朝日サンツアーズ
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旅なかま 11・12月号

モロッコに魅せられて

モロッコに魅せられて
〜ジブラルタル海峡の彼方の王国〜

写真・文 村 川 敏 弘

 スペイン、イベリア半島南端から見たアフリカ大陸〈モロッコ〉は、 波間に浅黒く不気味に輝いていた。
 今から25年余り昔の情景なのに忘れることの無い、僕の人生の劇的なる瞬間。
 キリスト教世界からイスラム世界へ。海峡を越え船はアフリカの角、港町タンジールへ入港。小高い丘一面に白壁の旧市街が続き、モスクのミナレットがその顔を覗かせる。アラブ商人や黒人達の熱気が、巷に流れるコーランの響きと混ざり合い狭い路地を吹き抜ける・・・。

 モロッコ最古の都、フェズの旧市街は世界一の迷宮都市。城壁の中は中世そのままに生き残り、迷路が果てしなく続くアラビアン・ワールド。
 人一人がやっと通れる袋小路の一角でベールを覆った女性とすれ違う。ふと振り返るとその姿は路地に消えてしまっていた。現在を旅する自分がいつしか、中世の時代に迷い込み、何百年も昔に「在った」一瞬の光景に遭遇しているのではないかと思う程の強烈な印象を放つ石畳の旧市街をさ迷う。

 なつめやしに囲まれたオアシスの中に建つマラケシュの旧市街は町全体が赤い色で統一された、愛らしい古都。町のど真ん中には高さ67メートルのクトゥビアの塔が聳える。夕刻と共に人々は塔の傍を通り大道芸人で有名なフナ広場を目指す。猿回し、火吹き男、説法師、占い女、蛇使い等が競演する世界最大の野外劇場の始まり。強烈な西日の光の中で怒号と歓声が屋台の煙と重なり天に舞い上がる頃、劇は最高潮に達する。
 黄昏時、古い馬車に身を任せ旧市街の雑踏を巡るミステリアスな旅。

 熱帯性植物の咲き乱れるマラケシュの町の背後に聳える4000メートル峰の山々、大アトラス山系を越えるとそこは茶褐色の大地が続くカスバ世界。大渓谷の裾野に広がるカスバ城の雄大な景色と、美しいベルベル族の女達が暮らす村落を抜け、やがてアルジェリアと国境を接する砂だけの世界に到達。サハラ砂漠だ。前線の町エルフードからジープに乗って1時間。モロッコで最も大きく美しいと称されるメルズーガ大砂丘。

 一度この砂漠を見た人は必ずもう一度戻ってくるという言い伝えがこの地方にはある。その格言の如く、砂漠の虜になった僕は今もモロッコの大地をさ迷い歩く旅人なのだろう・・・。


ハッサン2世モスク
↑ハッサン2世モスク(カサブランカ)

カスバ街道
↑アーモンドの花が満開(カスバ街道)

フェズ
↑祈りの前の清め(フェズ)

ダラス渓谷
↑カスバ(ダラス渓谷)

フェズ
↑クスクス料理を食べる(フェズ)

染色工場(フェズ)
↑染色工場(フェズ)



村川 敏弘 村川 敏弘 氏(むらかわ・としひろ)

大阪府八尾市生まれ。写真家。
大学卒業後、本格的に写真活動に入り、1981年に取材で訪れたモロッコのフェズの旧市街に魅せられ活動拠点をそこに置き、以後20年余りの期間、フェズの伝統文化、風習、祭り、宗教行事、人々の生活等を徹底的に取材・撮影し、朝日ジャーナル、グラフ、毎日グラフ、中央公論社、国際協力誌他、多数に発表。
また、元京都大学教授、米山俊直氏の著書“モロッコの迷宮都市フェズ”の写真とコラムを担当、現在新たに、知的な“モロッコの旅”をテーマにした著書を準備中である。写真展は1994、1995年に東京にて“モロッコ幻想紀行”を開催、1995年にはモロッコのカサブランカにて“一人の東洋人カメラマンの見たモロッコ”を開催。

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