THE
MIDDLE AND
NEAR EAST(中近東)
写真家 大塚 雅貴
風に流された砂は穏やかな砂丘の斜面を静かに流れていく。渦を巻いては空へ舞い上がり、地上に降り積もっては新しい砂丘のかたちを造り出す。うねるような砂丘の稜線は高さ250メートルを超える頂上まで達し、何度も立ち止まりたどり着いたその頃からは眼下を埋め尽くす砂の海が広がっていた。アフリカ大陸のおよそ3分の1、900万平方キロの広さを誇る世界最大の砂漠サハラに、私が何度も訪れているのはこの砂丘に魅了されたからだった。93年に訪れたのがきっかけで今まで5回の撮影を行ってきた。それはここを訪れた多くの旅人と同じように「サハラの虜」になってしまったからだろうか。
  
祈り・モスクにて
アラー・アクバル(アラーの神は偉大なり)…。イスラム教礼拝堂モスクのミナレットから流れるアザーンの声で目を覚ます朝。キッチンから流れるアラブコーヒーの強い香りがエキゾチックな雰囲気を更にかきたててくれる。
一歩、外に出ればここはイスラムの世界。モスクでの朝の礼拝から帰る人々の群れ、スークに売られていく羊達の群れ、エネルギッシュにスークを行き交う商人達の群れ。
金曜日、それは人々にとっての聖なる日。預言者ムハンマドはこう話している。
「太陽が昇るのに最もふさわしいのは金曜日である。人類の父アーダム(旧約聖書のアダム)が生まれたのは金曜日である。また、アーダムが天国に入ったのも、この地に降りて来たのも、そして、アーダムが亡くなったのも金曜日である」。
金曜日、モスクに集う人々。そして預言者ムハンマドが生まれ暮らした、遥か東方の聖地メッカに向かっての一心な祈り。
何か心洗われる風景がここにある。
 
生きる・イスラムの地にて
髪、それはイスラムの戒律を忠実に守る女性にとっては自らの命の次に大切なもの。そもそも高貴な女性が顔や姿かたちを他人にさらさないようにする風習はイスラム発生以前から中東の風習であったといわれている。
イスラムの経典コーランの一説。「成人した女性は、それから女性の信仰者にも言っておやりなさい。慎み深く目を下げて、外部に出ている部分は仕方が無いが、その他の美しいところは人に見せぬように」
髪を隠すベールを意味する現地の言葉はヘシャブ。国によって呼び方は異なるが、成人した女性はそのベールをかぶり、大切な髪を見せられるのはその家族だけ。
家を守ることを重要視される女性が外出することはなかなか難しい。モスクでの祈り、時折の友人とのショッピング。そんな時に見せる彼女たちの素朴な笑顔。
どこか心癒される微笑みがそこにある。
 
夕陽・ナイルにて
世界最長の河ナイル。巨大な砂漠の中を悠々と流れるナイルは恵みの河。太古、その氾濫が文明を呼んだ。流域にある数々の神を祭った神殿、歴代の王達の墳墓。ロマン溢れる世界がある。ナイルの流れと壮大な砂漠をつなぐわずかな地帯はグリーンベルト。そこは米、サトウキビ、ナツメヤシなどを育む現代の恵みの地。
一日の労働を終える頃、オアシスの彼方の砂漠に大きな夕陽が落ちる。
心みなぎる光がここにある。
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