠の前後で道傍に入れば呆気なく黒花のメコノプシスを観る事ができるでしょう。ここには他にも赤い花を咲かせるプニケア、黄色のインテグリアホリア、そして青い花のラケモサと四種の青いケシが自生している上に、岩場を注意深く捜せばキンポウゲ科の名花パラクィレギア・ミクロフィラも見つけられる筈です。
 四姑娘山麓に入ると、大姑娘山への途路となる鍋庄坪ではイブキトラノオの仲間のマクロフィラを中心にアネモネ・オブトゥシロバやゲンゲ属のミリンゲンシスなどが創る一面のお花畑の中に最近マツムシソウ科からモリナ科に独立されたクリプトスラディア・ポリフィラやキク科のピレトルム・タツィエネンセ、オニクなどが見られ、ここにも、どの種に固定して良いのか迷うシオガマギクの一種やベンケイソウの仲間が自生しています。
 四姑娘一帯でもっとも風光明媚で、しかも奥深くまで観光道路が整備されているのが双橋溝で、この谷からはヨセミテやパタゴニアも彷彿させる大岩壁を従えた未登の5,000m峰を労せずして望む事ができ、しかもその山麓にはシーク教の聖なる花と云われるボンボリトウヒレンや、ヒマラヤ山域でも随一の美しさを誇る名花ミヤオソウ、花弁の先端が接着してほとんど開く事がないサクラソウの一種アルピヌム。そして雪蓮の名で漢方薬として珍貴されるワタゲトウヒレンの一種トリダクテラなど多くの美しい花が満ち溢れています。
四川省・雲南省に咲く高山植物

~ミニヤコンカを巡る植物の名所~
 横断山脈の主峰ミニヤコンカは海累溝氷河にロープウェイが設置され、近年観光開発が激しいが、この一大山群周辺にも珍しい植物や美しい花の名所が数多く散在しています。
 ミニヤコンカ北方の楡林には冬虫夏草の研究所があり、付近一帯が高山植物の宝庫となっています。ここで注目すべきは温室植物の一種で漢名を水大黄と云うレウム・アレクサンドラエで、薄いフィルム化した葉が花を包み込んだ特異な姿を観る事ができるでしょう。
 この他にもここではシャクナゲ類、アネモネやリンドウの仲間に加え、モンモリ状に花弁の先が接着したユリの一種ロホホルム。更に青いケシの仲間も二種が自生しています。

~雲南の秘境・三江併流区に眠る新種~
 さて最後に雲南の秘境、三江併流区に眠る新種の青いケシを紹介したいと思います。
 雲南省でも観光開発は目覚しく、梅里雪山や玉龍雪山、或いはシャングリラと名を変えた中甸の納海や碧塔海を結ぶ一帯は多くの観光客を迎えていますが、麗江古城と共に世界遺産に指定されたとは云え、長江、メコンサルウィン上流の三大河が集まるこの地域はまだ訪れる人は稀ですが、ここにはミャンマー側のイラワジ川を含めた大河の間に高黎貢山や碧羅雪山という高山帯が連なり、最近では新種の青いケシ、メコノプシス・カスタネアの存在が明らかになり注目を集めています。
 横断山脈は広く、その植物の魅力は限られた紙面で尽す事はできません。氷河を抱いた高山と深い渓谷。屹立する大岩壁と果てしない大草原が創り出す野生植物の花園がまだまだ人知れず眠っているこの地の自然は、私達を深い感動に誘ってくれるに違いありません。

大内尚樹氏PROFILE
大内 尚樹(おおうち なおき)
略歴:シダと岩登りに中毒して40年。妙高山北方の秘境・海谷山地の岩場を開拓し、旧ソ連時代、クリミヤ半島で行われた国際岩登り協議会の日本チーム監督を務める。元早稲田大学ハイキングクラブ技術顧問、相模原市自然の村指導員、朝日カルチャーセンター講師として、花や山菜、キノコ採りから沢登りまで、自然を多面的に愉しんでいる。
主な著書:『花を求めてハイキング』(主婦の友社)、『多摩川水流紀行』(白山書房)、『秘境の山旅』(白山書房)

投稿:朝日インタラクティブ