ヨーロッパアルプスを歩く
神々しく聳えるアルプスの名峰。なんびとたりとも寄せつけない圧倒的な存在感の麓に広がる牧歌的で可愛らしいアルプスの村々。そして抜けるような青い空、可憐に咲き乱れる高山植物、太陽光に反射して煌く氷河。心の底から美しいと思える光景がここアルプスでは日常だ。限りなく静穏な環境の中で、一切の雑念を取り除き山と向き合う。山を愛する者の至福の時だ。角度により時間によりその姿は千変万化する。時間をかけてお気に入りの村、お気に入りの山を見つけたい。
不思議なものだ。ここアルプスにはヒマラヤのような8000m級の山があるわけではない。せいぜい4000m級だ。しかし、私は訪れる度にこのアルプスに畏敬の念を常に抱く。頂きへの憧れがいつしか挑戦に変わり、古今多くのアルピニスト達を魅了し続けてきたアルプス。結果、たくさんの喜びとその何倍もの悲しみを生み出している。この凄絶なドラマが私の想いを助長させているのだろう。アルプスの象徴マッターホルン、ベルナーオーバーラント地方の代表ユングフラウ三山(アイガー・メンヒ・ユングフラウ)にしても然り。その凛とした佇まいの中に棲む厳しい表情を常に意識する。
地球が誇る大自然の中に生かされている私たち人間。その懐に包まれるために旅人・ハイカーはアルプスへ向うのではないだろうか。
イタリア・ドロミテ地方 聳え立つ岩峰群の芸術
他のアルプスとまったく趣を異にするドロミテ地方のその景観。ドロマイトと呼ばれる独特の石灰岩地質から形成される山塊が長い年月の侵食により削られ、垂直に聳え立つ岩峰群の芸術性を創り出してきた「岩の王国ドロミテ」。ロック・クライミングの聖地としても世界的に名高く、世界8000m峰全14峰の無酸素登頂を成し遂げたラインホルト・メスナーを輩出したことでも知られる。麓にはのどかな牧草地と可憐な花々が咲き乱れ、何人たりとも寄せつけない雰囲気を持つ岩峰群とのコントラストもまたドロミテの魅力だ。
ドロミテ地方のハイライトともいえるドライ・チンネン(トレチーメ・ディ・ラヴァレード)のハイキング。チーマ・オヴェスト、チーマ・グランデ、チーマ・ピッコロの3岩峰から成るドライ・チンネンを一周する約9ワの達成感のあるハイキングだ。ドライ・チンネンを見上げながら摂るロカッテリ小屋での昼食はここまで歩いてきた人間だけが堪能できる最高のご馳走だ。
スイスやオーストリアのような名峰が決してあるわけではないが、その特異な存在感で人々を魅了し続けるドロミテ・アルプス。岩の王国の虜となる旅人は少なくない。
〜なぜかホッとする素朴なチロルの横顔〜
チロルはオーストリア西部に広がり、沢山の渓谷が存在する。ドイツとイタリアの両国を行き来するためには、険しいアルプスの「壁」を越えなくてはならず、その際必ずチロルを通ったことから、古くから交通の要所として栄えてきた。その一方で、厳しい自然条件のなかで、これと闘い克服し、また共存する過程で、チロル独特の生活スタイルと気風が培われてきた。さらにアルプスに囲まれた渓谷の村々では、それぞれ独自の方言や文化が発達し、それらは伝統として今に大切に伝えられている。
チロルはまさにヨーロッパの交差点、あらゆる民族、歴史と文化がここで交わり、古くから伝わる独特の文化や習慣が今なお色濃く残るヨーロッパアルプスの中でも大変貴重な存在の地方だ。
チロル・アルプスの山々は夏にはトレッキングやハイキングのコースが無数に点在する。夏の間、牛や羊が放牧される緑のアルムの高原では、カウベルの音が谷間に響き渡り、ふもとにある数多くの村々には今も素朴な暮らしをした人々が住んでいる。そしてチロルの牧歌的な景観や家々の窓に見ることのできる色とりどりの花々は旅人の旅情をかりたてることだろう。
とにかく素朴で絵のような風景に出会う山歩きへいざ。  
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小川清美氏 (おがわ きよみ)
写真家
略 歴:1949年東京都杉並区に生まれる。ガラス工芸デザインをへて、写真家・土岐三雄氏に師事。1980年に独立。著書に「スイスアルプスハイキングガイド」(山と渓谷社)「スイスアルプスの旅」(新潮社)「スイス・アルプスを撮る」(新潮文庫)など多数。
●小川清美写真展『移ろう季節.スイスアルプス』
四季にわたりスイスアルプスを中心に撮影した写真40点を出品。ヨーロッパアルプスの三大名峰と言われるユングフラウエリア(スイス)、マッターホルンエリア(スイス)、を中心とした写真が多い。朝夕の美しい時間帯や時として天候の変化がもたらす現象に目を向ける。移り変わる季節の変化に心が惹かれ、今では四季にわたりスイスアルプスの撮影に出向いている。
■ 展覧会期間 5月23日(水)〜29日(火) 休館日/日曜、祝日
■ 展覧会場所 コダック フォトサロン ギャラリー1
■ 会 期 時 間 午前10時〜18時
〒104‐0061 東京都中央区銀座6‐4‐1
東海堂銀座ビル3F 03‐3572‐4411 |
中国四川省の自然景勝地 九寨溝&黄龍&四姑娘山
九寨溝(きゅうさいこう)、黄龍(こうりゅう)、四姑娘山(すうくうにゃんさん)、 ひと昔前「これはなんと読むのですか」とよく聞かれたものです。中国の秘境と紹介された時代、この美しい仙境の地を訪れるには至難の技でした。しかし今、九寨溝、黄龍は知名度も高くなり、多くの観光客が訪れるようになりました。去年、九寨溝の空港はリニューアルオープン、黄龍にはロープウエイが完成しました。また、幻の花と呼ばれるブルーポピーの観察もできる事で話題の四姑娘山麓の町・日隆では、ホテルの建設ラッシュを迎えています。秘境
へ≠ニいう旅路ではなくなりつつありますが、仙境の地であることは変わりありません。
■九寨溝
岷山山脈に連なる標高2000〜4300mにある渓谷で、宝石のような大小100余りの澄み切った湖沼と渓流瀑布が、四季折々に色づき美しい世界が広がります。
■四姑娘山
標高6250m の四姑娘山を初め、チベット高原に続く山塊は圧巻。6〜7月は高山植物が咲き乱れ、花に囲まれながらハイキングを楽しむことが出来ます。
心も染まる中国の自然景勝地へきがるにお出かけ下さい。 (大島明未)
 
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