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旅なかま 9・10月号

ドイツのクリスマス

国中をメルヘンの世界に変える
ドイツのクリスマス市

ドイツの冬は寒くて暗いといわれるが、
実際は、ヨーロッパの中でも華やかで明るい。
それはドイツにクリスマス・マーケットがあるからだ。
クリスマス・マーケットの歴史は古く、
1639年には開かれていたという記録がある。
頑なにクリスマスの原点を守っているドイツで、
ぜひ本物のクリスマスを楽しみたい。

ドイツのクリスマスはだいたい11月末の日曜日からスタートする。クリスマスから遡って4週間前の日曜日が、正式なアドヴェント(待降節)の始まり。ドイツ最大にして最古のクリスマス・マーケットであるニュルンベルクでは、この日、大聖堂のバルコニーに、「クリストキント(幼子イエス)」に扮した女の子が現われクリスマス・マーケットの「開会宣言」をする。そして、ドイツ中がクリスマス一色に染まるのだ。
 ドイツではどんなに小さな村や町へ行っても教会前や市役所前の広場にクリスマス・マーケットが開かれている。日本の祭りに並ぶ夜店や露店を想像してもらえば、それがどれほどわくわくする楽しい場所かわかるかもしれない。
 大きい都市では、観覧車やメリーゴーラウンドまで併設されていて、まるで遊園地のよう。舞台があって、毎日のように聖歌隊の演奏やバンドのコンサートが催されている所もある。田舎にいくと、広場に20軒ほどのお店が出ているだけの小ぢんまりした感じだが、それも素朴な味わいがあっていい。
 子供たちがチョコレートでコーティングしたリンゴを食べている姿もあれば、老夫婦が、ソーセージの屋台の前にしつらえられたスタンドでゆっくり味わっている姿も見かける。誰も彼も、仕事の途中に、買い物のついでに、あるいは授業が終わって、映画に行く道すがら…となんとなく通るのがクリスマス・マーケットなのだ。
 では実際にマーケットに足を踏み入れてみよう。ふだん朝市などが立つ場所だけあって、パン屋、お菓子屋、果物屋、そして手袋やマフラーなどを扱う衣料の屋台もある。
 だが、やはりそこはクリスマス・マーケット。最も多いのは、クリスマス用品を扱う店だ。クリスマスを彩るさまざまなデコレーション用品、それは小さな人形だったり、薄い板で模られた天使だったり。細密画が描かれた美しい球もあれば、わらを丁寧に編んだ星もある。窓辺に飾るイルミネーション、色とりどりのロウソク、かわいらしい形をしたクッキー、それはそのままツリーに飾れるようにもなっている。
 そんな中にあって、ドイツならではの品々を置いてある店も多い。どこのマーケットでも見かけるのがエルツ山地の木工製品を扱う店。日本でもおなじみのクルミ割り人形や、スモーカー(煙吐き人形)、ロウソクの炎の熱で上の羽が回るピラミッドという玩具など、クリスマスに縁の深い木工製品を生み出してきたのがエルツ山地だ。
 「マーケット」というからには、食べ物の楽しみも忘れてはならない。どんなに広いマーケットでもちょっと上を見上げると、店々の上方に煙がたなびいている。その元をたどっていけば、かならず見つけることができるのがソーセージ屋。細長い皮のプリプリしたソーセージを小さな丸いパンにはさんで食べる。
 そしてクリスマス・マーケットならではの飲み物がある。「グリューワイン」といって、温めた赤ワインにオレンジピールやチョウジなどの香辛料と砂糖を入れて飲む。ワインを温めて飲むなんて、と始めのうちは大変驚いたが、これがおいしいのと、寒空の下、体を温めるのにちょうどいいので、すっかり病みつきになってしまった。グリューワインを手にマーケットを歩いていると、いつしかドイツの冬の幸せに浸っていく。

ドイツのクリスマス市
ドイツのナマハゲ
↑南ドイツでは聖ニコラウス・デーに、サンタクロースが各家庭を1軒1軒まわる風習が残っている。しかも、大勢のお供を連れて。このお供が、日本のナマハゲそっくりなのだ。ベルヒテスガーデンでは、このお供を連れたサンタのパレードが見られる。う。ドイツ中で唯一、生身のクリストキントに会えるマーケットが、ニュルンベルク。

デコレーション屋台
クリストキント
↑ドイツの子供たちにクリスマスのプレゼントを持ってきてくれるのは、サンタクロースではなく「クリストキント(幼子イエス)」。イヴの晩、生まれたばかりのキリストがその無垢なまま、プレゼントを持ってきてくれる。だから、クリスマス・マーケットは別名「クリストキンドル・マーケット」とも言う。ドイツ中で唯一、生身のクリストキントに会えるマーケットが、ニュルンベルク。



長橋 由理 氏 長橋 由理 氏(ながはし・ゆり)

出版社、および新聞社勤務を経て、(有)アドヴェント設立。ドイツをはじめ世界各国のクリスマスを廻り、クリスマス関連の執筆活動、およびイベント等を手掛ける。
また、環境への関心が高まる今日、ドイツを繰り返し訪れるうちに、その環境活動を報告する機会も増え、一方で、日本企業の「環境活動報告書」を多く手掛けることになる。それらの活動から、旅の中で環境を考える『グリーン・トラベラー』(不定期刊)を発行。
ホームページ http://www.greentraveler.jp

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