出発地を選択してください。出発地はいつでも変更できます。
出発地を選択してください。
×
MENU

機関誌「旅なかま」掲載記事など最新のトレンドがわかるブログ

旅のアクセント

2019年01月04日

旅のサイドストーリー ~旅人の心に添う 秘湯は人なり~ 第8回 深沢守さん(奈良田温泉・白根館)

≪陸の孤島の秘湯に生まれて≫

奈良田温泉 白根館(山梨県南巨摩軍早川町)

深沢 守(ふかさわ まもる)さん

南アルプス山中の秘境・奈良田に生まれ育ち、温泉宿を継いだ深沢さんでしたが、常連客のすすめで秘湯の会に入会しました。そこで知ったものとは?

 

白根館のある奈良田は、南アルプス山中の陸の孤島と呼ばれ、日本最後の焼畑の村で、狩猟と曲げ物作りを主な生業としてきました。山梨県にありながら甲州弁とは違う、独自の奈良田方言を話します。戦国時代は武田信玄公がその方言を利用して隠密(忍者)とし、諸役御免にしたという話も残っています。

村には冬でも凍らない「洗濯池」がありましたが、昭和32年のダム完成で村を水没させることになった時、有志でボーリングして、池の温泉を新しい村まで引きました。その管理を私の父親が引き受け、昭和37年に白根館が開業。父から後を継いだ私でしたが、へき地にあって収入も少ないこの一軒宿の将来を案じる日々でした。

深沢 守さん

奈良田温泉 白根館

ただ硫黄泉で珍しいアルカリ性の源泉、入るとつるつるの肌になる泉質には絶対の自信を持っていました。私は白根館を温泉で売ろうと思い、法師温泉など上州や信州の宿を訪れては参考にしていました。

そんな時に常連のお客さんから「秘湯の会に入りなさいよ。スタンプ集めているんだから」と熱心に勧められたのです。朝日旅行会の創業者・岩木一二三氏に問い合わせをしたところ、「よし分かった! 次の土曜に行くから部屋を空けておけ」。これが秘湯の会との出会いでした。

自分の意志での入会でなかったこともあり、秘湯の会の本質を知るのに数年を要しました。また岩木氏からは「お金のことばかり考えるな」「旅人を迎える心根が足りない」など厳しい言葉を浴びせられました。でも一方では、岩木氏から秘湯を思う熱い手紙が届くのです。

岩木氏が盛んに説いていたのは、「自分の宿のことだけでなく、宿同志の絆を太くして共に生き続ける」ことでした。スタンプ帳は、そのための仕組みなのだということを次第に理解していきました。不景気や天災時でもスタンプ会員だけは途絶えません。それぞれの宿が旅人を思う心根を持って迎えているからです。

そのことをようやく実感し始めた頃には、岩木氏は既にこの世の人ではありませんでした。

熊を仕留めた深沢さん(写真より)

深沢さんが振る舞う「山人料理」

私は猟師として鹿やイノシシ、熊を追いながら、今も宿の電話の予約を自分で受け、スタンプ帳も自分で押します。無愛想でぶっきらぼうな性格の私ですが、奈良田の山の幸を振る舞い、旅人を迎える心根だけはしっかりと持ち続けたいと思っています。秘湯の会と出会えたことで、その喜びを知ることになったのだと思っています。

(取材・構成 朝日旅行/旅と文化研究会)

次回 第9回 後藤英男さん(高峰温泉)≫

前回 第7回 星雅彦さん(栃尾又温泉・自在館)≪後編≫ ≫

 

日本秘湯を守る会の会員宿に宿泊するツアーをご紹介します。詳しくは画像をクリック♪

pgtitle01

 

 

投稿:首都圏発国内旅行担当