出発地を選択してください。出発地はいつでも変更できます。
出発地を選択してください。
×
MENU

機関誌「旅なかま」掲載記事など最新のトレンドがわかるブログ

旅のアクセント

2013年04月10日

2013年4月10日 旅なかま4・5月号 自然を歩こう。巻頭インタビュー ココロとカラダを元気にする歩き方

〔本稿は会員誌『旅なかま』2013年4・5月号に掲載されたものです〕

自然を歩こう。巻頭インタビュー ココロとカラダを元気にする歩き方

鹿野(以下「鹿」):実は昨年の同じ頃に、今井通子先生に『森林パワーがココロとカラダを元気にする』というテーマでお話しをうかがい、「旅なかま 4-5月号」に掲載をさせていただきましたところ、これから本格的なシーズンを迎える山歩き、森歩きの参考になったと、お客様からも結構な反響をいただきました。

今井先生(以下「今」):それはよかったです!

鹿:改めて読み直しまして、山歩きに関する事はもちろん、医学的な話はやはり先生ならではと。それで第二弾ということで、よろしくお願いします。

大人気!山岳ホテルか山小屋か

鹿:グリンデルワルト~ツェルマット~シャモニというような、スイスフランスの先駆的ハイキングを始められたのは先生ですという話を前回したのですが、最近はニーズも多様化してまいりまして、ただケーブルカーやロープウェイで登って上から歩いてくるだけではなく、山の上や山間に泊まって朝夕の景色も堪能し、ゆっくりしてから歩くという山岳ホテルや山小屋に泊まるコースが人気となっています。先生もやはりお好きですか?

:ゴルナーグラートの「クルムホテル」などは、絶景も見たいけど、温かいシャワーを浴びてベッドでちゃんと眠らないと、という快適さを求める方に「ホテル」だから人気があるんでしょうね。あと、少し降りたところの「リッフェルベルク」も良いですよね。マッターホルンに関しては、魅力的な場所だと思いますよ。
でも、雑魚寝でもいいのなら、モンブランやグランドジョラスを堪能したい場合はシャモニ周辺の山小屋がお薦め。コンパクトにできていて、歩き回りやすいじゃない。例えば夕日がそろそろ、とか、虹が出たぞ!みたいなときに、ささっと外に出て写真撮ったりできるのね。そこが、窓やテラスから眺めるようなホテル形式との違いね。山小屋って、とにかく周りすべて山に囲まれていて、山が見える側にはほかに何もないし、斜面にあるから、ちょっと毛布はおって外に出れば、何の障害もなく景色が目の前に広がるんですよ。

鹿:素早く外に出て、素晴らしい一瞬をのがさないということですね!確かに便利ですね。雑魚寝が心配な方にはアドバイスがありますか?

シャモニ周辺山小屋

:でも、夏だと21時くらいまで明るくて、夕陽を眺めて、寝たと思ったらすぐ朝日がでてきちゃうから、実はどちらにしても、そんなに寝ていられないわけ(笑)。
一日、二日の話だし、目的は山を見ることですから。それと、お食事もおいしいんですよね!エスカルゴが出てきたりとか。慣れると山小屋も本当に使い勝手が良いですよ。

鹿:山岳ホテルか、山小屋かは、弊社はどちらのコースもご用意していますが、自分にあった滞在のしかたを選べばいいということでしょうね。

各国で違う、ハイキングの楽しみ方

鹿:先生は圧倒的にヨーロッパアルプスをお歩きだと思いますけど、別の魅力がある国といったらどこがありますか?カナディアンロッキーとか、北米の方はまた違うのでしょうか。

:カナダは、スイスフランスアルプスのように登山電車やケーブルカーではなくて、違う交通網で楽しめる、それがいいと思うんです。
それはヘリとか水上飛行機とか。例えばモンブランの頂上に、ヘリで降ろしてくれなんてできないでしょう?でも、コロンビア大氷原ですとか、みんなヘリで降ろしてくれる。カナダでは空の移動手段が非常に発達しているので、ぜひそれを駆使してダイナミックな眺めを堪能していただきたいですね。

ナハニ国立公園

ナハニ国立公園 ロッジと水上飛行機 写真提供:ism

鹿:なるほど。確かに空から行くことによって、車やケーブルカーではアクセスできない、他から隔絶されているような場所にまで行くことができるわけですよね。弊社でも、ロッジまでヘリで入山したり、水上飛行機でロッジの目の前に着水!なんていうコースがあるのですが、そういう体験は、なかなかないかもしれません!

:北米以外でも、ヒマラヤでも違うし、アフリカなどでも、トレッキングコースといえばホースバックトレッキング、歩くわけじゃないの。とにかく、その国やその場所によって、発達していることや、使うものが違うから、同じようなコースというのはないし、違う体験を楽しむといいと思いますよ。

ヨーロッパの中でも異なる楽しみ方

鹿:ヨーロッパでハイキングというと、まずスイスフランスのアルプスからというのが一般的なんですが、ハイキングリピーターが増えて、コースも多様になりました。オーストリア・イタリアの、チロル&ドロミテも相変わらず人気ですし、最近はフランス・スペインのピレネー地方のハイキングというのがあらたにでてきたんですよね。

:ピレネーはいいよね!

鹿:まだまだ浸透していない地域なので、きちっとした情報をお客様にお伝えしなければと思うのですが。

:そうですね、スイスフランスみたいにケーブルカーだのロープウェイだのはほとんど乗らない。というより、ないし、登ってくる現地の人たちなんて山岳装備もないですもの。雨降ったら、バスタオルかぶって帰るのよ(笑)。
景観も、全然違いますね。湖に次ぐ湖だらけの所があると思えば、ずっと草原が続いて見渡す限りお花畑。さらにそのものすごい奥に、古ぼけた教会があったりとか。

鹿:巡礼の道でもあったわけですから、なんでこんなところにという奥地に中世の教会が忽然と現れたりするわけですね?

:そうそう。手つかずの道をただひたすら歩いて行ったら、ものすごい滝が現れたり、ダイナミックかと思えば素朴な教会に癒されたりね。

鹿:スイスフランスが、イメージ通りのアルプスハイキングだとしたら、ピレネーは新発見に出逢う可能性も多いわけですよね?

ピレネー

ピレネー カヴァルニー大峡谷

:そうですね。歩く道のりが少しだけ長いけれど、それだけ発見はあると思いますよ。

鹿:他のヨーロッパはいかがですか?

:あとはチロル地方がいいよね。岩あり草原ありで、おもしろい。セルデンからオーバーグルグルの途中、4500年前のアイスマンがみつかったところ。あの辺からチロル最高峰のヴィルトシュピッツェが見えるんだけど、山群の感じが、ドーーーーン!とかなり迫力ある。それまでスイスフランスのアルプスしか知らなかったら、一歩ヒマラヤに近づいたかな、というかなり違ったイメージかもしれない。

安全なハイキングとは

鹿:近年、残念なことにハイキング中の事故なども耳にします。我々は全ハイキングコースに現地の山岳ガイドをつけているのですが、常に危険と隣り合わせだということはいつも考えていなければなりません。

:そうですね。基本的に現地のガイドをつけるということは大事なことです。現地の人であれば、いざという時に横の連絡がとれるんです。だから、山にシティガイドをつけたりしてはいけない。意識が全然違いますからね。
あともうひとつは、私たちは70年代80年代にすでに気づいていたんですけど、やっぱり地球上の気候変動というか、気象の異変・・・それがかなりあるのに、多くの人がそこに気づいていないんですよね。
当然人間というのは、みんな一番安全なところから住みつくわけでしょう?水も豊かで産物もとれて。そうすると沿岸部になるわけで、山の方ではない。そういう人の住まない場所というのは、要するに秘境なんです。一番最初に気候変動とかの被害に遭うのはそういうとこなのですね。

鹿:そうすると山へ行く目的の旅行では、気候変動についてもっと認識をしっかりする必要がありますね。

:そうですね。そういう気象の変動が起こったとき、その時の逃げ場というのは必ず想定して、始めから作ってから行かないと駄目なんです。
逃げられるようにするとか、例えばネパールなんかの場合はみんなちゃんとシェルパがテントを持ってきていて、スケジュール通り行かなければその場ですぐテントを張らせるとか、そういうこともできるわけじゃない?
だから、まずは現地のガイドと一緒に歩くということ。そういうことをサっとできるのは、現地のガイドじゃないとできない。それに、洪水で橋が流れちゃっても、翌日には橋作っちゃうからね!現地の人は。

鹿:地元のガイド同士で密に連携をとれるというのは重要なことですね。あとは突然の気候の変動も想定に入れておくという事ですね。

森林セラピーについて

鹿:話はかわりますが、最後に先生が推奨されている「森林セラピー」についてお伺いします。森林セラピーで体のバランスが取れるというのですが、日ごろからウォーキングをするという事などとはまた違うのでしょうか?

:森林セラピーというのは、一生懸命体力を鍛えるために足で登ったりして心肺機能を高めたり、筋力を高めたりするという方法ではないんですよね。人間は起きているときにはそれが必要なんだけれど、寝ているときはストレスをなくしたり、免疫を高めたりというような別の仕事をしているので、両方をやらなければならないんです。その両者のうちの、寝ているときのトレーニング…というとわかりにくいかもしれないけど、メンテナンスが日本人は全然できていない。そこで森林セラピーが効果的なんです。
例えば群馬県の上野村というところにセラピーロードがあるんですが、途中まで車で登って、木を切り出すための林道に案内してもらうんです。そこの崖のそばのところの赤松が見事なんですね。お天気がいいとそこでゆっくり寝っ転がったりしながら、休んだり、昔ながらの方法で木の運搬しているのを眺めたり、メープルシロップをつくる体験をしたり…だからほとんど歩かないんだけれど、すごく気持ちが良くなるんですよね。

オボロカヤ滝

森林セラピー中にオボロカヤ滝近くで寝転んでリラックス!/群馬県上野村・中之沢源流域自然散策路
写真提供:今井通子先生

鹿:それは寝ている時と同じような効果があるのですか?精神がリラックスして。

:寝ころぶことによって、全身に日を浴びられるし、全員リラックスして、ストレス度なんかみんな50%以上下がってきます!

鹿:何かの目的のためにというウォーキングや山登りではないんですね。

:そう、森に行って何かするのではなくて、森に浴びさせられる。

鹿:それは、フットパスとも違うんですね?

:フットパスは、ちょっとまた歩くのが目的になってしまうんですよね。
森林セラピーは、ほとんど歩かないんです。いや、歩くけど、一時間に2キロぐらいしか歩かない。
普通ハイキングをすると、一時間に一回休もうみたいな時は5分10分しか休まないでしょう。こっちは10分ぐらい歩いて、ちょっと景色がいいところがあるとそこで15分は休んでいるような感じ。
そういう行き方だから一時間に2キロ歩いたらいいところですね。

鹿:それも現地の案内人が必要なんですか?

:ちゃんとわかっている、森林セラピーガイドとセラピストがいます。最初と、帰ってきてから血圧を測ったり、アミラーゼを測ってストレス度もちゃんと見るんですね。

鹿:先生はヨーロッパでも同じように歩かれるんですか?

:いいえ。実はヨーロッパの人たちは元々産業革命以降にそれと同じことをやっていたんだけれど、なんだかわかっていなかったんです。まだ施設がありません。
医学的な見地からちゃんと実証して、人間の体が自然のコントロールにシンクロしている部分の新しいところを科学的に発見したのは日本が最初ですから。それで学会を作ったんですよ。
国内にはセラピーロードの基地が53か所あります。でも、例えば島根県に飯南町という基地があるんですけど、関東からわざわざ島根に行って飯南町のセラピーロードだけで済ましたら、もったいないですよね?だから出雲から入って神社を見たり、石見銀山に行ったり、普通の人は行かないけど、地中にある何千年前の噴火の時の木がそのまま残ってるのを見に行ったり、というので、2泊3日くらいの旅行をつくったりするんです。

鹿:一般的な観光旅行とは全然違いますね。

:セラピー弁当というのもあって、優雅ですよ。あと道の駅でお買い物して、地方にお金を落として森を守ろうと。
「観光+健康+地方の経済活性+環境保全、エコ+エネルギー」という4K+2E。
ということで、けっこう深いんですよ、これ(笑)。

鹿:今は、都会に住む人には、そういうのは新鮮でいいかもしれないですね!
一言に「歩く」といってもいろいろな魅力と意味合いがあることに感心しました。
今日は、ありがとうございました。

 

今井通子先生プロフィール

 

投稿:朝日インタラクティブ