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機関誌「旅なかま」掲載記事など最新のトレンドがわかるブログ

旅のアクセント

2018年12月28日

旅のサイドストーリー ~旅人の心に添う 秘湯は人なり~ 第5回 岡村興太郎さん(法師温泉・長寿館)≪後編≫

≪水源の森を守る(後編)≫

法師温泉 長寿館(群馬県利根郡みなかみ町)

岡村興太郎(おかむら こうたろう)さん

日本屈指の自噴温泉の水源地に持ち上がったスキー場建設計画。秘湯の宿主たちが始めた「水源の森を守る」活動は、新聞掲載をきっかけに大きく動き出した。

平成3年、正月の紙面に「新治村の自然を守る会」の活動が取り上げられると、すぐに日本自然保護協会から連絡がありました。「森に手をつけることは、水に手をつけること、に共感しました。一緒に現地に行きましょう」。環境問題に詳しい本多勝一記者も同行することになり、朝日新聞社がヘリコプターを出してくれました。

スキー場の建設計画地上空を飛んでいる時のことでした。見たこともない大きな鳥が、私たちのヘリの近くを旋回したのです。まるで何かを伝えに来たかのように。「あれはイヌワシだ。しかもつがいだよ」。日本自然保護協会の横山隆一部長が興奮した様子で叫びました。ニホンイヌワシは、全国にも数百羽しかいない国の天然記念物です。絶滅危惧種のイヌワシが、それも家族で住んでいるとなれば、国も無視はできないはずと士気があがりました。

岡村興太郎さん

法師温泉長寿館 提供:長寿館

ところが、「生息の事実だけでは見直しは難しい。スキー場建設が、野鳥などの生き物に与える影響を学術的に説明する資料、報告書を」との回答が戻ってきました。

それからは本業を忘れるほど、野鳥の生態調査の毎日でした(笑)。単なる反対運動にはしたくかった。自分たちが暮らす地域、自然のことを知り、誇りを持ってもらいたいという思いもあり、温泉宿主仲間の岡田洋一氏とともに、村民調査団をつくりました。毎日のように山に登り、暗くなるまで観察するうち、遭難しそうになったこともあります(笑)。

調査を続けるうちに、希少種のクマタカもいることがわかりました。食物連鎖の頂点にいるこの種のトリは野生動物が生息する自然でしか生きられないのです。

専門家の指導を受け、100ページに及ぶ報告書『イヌワシ・クマタカの子育てが続く自然を守る』が完成したのは、8年後のことでした。報告は認められ、その頃には社会も「生物多様性」を尊重する方向だったのでスキー場建設は、その間に動いたダム建設計画とともに中止となりました。

平成17年、新治村は合併で、みなかみ町となりますが、「利根川源流として、人と自然が共生できる街」をコンセプトに掲げています。そして、昨年7月、ユネスコエコパークにも登録されました。

もともと、うちの温泉はすべて川底から湧く自噴です。水一滴、加えることも沸かすこともないのです。いい時も、苦難の時も、「そこにあるもので生きていく」。私が動物や植物に教えられたことです。

(取材・構成 朝日旅行/旅と文化研究会)

 

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投稿:首都圏発国内旅行担当