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機関誌「旅なかま」掲載記事など最新のトレンドがわかるブログ

旅のアクセント

2011年09月01日

2011年9月 1日 旅なかま9月号 「美の旅」担当からのお知らせ

〔本稿は会員誌『旅なかま』2011年9月号に掲載されたものです〕
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500年の失われた時から蘇るダ・ヴィンチの絵画作品

 7月にレオナルド・ダ・ヴィンチの失われたと思われていた絵画作品「救世主キリスト」(サルバトール・ムンディ)がニューヨークで発見されました。2009年の「美しき姫君」(油彩画ではない。現在完全にダ・ヴィンチの真筆と評価が確定した訳ではない)を除けば、おおよそ100年前の1909年に、現在エルミタージュにある「ブノワの聖母」が発見されて以来のダ・ヴィンチ作品の発見となります。左手にクリスタルの天球を持ち、祝福を与える右手をかざしている縦65・5センチ、横45・4センチの上半身の油彩画です。ダ・ヴィンチが描いた「救世主キリスト」という作品が存在したのではないかということはかなり以前から知られてました。なぜならば、画家は2枚のデッサンの習作を描いたこと、また、ボヘミアの画家ヴェンゼラウス・ホラーがダ・ヴィンチのオリジナルの作品をもとに1650年に描いた細密なエッチングなど、弟子やダ・ヴィンチ派といわれる画家による20枚以上の模写があったことが記録に残されているからです。しかし、作品は消失してしまって現存しないとずっと思われて来ました。
 この絵の変遷を辿れば、1649年にイングランド王チャールズ1世のコレクションの中にその絵が存在していた、というのが最も古い記録です。王の死後、売却されましたが、再び英国王室に戻り、チャールズ2世の所有となり、その後また、バッキンガム公の手に渡りました。バッキンガム公の館バッキンガム・ハウス(現在のバッキンガム宮殿)が王室に売却された直後、1763年にその息子によってオークションにかけられます。その後絵は行方不明となりましたが、1900年にフレデリック・クック卿の手に渡ります。行方不明の間に絵は損傷を受け、上からキリストの顔は塗りつぶされ、この絵がダ・ヴィンチの作品であることは忘れ去られたのでした。1958年のオークションで、クック卿の子孫はこの絵を紙屑のように僅か45ポンド(当時の為替レートで約5万円)で売却しました。そして何人かの手を経て2005年にロバート・サイモンという名の現在のディーラー(画商)集団の手に渡りました。
 ミラノの「最後の晩餐」壁画修復を主導したピエトロ・マラーニ、メトロポリタン美術館の主任学芸員のカルメン・ヴァンバック、ルネサンス美術の権威で、ダ・ヴィンチ研究の第一人者として著名な美術史家のマリア・テレサ・フィオリオ、ダ・ヴィンチ研究に生涯を捧げ、前記の「美しき姫君」(ベッラ・プリンチペッサ)をダ・ヴィンチの真筆であるとの実証を試みたオックスフォード大学のマーテイン・ケンプなど、世界の専門家の間で議論が交わされ、鑑定の結果、ダ・ヴィンチの作品であることに異論はなく真作と認められ、新たにダ・ヴィンチ油彩画15点の一点に加わったのです。真作の根拠として、ダ・ヴィンチのよく知られた画風、フスマートなど優れた技法、2枚の習作との関連、ホラーのエッチングとの符合、そして他の数多の同じ構図の作品がある中で、どの作品よりも優れていること、さらに何よりも、上塗りされた形象の残存や模写には見られない画家の手直しの跡などが認められることです。写真で見ても眼や唇などダ・ヴィンチの特徴をよく示しています。僅かに、その制作年代については議論が分かれるところとなり、ある学者は1490年代の後半といい、ある学者は1500年以降の作品であると主張しました。
 新たな作品の発見は実にセンセーショナルで、近年の美術史上最大の発見の一つといえるでしょう。ダ・ヴィンチは寡作な画家で、現在この美術史上最高といわれる画家の作品と認められているのは絵画において20点にも満たないのです。そして、新たに発見されたこの作品が今秋11月より2月初めまでロンドンのナショナル・ギャラリーにて初公開展示されることが決定しました。
 この特別展に限り、予約制となっています。さらに、この秋クラコフのチャルトルスキ美術館所蔵のダ・ヴィンチの名画「白貂を抱く貴婦人」、ルーヴルから「ラ・ベル・フェロニエール」、「岩窟の聖母」も展示、ナショナル・ギャラリーと二つのヴァージョンの「岩窟の聖母」が並んで鑑賞できるのは初めてのこと、さらにルーヴルからは油彩画の「聖母子と聖アンナ」がカルトゥーンではあるが名品といわれる「聖母子と聖アンナと聖ヨハネ」と並ぶ。エルミタージュからは「リッタの聖母」、ヴァチカン美術館から「聖ヒエロニムス」などダ・ヴィンチの名画9点が一堂に揃う空前絶後の大ダ・ヴィンチ展です。想像するにまさに壮観。是非この絶好の機会をお見逃しなく。
(「美の旅」 間邉 恒夫)

初公開・予約制の「救世主キリスト」を
特別鑑賞できるツアー

美の旅シリーズ
「ロンドンの美術探訪 8日間」
都市を歩くシリーズ
「ロンドン逍遥 7日間」(出発日限定)

投稿:朝日インタラクティブ