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旅なかま 7・8月号

イタリア(クレモナ)

イタリアのプリズム

写真・文 立 木 寛 彦(写真家)

 ヨーロッパには何度か旅したことがあるが、本質的な田舎があるのはイタリアだと実感した。

 旅を知りその旅を極めようとすれば、一歩踏み切って自分の知らない土地へ行きたいのは当然である。そこにはまだまだ観光化されていない素朴な、人情のある村々が点在し、人懐こいイタリアの人々がボンジョルノと声をかけてくれる。
 日本で言えば東北の田舎町のようで、ただ言葉が違うだけに錯覚する。
 しかしその歴史の深さと文化の奥行きがこれほどまでに膨大で、美しいものかと、感嘆させられてしまうことが沢山ある。

 牛や馬、山羊やにわとりが草原や庭先で草を食べたり遊んでいる。素朴な田舎の風景は日本でも見られるが、片田舎に何気なく豪華で華麗な中世のロマネスクやゴシック様式の教会や宮殿があったり、小さな城が頑丈な城壁を囲んで聳え立っている。中にはローマ時代の皇帝や宮廷文化の名残があちこちに点在する。そこに住む人々は、何気なく往来しているが、伝統ある歴史や文化におおいに誇りを持ち、昔から受け継がれてきたものを心込めて大切に守り、次世代に残そうとしている。
 旅人の私にとって、気軽に声をかけられたり、笑顔で挨拶されれば本当に気持いいものである。チャオ「何処から来たかネ」、「ジャポン」「ジャポン」で一切通じ、何気なく写真を撮らせてもらっている。
 「こんな田舎に良く来たね」と農作業をしながらもくもく働いている。その姿は、古代から伝わる精神や心が奥底に流れ、素直に風景に溶け込んでいた。
 そのお蔭で、静かに流れる中世の時代からローマの歴史を耽りながら、カメラのフレームを決め思う存分にシャッターが切れた。最高のシチュエーションで撮影が出来た。シャッターを切る、つまり切れるということは、写真家にとって最も張り詰めた幸福の瞬間である。

 奥にアルプスを抱え、腰の付け根から下に、足のように広がる大地は様々な伝統と文化を残し、それぞれの村や町に深い歴史を刻んでいる。
 季節と同様の生活があり、南に下るほどあか抜けた素朴さが伝わってくる。時には音楽家や芸術家、作家に愛された美しい村や町、山や川、海の風景は、最高の喜びを感じる。
 そこには気取りの無いシャレた宿、レストラン、小さな居酒屋、土産物屋が軒を出す。レンズを向けずにいられなくなる。石造りのレストランに入れば、ご主人が料理作りで、女将が運び、マンジャーレ〔食べて〕。なんと楽しいことか。満喫である。

 道中アモーレ、カンターレ、グラツィエ、の3言葉で旅が終わった。

トレヴィーゾ
↑トレヴィーゾ/縦横に流れる中世の水路。城門に枝垂れ柳がヴェネツィア時代を語る。
アルベロベッロ
↑アルベロベッロ/おとぎの国を思わせるトゥルッリ作りの家並みには最高の魅力風景(撮影:篠利幸氏)
古代ローマの料理を再現
↑古代ローマ時代のボリュームある料理の再現(ヴィチェンツァ)
ラヴェンナ
↑ラヴェンナ/サン・ヴィタレ教会の天井、548年当時のモザイク装飾

立木 寛彦 立木 寛彦(たつき・ひろひこ)

長野県生まれ。大学卒業後出版社入社、週刊誌編集部、写真部を経てフリーに。
編集プロダクション <CODE NUM=01F2>オフィスKAN設立、同社代表取締役。
各出版社に出稿。雑誌、単行本の撮影、及び編集。企業の広告写真撮影。約85カ国の海外取材経験を持つ。

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