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機関誌「旅なかま」掲載記事など最新のトレンドがわかるブログ

旅のアクセント

2016年01月25日

お客様から寄せられた旅の見聞録をご紹介します!

当社のハイキングツアー「2015年9月8日発 黄葉とオーロラ観測!アビスコ国立公園と絶景ロフォーテン 9日間」に参加したお客様の見聞録をご紹介します。

 

王様の散歩道

 このツアーの目玉は、アビスコ国立公園に3泊してのオーロラ鑑賞と王様の散歩道トレッキングである。公園の北部にクジラの頭が湖に突き出るような形の標高1169mのニューラ山が聳えている。北方のフィンランド側から押し寄せる氷河に何度も襲われ、削られたなかで生き残った岩山である。この山の麓に氷河が作ったトルネ湖に沿って広大な公園が広がっている。白樺林がびっしり黄葉して、合間にコケやベリーの灌木が生え、湿地帯には尾瀬沼のように板が置かれている。山麓、渓谷、湖岸沿いなど変化に富んだ散策コースを楽しめるように配置している。
初日にオーロラ爆発を見た余勢で、2日目、ニューラ登山に挑戦する。 ホテルでパン、ジュースと小さなリンゴで昼飯を用意し、10時頃、キルナから来た青年ガイドと合流し、添乗員さんを含め十人でリフト乗り場へ向かう。 リフトからの眺めは素晴らしく、白樺林の合間にコケやベリーの赤い花がびっしりと生えている。人が乗る度に停まるため三十分ほどかかって900mの地点に到着した。リフトを降りるとトイレがあるが、我々のガイドは景色の良い所で立ちションして私と添乗員を驚かせた。スエーデン人も山男は野生児でなのである。さわやかな小春日和のなか、緩やかな上り道が遠く稜線まで続いている。
難行苦行が始まったのはそれからだ。十五分ほど登ると息が上がって苦しい。こんな筈ではなかったと思ったが、やはり病気の影響が出てきたようだ。実は7月頃から手足が痺れだし、MR画像を撮ってもらったところ典型的な脊髄症と診断された。首の頸椎間の軟骨が脊髄をかなり圧迫しているのが旅行の直前に分った。八杉に相談した所、旅行コースでしんどいのは山登りだけであり、それさえやめてホテルで休んでおれば良かろうとのことであった。
野生児の兄ちゃんに頼み込んでゆっくりあるいてもらう。それでも少し歩くとだめで、自分でもはがゆいほど動作が緩慢になり普段の半分もない。ギブアップすると、添乗員さんを始め皆さんが励ましてくれる。八杉も荷物を持ってくれると云うので歩き出した。

左側が筆者(元田武彦氏)

左側が筆者(元田武彦氏)

小石混じりの岩道を2本のストックを突きながらひたすら足を前に出して行く。それから四度もギブアップ宣言してやっとの思いで頂上に立ったのがこの写真だ。格好は一人前ですがね。後方に雪を頂いたノルウエーの山々が見える。

 下りは少し余裕が出てきて、周りの景色が見えてくる。氷河が残したモレーンのあいだにコ
ケとベリーの赤い花が見える。驚いたのは数ミリ径の白樺が網目状に地を這っている様で、添乗員さんに教えてもらってやっと分った。強風と積雪のなかで必死になって寒冷化適応しようとしている白樺の意思が伝わり、感動的でさえある。
グロッキー気味の私はリフトで降りることにし、他の人達は三時間程かけて下山することになった。たっぷり
時間がある。リフトのヴェランダで八杉に運んでもらったプレミヤビールを飲む。真正面、点在する湖沼と草原のはるか彼方にコルが見事にU字状に抉られたラポーテン(サーミ語でラップランドの門)が見える。古代よりサーメ人はトナカイを追ってここを行き来していたのであり、巨大な角を振上げた大群が雪煙を上げて通過する様子が眼に浮かぶ。

ラポーテン

ラポーテン

 夜十時頃から2時間ほどオーロラが現れる。東の空一面に巨大なカーテンが一瞬に現れ、揺れ動き、重なり、消えた。
翌日は湖水沿いにある王様の散歩道をハイキングする。十分も歩くと王様の散歩道の入り口が見えてくる。丸木で作った切妻門に大きくKUNGSLEDENと刻印した一枚板が打ちつけてある。しばらく歩くと轟々という音がして白樺林に縁取られた渓谷が現れた。上流には雪を頂いた山が見え、片麻岩を削って青く澄んだ水が滔々と流れている。珍しい植物の写真を撮りながらゆっくりと湖に出て、湖岸沿いを歩く。魚影はなく、小鳥のさえずりもない静寂である。
その夜は北極星から巨大なオーロラの傘が拡がり、赤く青く光って消えた。次いで真上に何重にもカーテンが拡がり裾が舞う。
王様の散歩道は、大空一面の光交響曲を奏でて幕を閉じた。
元田 武彦

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投稿:朝日インタラクティブ