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旅なかま 1月号

シルクロードと旅を考える
シルクロードと旅を考える
シルクロードと旅を考える


-- 民族の道 --

敦煌・鳴沙山グレートゲーム(主に国家規模の利権争い)について
金子 歴史的観点から見るグレートゲームは、領土と資源を奪い合う、シルクロード上の豊富な資源が生んだ人間の欲と政治の駆け引きの世界です。ロマンチックな想像世界であるシルクロードの旅とは相反します。しかし旅ではその歴史的、宗教的、民族的などの背景を知ることにより理解できることもあります。
 少し本題から離れますが民族的観点からいえば、日本人はお尻に青い斑点がある蒙古系民族です。2004年9月、ソウルで国際蒙古斑会議というユニークな会議が開催されました。私はアメリカに行っていて参加できませんでしたが、その会議には、トルコ系民族(ウイグル族)の参加も含まれるとのことでした。遠く離れたトルコの民族の人達にまで蒙古斑が広がっているとの見解でした。--本当でしょうか。
 そこで、ひとつ問題となりました。その間の新疆自治区に暮らすシルクロードの民ウイグル族には、お尻に青い蒙古斑跡があるのか、ないのか。もし事実だとすれば、シルクロードが線と線で結ばれていたひとつの証明となります。
 皆様も、この事実を旅で確かめてみてください。しかし、お尻がテーマのシルクロード。あまりロマンチックでありませんね(笑)。


中央アジアのチューリップの一種好きなシルクロードの地は。
金子 西トルキスタン(主に旧ソ連領の中央アジア)が好きです。中でも中央アジアの真珠と称されるサマルカンドはアラビアンナイト(千一夜物語)の世界です。そこには歴史のみならず高い芸術性を持ちます。東からこの地を訪れると世界に名を連ねる大山群が広がるパミール高原を越え、トルキスタン、ペルシャの世界に入ります。そこには薔薇をはじめとする花々が咲き乱れ華やかな世界でもあります。その光景を見てペルシャの人達は詩を詠んだのでしょう。現在でもペルシャには数多くの恋愛の詩が残っています。またオランダで有名なチューリップの産地もこの辺りです。この地は、アレクサンダー大王の遠征以前からガラス製品が作られていて、ワイングラスの形もこのチューリップを参考にしたといわれています。シルクロード上のペルシャの華やかな芸術世界は奥が深く興味深いものがあります。ほとんどの旅行者は、ヨーロッパから旅をはじめトルコあたりで折り返してしまう。その先は、別世界のようなイメージが先行して、その先の国々には興味がないという方が多い。そんなことはありません。国は変わっても文化・芸術はつながっているのですから。日本人の発想は常に東から西です。旅の考え方として、ヨーロッパからシルクロード世界へ、その道も必要ではありませんか。

国境の枠を超えて旅をイメージできることがシルクロードの魅力ですね。


-- 旅の手ざわり --

敦煌莫高窟・九層楼金子 現代は、実際に旅に出れなくても、テレビなどで充分旅の雰囲気を味わうことができます。しかし、旅の手ざわりは実際に訪れなければ味わうことはできない。
 私は、キジル千仏洞を訪れた時に、時間をかけて石窟の壁に手を触れてみました。そうしたら思っていたより柔らかいことに気づきました。ところがトルフアンのトユク石窟の手ざわりは、粘土質でやわらかいのです。敦煌の壁画はさらに礫岩上に塗料を塗ってあり硬いのです。ですから保存のために敦煌の壁画を剥がす場合には、高度な技術が必要とされると聞いた事があります。広大なシルクロードは壁画のひとつとってもその立地条件や自然環境により全く異なります。面白いですね。

カラコルム山脈の山々 そして人は旅で感じた手ざわりは、けして忘れないものです。そして手ざわりの感触は自分だけの記憶です。ですから、通りいっぺんの旅で単に現地ガイドの話しを聞いただけで写真を撮って帰る、急ぎ足のシルクロードの旅では味わうことはできません。朝日サンツアーズのお客様には、あらゆるシルクロードの歴史に触れて学ぶ手ざわりの大切さがわかる旅を体験してほしいと思います。幾度も同じ場所を訪れても、その時々で旅の感触は全く違うはずです。例えば、将来何らかの理由で旅に行けなくなくなったとします。しかし、その時の手ざわりの旅を経験しておけば、再びイメージの中でシルクロードの世界に入ることができる。私は、旅での手ざわりは「旅の貯金」であると表現できると思います。いつか自分自身で旅の貯金を引き出せる。時に、壁画に触ると叱られますけどね(笑)。
 一言でシルクロードの旅を表現すると、「考え方ひとつで十倍楽しめることであり、人生より長い旅である」ということでしょうか(笑)。皆様、よい旅を経験してください。



 この度は、歴史家金子民雄先生に貴重な旅の体験談を中心にお話をお伺いしました。有意義な対談の全てを旅なかま誌面でお伝えすることはできませんでした。このお話の続きは、金子先生の講演会や出版物でお楽しみください。また実際に旅に出て感じてください。そして、「2005年シルクロード上に暮ら人々、皆様にとって平和でよい年でありますように。」ありがとうございました。
(聞き手/松本 秀信)



金子 民雄 金子 民雄氏(かねこ たみお)プロフィール
 
1936年生まれ。日本大学商学部卒業。
Ph.D(歴史学)19〜20世紀の中央アジア史と探訪史の研究を続ける。
著書:「ヘディン伝」「シルクロード人と本」「西域列伝−シルクロード」「楼蘭への旅」「タクラマカン周遊」「文明の中の辺境」など多数。

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