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機関誌「旅なかま」掲載記事など最新のトレンドがわかるブログ

旅のアクセント

2019年11月27日

≪コラム≫南フランスの想い出

 

南フランスの美術館めぐりを思うと、いっぺんに心が明るくなる。私は今から三十年以上前の夏の終りに、初めてニースにあるシャガール美術館マティス美術館を訪れた。青い海の砂浜を歩いた後ででかけたふたつの美術館は、それぞれ小高い丘の上に建てられていた。

マティス美術館は、考古学博物館の二階にあった。あたりの大邸宅とは趣きの違うばら色の壁の建物に、私はマティスの室内画をみた時と同じとても暖かなものを感じてほっとしたのである。建物の裏手は公園になっていた。ローマ時代の闘技場や浴場跡が、そのまま残されているのだった。

二階のマティス美術館に入ると、 ニースの青い空と海は、そのままマティスの絵につながっていることがよくわかった。突然窓の外から、ブラスバンドの楽隊の演奏が聞こえてきた。庭にでると、それは愛らしい少女たちの演奏だった。丁度、お祭りの日だったのかもしれない。

やがて、ダンスが始まった。年輩のレディ同志でペアを組み、とても楽しそうに踊り始めた。
その中に、つい今しがた絵の中で出合ったマティスも加わっているような気がした。ゆったりとお腹を突き出した絵の中のマティスのあご鬚も、建物の色と同じばら色だった。ニースで人生を終えたマティスは、この絵を描いた時とても幸せだったように思われた。

 

シャガール美術館は、マティス美術館より少しニース駅に近いところにあった。1973年にこの美術館が完成した時、シャガールは大変に元気だったらしい。彼の作品の中でも、旧約聖書の「創生記」を初め、「出エジプト」、「詩篇」の中の ソロモンの雅歌などの世界を描いた大作が、まだ真新しい感じのする純白な建物の中に並んでいた。自然の光りの中で、作品をみるように設計された建物は、青い空がすぐ間近に感じられるのだった。百歳近くでなくなる迄、ずっとニースで過ごしていたシャガールが、そのような設計を望んだのに違いなかった。

シャガールの絵をみていると、とてもなつかしい気持ちになる。
二十代の独身のころ、私はずっとシャガールの絵のポスターを、部屋の壁に掛けていた。白いウェイディングドレス姿の花嫁が、花婿と一本の木の枝になったようにぴったりと寄り添って、青い夜空へと舞い上がっていく絵である。私も、このような結婚をしたいと思った。しかし、ご縁がないまま三十路に入った私は、早く結婚をするようにと毎日連呼していた母を失った。肝臓の手術後二週間にして空の上へといった母の死の苦しさから逃れる為に、私は生まれて初めてのヨーロッパ美術館めぐりの旅にでかけたのだった。ニースに着く前に、パリ、ロンドン、アムステルダム、アントワープ、更にはオスロとヨーロッパ各地の美術館をみてまわった。どこをまわっても、夜には母の夢をみた。悲しい夢が多かった。ところが、ニースへきてからは、その夢から解放されたのだった。

太田治子

 

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投稿:WEB管理担当