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旅なかま 7・8月号

フィリナキ・レインフォレスト

ニュージーランド北島
巨木の原生林を行く

 とかく、南島のマウントクック国立公園やフィヨルドランド国立公園のミルフォード・トラックばかりがクローズアップされるニュージーランドの山歩きだが、この国の大自然の奥深さは、そこで終わらない。
写真・文/滑田 広志


 トレッキング天国・ニュージーランドには、氷河、アルプス、湖、火山、ビーチ、原生林・・・etc、様々なシチュエーションの違うエリアで、個性豊かなトレッキングコースが全国的に広がっている。「ミルフォードトラック」「ルートバーン」などが、日本ではクローズアップされているが、現地ニュージーランド人やヨーロッパ人に人気なのが「森林ウォーク」だ。その中でも、まだ日本にあまり紹介されていない隠れた人気トレッキングエリアが、北島中央部東側に広がる「ウェレウェラ国立公園」とそれに接する「フィリナキ森林公園」だ。

 ワイカレモアナ湖を中心としたウェレウェラ国立公園の西側に隣接する「フィリナキ森林公園」は総面積609平方キロメートルの広大なエリアを有し、ゴンドワナ大陸時代からの森林が原生のまま残り、2億年以上前ジュラ紀から続く“Dinosaur Forest”の姿が見られる。樹高65mにもなるカヒカテア(Kahikatea)やリム(Rimu)、トタラ(Totara)、マタイ(Matai)、ミロ(Miro)、タワ(Tawa)など、平均樹齢500〜700年の巨木(なかには1000年を超えるものも見られる)や、カカ(North Island Kaka)、カカリキ(Kakariki)などの珍しい鳥なども生息し、ニュージーランドを代表する温帯雨林の森林保護区でもある。

 ロトルア側から入山するのが一般的で、ウェレウェラ国立公園へのメイン国道から折れてミングヌイから入る。巨木群に囲まれるようにして開けた駐車場がトレッキングの出発地だ。山小屋(Doc Hut)を利用した2泊3日のガイドトレッキングやタウポ側に抜ける縦走コースもあるが、「フィリナキ滝周遊トレック」は、あまりアップダウンがなく、巨木と滝など変化に富み、3〜4時間で手軽に歩けることから人気のコースだ。
 駐車場脇にある案内板でコースを確認して歩き始めると、まるで密林のような世界が広がる。天空を覆い尽くした巨木群、数メートルを超えるトゥリーファーン、木々や鬱蒼とした林床をびっしり覆う苔類に目を奪われる。20分ほどで川の流れの音が耳に響いてくるフィリナキ・ループトラックの分岐に着く(右・左どちらでもフィリナキ滝を周遊して帰ってくる)。分岐からすぐの所には、川の急流によって岩肌が削られ見事なキャニオン風景(Te Whaiti-nui-atoi Canyon)が橋の上から眺められる。フィリナキ川の流れを右に見ながら、あまりアップダウンのない整備されたトラックが続く。突然、ガイドがコースをはずれて斜面を登る。トラックからほんの10メートルほど案内された場所には、幹回り十メートルを超えそうなリムの巨木が壁のように立ちはだかっていた。

 自然とともに生活していたマオリ(ニュージーランド先住民族)の人たちは、ネイティブプラント(自然の木々)に熟知し、それを食料や薬草、生活必需品にしてきた。これは「ティートゥリー」と呼ばれるマヌカ、これらの木々からは、香辛料や煮詰めて整腸作用のあるものに、これは、すりつぶして傷口に塗ると消毒できる。この草の茎は蒸して食べる。これは、日本のワラビに似た「ピコピコ」、このシダ類はベッド代わりに、これは「ブッシュフレンド」といって、トイレットペーパー(笑)、この幼虫は栄養満点・・・などなど。この森を生活の糧にしていたマオリガイドの知識の豊富さはまるで“森の民”だ。

 フィリナキ滝は10メートル足らずの小さな滝だが、大きなプールが広がり、橋の上や対岸の崖の上などからも眺められる。そのまま、トラックをフォローしていくと、歩いてきたトラックとは、丁度フィリナキ川を挟んだ対岸を帰ることになる。

 マオリの神話には、森がよく登場する。フィリナキの森のガイドウォークでは「ここは神の創った森だ!」歩き終わった後に、心の奥にそんな印象を残してくれる。

サザーランドの滝
↑ミルフォード・トラックのサザーランドの滝ミルフォード・トラック
↑ニュージーランド屈指のトレッキングルート「ミルフォード・トラック」、グレイドハウスを望む。
フィリナキ・レインフォレストの原生林
↑フィリナキ・レインフォレストの原生林の大木
フィリナキ・レインフォレスト
↑フィリナキ・レインフォレスト内を流れる滝
マッケンジー湖
↑「ルートバーン・トラック」マッケンジー湖


滑田 広志 写真家 滑田 広志(なめだ・ひろし)

1950年徳島県生まれ。日本スポーツプレス協会会員。スキー写真家として活動開始。80年よりニュージーランドに長期滞在して本格的なスキー取材撮影を行う。以後、毎年長期滞在。スキー、ラグビー、ヨット、トレッキング、フィッシングなどを撮影。
 作品は『山と溪谷社』『Skier』『Number』などに発表。自他ともに認めるニュージーランドのスペシャリスト。著書に『ニュージーランド・ハイキング案内』(山と溪谷社)がある。

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