HIMALAYA(ヒマラヤ)
3月。久しぶりのヒマラヤへの旅だった。この季節はポカラの北に広がるアンナプルナ山群の懐(標高2800m付近)は真っ赤な石楠花が丘を覆い尽くす。それは今回の旅のハイライトでもある。早速ネパールの首都カトマンズから山岳リゾートポカラへと向った。飛行機に乗って20分。窓から鋭く尖った峰が特徴の霊峰マチャプチャレ峰が見えるとポカラだ。
―そしてチリンシェルパに再会した。彼はシェルパ族(エベレストの麓に暮らす山岳民族で登山の案内で知られる)で、ヒマヤラを縦横無尽に駆け回る山岳ガイドのサーダー(リーダー)をしている。どっしりとした体つき、日本人より一回り小柄な体は、典型的な山岳民族の容姿でシャイな性格。そんな彼も時にヒマラヤに関しては別、山の状況を的確に伝える。―彼は正真正銘の先鋭な山岳民族の血を受け継ぐシェルパ族なのだ。
今回、彼の案内は3回目。初めて一緒に旅をした10年前には少し目を離すと仲間と博打(チベット系の人は賭け事が大好き)を始める始末。短気な僕は大声をあげたこともあった。しかし10年という歳月はそれを笑い話として受け止める充分な時間であった。
今回は全く違った。彼がスタッフに少し顔をひねるようなシェルパ独特の合図を送る。若いシェルパが敏速にそれを受ける。頼りになるリーダーの風格が漂っていた。現在、彼は36歳。日本の社会では中堅という年齢となるが13歳からこの仕事を始めた彼にとって今は成熟された時なのかもしれない。
神々の主座ヒマラヤ。このネパールを中心とする東西2400kmの大山脈群以外に8000m級の頂きを眺めることはできない。初めは誰もがこの大迫力を目指しヒマラヤを訪れる。しかし、旅を続けるうちにその麓に暮らす人々に感動を覚える。
ヒマラヤは、サンスクリット語で『雪の住処』という意味を持つ。その雪山の麓で生きる人の目の輝きと力強さは、ヒマラヤ最大の魅力に違いない。
ポカラから3日目。旅のハイライト、プーンヒル(3194m)に着いた。正面に構えるダウラギリ峰と石楠花。そんな絶景に手が届く麓の村で人生を送ることに僕は惹きつけられる。
私達が山に向って踏みしめる石の道、丘の向こうに見渡せる棚田、石で造られた家の屋根、そのひとつひとつが「ヒマラヤ山麓の芸術」に見える。
ヒマラヤの旅。雄大な自然の風景は人間の心を素直(ストレート)に表現させてくれる。
―遥かなるヒマラヤの旅。登頂に挑む極限のヒマラヤの魅力にも劣らない素晴らしい山麓の旅はモンスーンの季節が終わる10月、始まる。
旅の途中、彼にひとつの質問をした。『何故、山岳ガイドの仕事を選んだの?』彼の答えは笑顔だった。シェルパ族の伝統的な職業を受け継ぐのに理由は必要ないのかもしれない。
今年も彼は、いつもと変わらず旅人をヒマラヤに案内してくれることであろう。
〜ヒマラヤの旅が待ち遠しい、梅雨の東京より。〜
  
 
NEW ZEALAND(ニュージーランド)
南十字星の国にある 世界で最も美しい散歩道 《ミルフォードトラック》を歩く
山を愛し、自然を愛し、そして歩くことが好きな方ならば、一生に一度は歩きたいトレッキングコースがこのミルフォードトラックだ。ニュージーランドの南島、フィヨルドランド国立公園のテ・アナウ湖の湖畔をスタートして、ニュージーランド屈指の観光地ミルフォードサウンドまでの約55キロを3泊4日の山小屋泊まりで歩く。
11月から翌4月までほぼ毎日、世界各国から山好きが約40人程集まって(人数制限あり)このトレッキングツアーをスタートする。ヨーロッパから、アメリカから、アジアから、世界の仲間がトレッキングを楽しむ。ツアーの前半戦はブナの原生林を歩く。メインはなんと言っても1154mのマッキンノン峠越えだ。ジグザグの登り道を歩いていけば、やがて森林限界を越え、高山植物に励まされ頂上のモニュメントに到着する。そしてここからの後半戦は、まるで古代の恐竜が現れてきそうな大きなシダのジャングルを歩く。ロッジはどれも快適でまるでホテルのようだ。日本の山小屋もこれくらい・・と考えるのは私だけではないはずだ。
歩き終わった後の1泊、4泊目が事実上の最終日になる。ミルフォードサウンドの目の前に建つホテルですっかりうちとけたトレッキング仲間の間で始まるのは「万国芸能合戦」だ。愉快な踊りを披露するフランス人、美声を聞かせるドイツ人、おもしろいゲームをおしえてくれるアメリカ人、外国でも有名な「上を向いて歩こう」を合唱する日本人。笑い声、歓声は、フィヨルドランドの夜が更けてもいつまでも絶えることはない。
  
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