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機関誌「旅なかま」掲載記事など最新のトレンドがわかるブログ

旅のアクセント

2019年01月11日

《特集》サクラ❀サク 徳島 チェリーロードライン

サクラ❀サク 徳島 チェリーロードライン



写真:村田旅館前の桜(提供:阿部和剛氏)

 

国のため 散りにし青春(はる)を折々に
帰り給へよ この桜路を

少年時代、村のはずれで出征兵を見送った辛い思い出を胸に、50年もの長きに亘り植え続けた鎮魂の桜。春、花が咲いたら帰らぬ人々も嬉しかろうー
たったひとりで植えた二千本の桜に込められた平和への願い。



写真:チェリーロードラインに沿って続く桜並木(提供:阿部和剛氏)

徳島市から、四国三郎の異名を持つ吉野川沿いに西へ約25㌔、吉野川市の川島町から、その道は始まる。正式名称は徳島県道43号神山川島線。ここから南へ約30㌔の神山町へ続く主要地方道は、別名「チェリーロードライン」と呼ばれている。その名のとおり、春にはソメイヨシノが沿線を彩り、県外からも多くの見物客が訪れる桜の名所だ。これまで一般的にはあまり知られていなかったが、最近になってその経緯が紹介され、ひときわ脚光を浴びてきた。

川島町からチェリーロードラインを8㌔ほど入った山あいの美郷東山というところに、古くからの老舗「村田旅館」がある。館主の村田芳久さんは御年82歳だが、まだまだ現役、その活力と自信が笑顔に溢れている。それもそのはず、実は村田さんこそがチェリーロードラインを造り上げた張本人なのだ。しかも50年近くたったひとりで、というから驚きである。


写真:チェリーロードラインの途中にある村田さんの名前が刻まれた「桜街道碑」

 

 

出征兵士が歩いた山道



写真:出征兵士への思いが詰まった2,000本を超える鎮魂の桜

「最初に桜を植えたのは昭和47年です。それまでの細い林道が改良されるのを機に、それまで思い温めていたことを実行することに決めたのです」

昭和11年にこの地で生まれた村田さんは、近くの東山国民学校(後の東山小学校、現在は廃校)に入学。約350名の児童とともに、軍事演習や校庭で芋を植えたりしながら過ごしていた。そして来る日も来る日も村のはずれで出征していく人々を見送った。

「いくらお国のためとはいえ、無事に生きて返ってこられた人は数少なく、今でも見送った日々のことを思い出すと辛くなります」

見送られた出征兵士たちは、山道を歩いて峠を越え、約80分かけて麓の阿波川島駅から汽車に乗ったという。その後年月を重ねて彼らを思い出すたびに、「いつしかこの山道に桜を植えたい、春になって花が咲いたら帰らぬ人々も嬉しいだろう」と思うようになった村田さんは、改良工事をきっかけに桜街道の構想を実行に移すことにした。

 

植樹と手入れの日々



写真:山間の狭隘路脇にも桜が並ぶ

植樹は毎年12月から1月。桜の木が休眠している間に手際よく植え替えなければならないという。
「桜にしてみたら、寝ている間に見知らぬ土地に植え替えられているわけです。そして目が覚めたら、『ここはどこ? いつの間に……』とびっくりするわけです」

村田さんは屈託の無い笑顔を見せるが、植樹は苦労の連続だった。林道脇の急斜面では足場を確保するのも一苦労で、常に危険と隣り合わせだ。やっとの思いで植えた小さな苗木も、盗伐されたり、根が付かず枯れてしまったりすることもあった。土壌に適応せず枯死する割合は2割程度という。桜は弱く、植えた翌年の夏に日照りが続くとたちまち枯れてしまうので、水を与えるなどの世話は欠かせない。1年経ってやっと定着し、2年目くらいから花を咲かせるのだという。

「植えて、手入れして、初めて花が咲いた時の喜びがあるから、また頑張ろう、まだまだ続けようと思うんです」

初めて桜を植えてから今年で47年。現在ではその数は二千本以上におよび、かつての出征兵が歩いた細い山道は立派な桜街道となった。小さかった桜も年月を経て立派に成長し、訪れる人々の目を楽しませている。しかし、中には病気に侵されたり、他の植物に負かされたりして枯れることも少なくない。最初に植えた記念すべき1本目の桜も、残念ながら今では枯れてしまい、僅かに切り株を残すのみとなっている。最近では、これら枯れた桜を補うための植樹も多く、村田さんの苦労は一向に休まることがない。桜街道に完成はないのだ。
(取材・文= 朝日旅行 旅と文化研究会)

写真:村田さんが主人を務める老舗旅館「村田旅館」


朝日旅行特別企画 大型バスでは行けない
隠れた桜の名所をめぐる旅

村田芳久さんの解説で「チェリーロードライン」を訪ねる関連ツアー(2泊3日/東京・大阪発、日帰り/神戸・新大阪発)をご用意しました! 詳しくはこちらより♪

村田芳久氏(むらた・よしひさ)
吉野川市美郷地区の老舗旅館「村田旅館」の主人。現在は桜街道に続いて四国八十八カ所霊場への植樹も手がけている。
~皆様へ~
毎年来てくれるお客さんとはすっかり顔見知りになりました。私もお客さんと話をするのが楽しみで、期間中は毎日外でお待ちしています。ぜひ一度、花見にお越し下さい。

2019年1月発行「総合パンフレット」に掲載しています。

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投稿:大阪発国内旅行担当