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ドイツのクリスマス市
都市の地中海(後編)
〜光と海のトポスを訪ねて
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都市の地中海
法政大学教授 陣内 秀信氏に聞く(後編)
前号で大変好評をいただきました、地中海都市についての陣内先生へのインタビュー。前回は先生が夢中になっているというイタリアのサルデーニャ島から、クロアチア、モロッコ、そしてスペインのコルドバまでお話しいただきました。地中海世界の都市事情に精通している陣内先生ならではの興味深いお話は、今回、再びイタリアから始まります。
プーリアの白い家
●先生が調査された都市の中で、南イタリア、特にプーリア地方には面白い都市、文化がありますね。
陣内
プーリア地方はスペイン・アンダルシアと似ている面が多いですよ。両者とも白い集落。それには衛生的に保つとか、強烈な陽射しを反射して中を涼しく保つなどの風土的な理由からの必然性があるのです。また、石灰石がたくさん取れるという地質的な理由もあります。マルティナ・フランカや
オストゥーニ
(写真/右)などは丘の上に白く輝く集落が建ち並び、内部は迷宮のように細い道が入り組んでいてアンダルシアの白い村のようです。
しかし、不思議なことに、アンダルシアの家には必ずあるパティオ(中庭)が無いですよ。代わりに、プーリア地方では袋小路か小広場に小さな家が周りを囲んでいるスタイルが主流です。アラブの直接支配を何世紀にも渡って受けていたアンダルシアは、一つの立派な邸宅の中にパティオがあるアラブ的建築。一方、プーリア地方はアラブの影響は少ないので、建物にパティオは無いのですが、考えようによっては袋小路や小広場が共有の中庭なのですね。
イタリア中部の山頂都市
●イタリア中部を走ると、丘の上に美しい街がたくさんありますね。先生の著書でもピティリアーノという魅力的な都市が紹介されていますが、山頂都市についてお話しください。
陣内
ピティリアーノは崖の上にそびえる、すごい迫力を持った街。丘の上の街というのは、イタリア全土でも、またスペインでもあるわけですが、特に
ピティリアーノ
や
ピエンツァ
などトスカーナの街々、そして
ペルージャ
、
アッシジ
などのウンブリアの街々は印象的ですね。外観は迫力満点で、実際街を歩いても魅力的です。街の中心の通りに対して、脇に路地が横へ抜けていき、路地を進むと突然崖の端に視界が開けて美しい大自然が目に飛び込んできます。
●防御上という理由もあるでしょうが、やはりイタリア人ですから街の形を意識して作っていたという感じがしますね。
陣内
そうですね。街の形には、まず経済性や生活のしやすさなどありますが、同時に象徴性や「かっこよさ」、演出などが十分に織り込まれて空間設計されている気がします。道の途中にある公共の泉、通りの突き当たりに建つ市庁舎や大聖堂など。街の中心の広場はまるで劇場。座っている人は広場で展開するスペクタクルを見ることができる訳です。殆ど知られていない小さな街でも素晴らしい。ああいうメリハリと、しゃれっ気のある空間造詣っていうのは実に上手いですね。やっぱりイタリア人だけのなせる業だと感じます。
●都市建築がご専門の先生なら見れば見るほどそのすごさを感じられるでしょうね。
陣内
最初から出来たのではなく、時間をかけて作り上げているのです。色々な時代の建築家が考えて、新しく作るときに周りの形態とかしくみを十分理解した上で、どこにどう作れば一番次のステップでかっこよくなるかを考えているのですね。
●「かっこよく」っていうのはすごく分り易い言葉ですね。イタリアを知る上でのキーワードですね。
ここにしか無い風景 ― トルコの街々
●最後に、先生の著書で、独特の土着的な街と紹介されているトルコの街についてお話をお願いします。
陣内
地中海世界、特にイスラム世界の中でもトルコは独特のポジションにあります。イスラム文化を知った上でトルコを見ると全然違うんですね。かつてはイスラム都市っていう言い方をされてましたが、イスラム世界とは同じではない。何が違うというと、トルコは
サフランボル
(写真/右)のように城壁がない町が多いんです。
ブルサ
はイスラム時代以前のビザンチン時代に出来ていた高台の部分だけ城壁がありましたが、ブルサらしいイスラム時代の空間には全く城壁が無いですね。
●それはビザンチンの後に入ってきた、トルコ民族の特色ということですか。
陣内
そうです。だから、
イスタンブール
も城壁にこだわらないでどんどん外へ早めに広がっていった。海沿いに離宮を造って、船でそのまま入れる。他のヨーロッパなんかでは考えられないですね。あと緑が多いですね。家も隣り同士が密接せず、日本のお屋敷のように家の周りにスペースをとって庭で囲むというのが理想。イスラム世界の家は外に向かって窓を取らないんですが、トルコは全く逆で中庭が無く、みんな外に開いています。だから窓が立派で装飾もキレイ。家の中から外を眺めるのを楽しみにしているのです。
また、街はみな斜面にできています。イタリアは頂上にできるケースが多いけど、トルコは斜面。斜面の家だと、どの家からも眺めがよく、太陽も入るし、風も入る。しかも、同時に家を見られることも考えている訳です。外から見てすごくきれい。非常に絵画的な都市計画といえます。それが緑を取り込みながら家々が並んでいるので、ほんとかわいらしいです。あんな美しい都市景観は世界中にどこにも無いですね。
●先生のお話しを聞くと、トルコの見方が変わりますね。
本日は、地中海の都市についての多岐に渡るお話しをいただき、ありがとうございました。
(聞き手/企画・営業部長 鹿野 眞澄 6月18日、陣内先生ご自宅にてインタビュー)
陣内 秀信氏(じんない ひでのぶ)
プロフィール
法政大学教授。専門はイタリア建築・都市史。日本におけるヴェネツィア研究の第一人者であり、また地中海を中心に世界を歩き、鋭く、かつ温かな眼差しで都市の魅力に迫る。
主な著書に、「都市の地中海」(NTT出版)、「ヴェネツィア―水上の迷宮都市」(講談社)、「シチリア―《南の再発見》」(淡交社)など多数。
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