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機関誌「旅なかま」掲載記事など最新のトレンドがわかるブログ

旅のアクセント

2019年09月26日

華麗なるインド文明の基層をさぐる旅 −インドとは何か、を考えるための視点-

 

 

インドといえば、皆さんは、何を思いうかべますでしょうか。インダス文明、ガンジス文明、マウリヤ朝、グプタ朝、ムガル朝、東インド会社、ヒンドゥー教、仏教、カースト、ガーンディー、カレーなどなど。いろいろなキーワードを簡単に思いうかべることができるかと思います。

わたくしが初めてインドを旅したのは、今から15年ほど前の2004年3月のことです。当時はまだ学部3回生でした。きっかけは恩師のすすめです。3月21日にデリーの国際空港に到着し、『地球の歩き方』(ダイアモンド社)を片手に、バックパッカーさながらの格好で、興味をいだきはじめたインドの古代遺跡をめぐりました。途中で何度かはげしくお腹をこわし寝込みましたが、今となってはよい思い出です。その後も、留学をふくめ、もっぱら調査・研究目的となってしまいましたが、毎年のようにインドに足を運んでいます。おかげさまで、お腹をこわすことも少なくなりましたし、スパイスから美味しいバター・チキンをつくれるようにもなりました。

サーンチーのストゥーパ(第2塔)

何十回も日本とインドを往復したわたくしは、インドという国のことを、どこまで理解できたのか。インド調査中に、チャイを飲んでいる時あるいはカレーを食べている時に、そんなことを自問自答したりもします。 わりと真剣にインドと向き合ってきた/いるつもりなのに、ほんのわずかしか理解できてない、というのが現在の答えです。

広さでいえば、日本のおよそ9倍。いうまでもなく、その広大な範囲を特徴づける自然環境は多様です。そして皆さんもご存知のように、インドという場所は、長期にわたり、さまざまな人種・民族が往来し、混淆する空間でもありました。つまりその歴史的環境も多様なのです。われわれ人類は、こうした「環境」との相互作用にもとづき、自らの生活スサーンチーのストゥーパ(第2塔) タイルをかたちづくります。したがってインド各地に、さまざまな文化、伝統、言語、宗教などが存在しているという事実は、とても自然なことであるといえましょう。北インドと南インドの違いを思い浮かべてみると分かりやすいかもしれません。このような常態を示すインドを、われわれは、「多様性」に特徴づけられるインド、と評価します。

 

しかしわれわれは、この多様なるインドを外からみるとき、明らかに一つの有機体として認識しています。「多様性」に特徴づけられながらも、それはある種のまとまりをもっている。これはインドが、「多様性」という側面だけではなく、「統一性」という側面をも有していることを意味しています。インドという国を理解するにあたっては、多様なるものを多様なるものとして、そのまま眺めるだけは十分ではないのかもしれません。つまり、「多様性」「統一性」の実態、そしてそれらの複雑かつ複合的なダイナミズムを検討する必要がありそうだと思うのです。

アプローチの方法もまたさまざまであるといえます。今回は、「インド各地の史跡・遺跡をめぐり、当地における人類の歴史を概観するなかで、華麗なるインド文明の基層をさぐる」というコンセプトのツアーにもとづくかたちで、インドとは何かを、考えてみたいと思います。

 

この旅では、時代・地域を限定することなく、旧石器時代から中世インドまでを中心として、可能なかぎり、全時代・地域の史跡・遺跡をめぐります(*植民地期以降のインドの歴史を無視するわけではなく、随時、解説をくわえます)。当ツアーにおけるインドの歴史をみるためのトピックを古いところから大まかに列挙すれば、

①人類史の始まりと定住革命
②都市革命とインド文明の基層(インダス文明の興亡)
③古代インドの国家と仏教の成立
④古代インドの統一帝国とヒンドゥー教の成立
⑤ヒンドゥー諸王国の興亡とイスラームの浸透
⑥ムガル帝国の興亡と植民地インドの形成
⑦イギリス支配の新たな段階と大国インドへの道

 

となりますでしょうか。いうまでもなく、各トピックには、いわゆる南インドの歴史も深くかかわります。

以上の7つのトピックにかかわる史跡・遺跡を体感しつつ、それらの背景にある歴史を多角的に学ぶことは、インドの長期にわたる歴史のなかに、「変化したもの/しているもの=インド文明の構造変動=「多様性」とかかわる側面」「変化しているようでじつは変化していないもの=インド文明の基層(「構造」)=「統一性」とかかわる側面」
を観察することにつながるはずです。こうした現場レベルでの思考実験は、「多様性」「統一性」、そしてそれらの複雑かつ複合的なダイナミズムに特徴づけられるインドのあり方を理解するための視点あるいは手がかりを、われわれにもたらしてくれるものと考えます。

ドーラーヴィーラー

さて当ツアーはシリーズものです。今のところ、「北インド編」「南インド編」「西インド編」「東インド編」の計4回を考えています。第1回目の行き先は西インド(*第2回目以降は未定)。正直に申しあげて、当ツアーでめぐることのできるインドの史跡・遺跡はごくわずかです。しかしこの旅のねらいは、ただ単にインドの史跡・遺跡を訪れることではなく、さきに述べましたように、「当地における人類の歴史を概観するなかで、華麗なるインド文明の基層をさぐること」です。当ツアーでカバーすることのできない側面については、ツアー中におこなう予定の特別講義などで補います。各ツアーは10日間ほどという短い期間ではありますが、インドの歴史を体感しつつ、一緒にカレーを食べ、思考実験をくりかえしながら、インドとは何かを考えてみましょう。

 

 

投稿:WEB管理担当