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機関誌「旅なかま」掲載記事など最新のトレンドがわかるブログ

旅のアクセント

2013年01月07日

2013年1月 7日 旅なかま1月号 2013年“ヴェルディ・イヤー”新春特別寄稿 『ヴェルディの 宿るところ』

〔本稿は会員誌『旅なかま』2013年1月号に掲載されたものです〕
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 新たな年を迎えて自ずと気が引きしまり、掲げたばかりの目標がいままだ揺らぐことなく傍らにある。悴みながらも爽快なものである。

 三が日という言葉なんてないイタリアの年始は最初の日だけがただ祝日となり二日目からは何もなかったかのようにのんびりではありながら普段通りに動き出す。年末を彩ったクリスマスを祝うデコレーションはいまだ置きざりにされたままである。

 2013年が他の年と少しだけ異なるということをほとんどのイタリア人は知らない。
ワーグナーはまだよい。生涯、イタリアを愛しイタリアの文化に傾倒した作曲家ではありながらしかしドイツ人である。同じヨーロッパとは言っても国境を跨いでしまえば余程のことがない限り思いは遠退いてしまうものだ。その大作曲家が200年前に生まれたことを知る者は少なく、偉大な作品群もこの国ではあまり馴染とされていない。

 それではヴェルディはどうであろうか。オペラ「ナブッコ」に含まれる馴染みの合唱曲、「行け、我が想いよ、黄金の翼にのって」は第二の国歌ともよばれ、他の多くのオペラも建国に向かうイタリアの大きな起爆剤となってきた。「椿姫」、「アイーダ」、「リゴレット」など、空で口ずさめるオペラ中のメロディも多く、まさにイタリアを代表する作曲家であり、国民的な英雄と言っても過言ではないだろう。

 子供たちの通う中学校で、とあるコンサート会場で、大聖堂前の広場でイタリア人を選んで、「重要な節目、いったい誰の生誕年?」と尋ねたところ、50人中ヴェルディと答えたのはわずか4名に過ぎず、自国の生んだ大作曲家の生誕200年を祝う節目であるということを知らないイタリア人が意外と多いことには驚いている。しかし、イタリアに点在している歌劇場は当然のごとくヴェルディ・イヤーを意識したプログラムを掲げてきている。前年の秋より、祝祭年の前祝いというかたちで幾つかの演目が新しいプロダクションとともに舞台に上がった。パルマ王立歌劇場の「レニャーノの戦い」、スカラ座の「リゴレット」は既存の舞台となったが、ヴェネツィアのフェニーチェ劇場は「オテロ」で聴衆を湧かせて、ローマ歌劇場では初めてこのオペラに挑戦するというリッカルド・ムーティが「シモンボッカネグラ」を指揮してシーズンの開幕を飾っている。
スカラ座だけではなくそれぞれの劇場が劇場の歴史に宿るアイデンティティを組み入れながらヴェルディを紹介していく様はとても興味深い。昨年夏前、市政の交代に伴い劇場内の人事はもとよりすでに告知されていたフェスティバルのプログラムまできれいさっぱり一新されたヴェルディのいわば膝元パルマとその界隈にて行われている10月の音楽祭は注目に値するであろう。注目は何も王立歌劇場だけではなく、「ヴェルディの地」といわれているブッセート、生まれ育ったロンコレ村、後年、広大な農園の中に生きながら大作を世に送りだしてきたサンタガタなど、巡礼の地として多くの人々が訪れることは間違いない。

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 作曲家としてはすでに大成し富を得たヴェルディが最後の思いを込めて実現に漕ぎつけたプロジェクトが、今も尚、ミラノ旧市街地はずれに鎮座している。“憩いの家”
ブォナロッティ広場の真ん中に立つヴェルディ像は、イタリア統一に思いを馳せる姿か、はたまたその時代を回想しているのか自国半島の南端を厳しく見据えている。
「どのようにすればよいのかあれこれ考えあぐねているうちにふいに一つの案が浮かんだ。家をつくろう。年老いた芸術家が安心した余生を送れるよう、そう、そのような憩いの場がいい。自分の名声など20年先にはきれいさっぱり消え去っているだろう。それならばかたちあるものを後世に残したい」

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アッリーゴ(作曲家、台本作家)とカミッロ(建築家)で有名なボイート兄弟をはじめ、たくさんの周りの助力を得ながらこの“憩いの家”は1899年に仕上がる。その時代においては画期的なものであり、病院や療養所、ましては老人ホームとも異なる芸術家のための自由な空間がそこにはあった。
「患者のための施設ではなく客人を向かい入れるための憩いの場でありたい。ただ、煩わしい思いや自分の苦手とする気遣いをしたくはないので、開館はわたしが逝ってからにしてほしい」
そのような遺言を残して竣工から2年後にこの世を去るヴェルディ。いまはジュゼッピーナとともに館内礼拝堂の下にあるクリプトで安らかに眠っている。

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 現在、館内には55名のお年寄りが暮らし、今後増設される棟には芸術を志す若者をも受け入れる予定である。内部にはピアノの置かれたいくつかのレッスン室があり、老マエストロたちの指導の下、多くの学生がイタリアの伝統を学んでいる。ヴェルディに纏わる品々も多く、併設されている美術館内には様々な美術品が置かれている。その中には彫刻家、ジェミトによるヴェルディの胸像、ボルディーニ、モレッリにより描かれた肖像画など実際ヴェルディが愛したものも多い。
 エントランス・ホールの上部には音楽ホールがある。中央奥のパイプオルガンの前にグランドピアノが置かれ、右奥にレプリカでありながら実際ボルディーニにパリで描かせたという肖像画が客席を見つめる。

文頭にある「掲げている目標」のひとつに、このホールにて3月29日に予定しているコンサートの成功がある。素晴らしいアーティスト、伴奏者の起用はともかく、こういった素晴らしい環境にいてヴェルディ・イヤーに参加できる喜びを今あらためて感じている。

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投稿:朝日インタラクティブ