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旅なかま 9・10月号

待降節のヨーロッパ
待降節のヨーロッパ
待降節のヨーロッパ

 カトリック教会の暦は、クリスマス(降誕祭)の4つ前の日曜日から、クリスマスを準備する期間に入る。救世主幼子イエスの誕生を心をこめて待ち望むことから「待降節」と呼ばれる。待降節にカトリックの家庭で準備されるものがある。ひとつは、待降節の環といわれ、30センチ位の常緑樹(ひいらぎ、杉、もみの木)で作られるドーナツ状の環で、4本のローソクを立てる。最初の日曜に1本、次の日曜に2本と火を灯し、近づくクリスマスに一段と喜びをそえる。ふたつめは馬小屋。小さな人形などで思い思いの工夫をこらし、イエス誕生の場面を再現する。さいごは心尽くしの豆電球のイルミネーション。星の形、トナカイ、雪の結晶と家庭により様々だ。
 私の住むヴェズレーもこの時期になると観光客、巡礼者はめっきり少なくなるが、ユネスコ世界文化遺産サント・マリー・マドレーヌ大聖堂は、本来の修道院聖堂としての輝きを増す。860年に建立され、1000年代に形を整えたフランスを代表するロマネスク様式の聖堂だ。「静寂と沈黙」修道院が常に大切にしているもの。すべての人々を迎え入れ、共に祈ることが私たちの召命である。第2、第3回の十字軍の遠征はこの地より出発した。彼等の使命感に思いをはせる。
 聖堂はマグダラの聖マリアに献げられ、聖遺物(彼女の助骨の一部)が安置されている。日本でも売れたらしいが、「ダビンチ・コード」の一説がふと浮かぶ。私も「能」の筋書きを創作してみた。前シテはサンチャゴ・デ・コンポステラの、巡礼者相手の山奥の一軒宿の年老いた女主人。狂言方が巡礼者、後シテはマグダラの聖マリア。イエスへの思いを、つのる思いを、切々と語る。そしてイエスとマグダラの聖マリアの連舞。美しい…。桜色の小袖を着せて。うっとり…。(雑念…。神様、ゴメンナサイ!)
 私のヨーロッパでの生活も1960年代にはじまり40年以上になろうとしている。これからの課題であるが、還暦を前に、また新しい言語習得に励まなくてはならない。中国語、韓国語である。ヨーロッパ人にとって日本語もこれらも同じ言語と思っているらしい。また、クリスマスの余興を準備しなくてはならない。音楽家として活動する私だが、最近手に入れた新しい「楽器」の伴奏で、数人の修道士が太極拳を披露する予定だ。
 待降節を過ぎると、降誕節、元日と公現祭、聖ヴァンサンの日と続く。公現祭はイエスが生まれたあと、東方の三博士が訪問してお祝いを述べたことを記念する日。来年1月15日にヴェズレーではサン・ヴァンサン・トゥルナントのワイン祭りが盛大に行われる予定だ。ヨーロッパが一番ヨーロッパらしい時。ヨーロッパの素顔(スッピン、ヨーロッパ)は冬である。みてほしい、みせたい、いや、みるべきだ。修道院文化発祥の地、そして冬ならではの豊かな食材の宝庫。みのがすテはない。






ダミアン ダミアン 原田氏(ダミアン はらだ)

福岡生まれ。
イタリア教皇庁立ウルバノ大学布教神学科、国際カルメル会・テレジア大学霊性神学科、サンタ・チェチリア音楽院・パイプオルガン・チェンバロ科終了。
現在はエルサレム修道会の修道士として、フランス・ブルゴーニュ地方のヴェズレーにあるサント・マリー・マドレーヌ大聖堂の修道士でオルガニスト。

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