FRANCE (フランス)
仏蘭西は美しい、そして多彩な表情をもつ国です。
自然、建築、芸術、恵みと4つのテーマでご紹介いたします。
三方を海に囲まれた仏蘭西。北海、英仏海峡、大西洋、そしてピレネー山脈を挟んで地中海が5500キロも連なり、個性豊な海岸線を描いています。薔薇色花崗岩の半島、伝説を秘めた奇岩や岬、塩田が続く湿地帯や、断崖絶壁のカランク(入り江)など、訪れる者を飽きさせません。
南東にはアルプスの高峰、東はジュラ山脈とボージュ山脈が連なり、ドイツとの国境近く父なるライン川が流れます。中央に広がる中央山塊は火山活動の跡をそのまま眺められる独特の景観。しかし周辺にはロワール、セーヌ、ローヌ、ソーヌの大河が悠々と流れ、緑濃い清らかな景色となっています。川の芸術タルン渓谷は中央山塊の南、氷河の芸術ガヴァルニー圏谷がご覧いただけるのはスペイン国境のピレネー山脈の麓です。
 
仏蘭西は芸術の国。建築・美術の宝庫です。ヨーロッパでいち早くローマ文化の華が開いたのは南フランス・ガリアの地でした。今も水道橋やアレーナや野外劇場など大規模な古代建築が残り、ガリア・ロマン文化の遺構を堪能できます。根強い人気が続く中世ロマネスクの建築・美術はフランス全土におよび、それぞれの地方独特の意匠を凝らし、美しい風景の中で豊な個性を発揮しています。
仏蘭西のオリジナルといわれるゴシック建築は、ランス、シャルトル、アミアン、パリなど各地に美しい絵ガラスとともに壮大な伽藍と尖塔の存在を誇示しています。そして、フランスの宮廷がおかれたロワール河畔にはルネッサンスの華麗なる城郭・宮殿が連なり、ベルサイユ宮殿は当時のヨーロッパの各宮廷に影響を与え、造園を含めて宮殿建築様式のモデルとなりました。
さらにアルザス、シャンパーニュなどの地方には木組みの家並みの可愛らしい街々が連なっていますし、ブルターニュにはケルト的意匠の建築が数多くあり、地方文化もまた旅人の心を楽しませてくれます。
 
仏蘭西は古代から現代まで常に美術界のリード役を果たしてきたのです。フランス文化の中心は勿論パリですが、「芸術の都パリ」と言う言葉はパリがフランスのそうした厚みのある文化的、美術的伝統を引き継ぎ、その頂点にたっているからこそ与えられる呼称と言えるでしょう。
「芸術の都パリ」には世界に冠たるルーヴルをはじめ、印象派の殿堂オルセーやオランジュリー、さらにピカソ、モロー、ロダンなど枚挙に暇がないほど多くの美術館・博物館があり、全部みるとすればきっと1ヶ月くらいかかるでしょう。
ここではちょっとパリから離れて地方に眼を移してみましょう。パリ以外で美術を楽しむ街ベスト10に、皆様なら何処を選ぶでしょうか。なかなか難しいです。地方の楽しさは作品だけではなく、むしろ作家ゆかりの地であり、作家が実際に生活した場所であるからでしょう。画家が体験した風に吹かれ、陽光を浴び、自然や風景に触れ、街の空気を吸う、いわば追体験ができることでしょう。
ロートレックの故郷アルビ、マチス、ルノワールなどが晩年を過ごし、シャガールの「聖書の言葉」美術館もあるニース、シニャックなど点描画家たちの拠点となったサン・トロペ、ピカソのアンチーヴ、セザンヌのエクス・アン・プロヴァンス、ゴッホのアルルやオーヴェール、ゴーギャンが「黄色いキリスト」の着想を得たポンタヴァン、モネの「睡蓮」の大作を生んだジベルニーなど画家ゆかりの街々や美術館を訪ね歩くのはとても楽しいです。又、珠玉の一点を見るならば、グリューネヴァルトの「イッセンハイムの祭壇画」のコルマール、ファン・デル・ヴァイデンの祭壇画「最後の審判」のボーヌなどなどでしょうか。とにかく、仏蘭西は全土が美術館であり博物館だといえる国なのです。
 
天地陰陽の気が調和すると天から甘い液体が降ってくる。これを甘露というそうです。言わば天からの恵み。仏蘭西はまさに様々な甘露が満ち溢れています。
グルメなどという言葉では言い表せないほど、フランス人にとって「食べる」と「飲む」は楽しまなければいけない、最も大切なこと。市場(マルシェ)をのぞけば一目瞭然!目にも鮮やかな野菜やカラフルな果物、数えきれない種類のハムやソーセージ、チーズが所狭しと並びます。お肉屋さんやお魚屋さんはお客さんひとりひとりに、自慢の商品を切り分けながら、レシピのアドヴァイスもしてくれます。
仏蘭西で、美味しく食べて飲むのは実に簡単。その地の気候風土に最も適した葡萄で作られた個性豊な地元のワインと、その地方の歴史が育んだ、自慢の郷土料理や特産物と一緒に味わうこと。天からの恵みに感謝したくなります。
 
(文/間邉恒夫、野口静子) |