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機関誌「旅なかま」掲載記事など最新のトレンドがわかるブログ

旅のアクセント

2019年08月26日

壮麗なボルゲーゼと 優美なラファエロ展への誘い

 

 

まるでレオナルド・ダ・ヴィンチからラファエロへと、芸術の鍵が受け渡されたように時が移り、2020年を迎える。この2020年こそは、今度は画聖と称賛されたラファエロの没後500年にあたり、ローマではラファエロ特別展が企画され、世界の美術館から画聖と呼ばれた巨匠の名画が集合する。

 

クリスマス・カードで何気なく親しんでいた画家の名画は、海外の美術館で実物に出会うと、その崇高にして優美な画風に陶然とすることが多い。ダ・ヴィンチ作品では、深遠ではあるがやや色調の暗い画風に対して、ラファエロ作品ではスフマート(ぼかしの手法)を取り込みながらも華麗な色彩を活かした作風が魅力的である。

そんなラファエロの絵画を、ローマの特別展では相当数まとめて鑑賞することができるだろう。このような芸術鑑賞の機会は、きわめてまれで見逃せない。ローマのパンテオンで眠るラファエロの石棺にも、この美術展の芸術上の気韻は届くことだろう。

 

このラファエロ特別展と併せて、もうひとつ特上のボルゲーゼ美術館の貸切り見学が企画されている。ローマでもっとも人気のある美術館は、ヴァティカン宮殿美術館であるが、ここは複数の美術館や礼拝堂が集合した巨大な博物館であり、見学には数日を要する。それに対して、ボルゲーゼ美術館は統一されたインテリアの下に、それほど広くはない空間にルネサンスの名画やバロックの彫刻が集約的に展示され、数時間の見学行程で十分に芸術を堪能できる。

 

 

作品と建築がお互いに美術的趣向を共鳴させ、訪問者の満足度がきわめて高い。ボルゲーゼ美術館は元来ヴィラ・ボルゲーゼとして、バロック時代の1615年に建造された。この建物は、はじめ夏の別荘建築であったが、1775年にボルゲーゼ家の後継者たちによりインテリアが古代的趣向に改装されている。

 

 

 ローマにおいては、ローマ教皇と美術活動の関係はとりわけ緊密である。メディチ家のレオ10世とラファエロ、またファルネーゼ家のパウルス3世とティツィアーノなど、教皇を輩出した家系の美術趣味が、その時代の美術様式を先導するほどである。

ボルゲーゼ家の場合は、1605年にボルゲーゼ家出身のパウルス5世がローマ教皇として登場したときに、この家系はあらゆる分野において権勢を掌握していた。その時代、バロック絵画を確立したカラヴァッジョが数々の宗教画の傑作を描き終えた頃であった。パウルス5世の甥にあたる枢機卿シピオーネ・ボルゲーゼは、一族の財政を取り仕切り、しかも美術に対しては鋭い審美眼を持っていた。この財政基盤と美術鑑識を兼ね備えたシピオーネ枢機卿こそ、名画の多いボルゲーゼ美術館のコレクションの基盤を作り出した人物である。

 

まず、 ルネサンス絵画では、ヴェネツィア派のベッリーニによる「聖母子」とティツィアーノの「聖愛と俗愛」が目を引く。両者を比較すると、専ら純粋な宗教画を描いた師匠と裸体のヴィーナスを出現させたその弟子の間に、官能的なヴェネツィア絵画の発展が見えてくる。

ウルビーノ出身のラファエロ作品としては、「一角獣を抱く貴婦人」に画家特有の優美な女性像が見られ、「キリストの埋葬」には動勢にあふれた新たな構図を見出せる。神話画としては、コレッジョの「ダナエ」とレオナルド派の「レダと白鳥」が、どちらも主神ゼウスの変身譚として興味深い。

 

バロック絵画では、カラヴァッジョのコレクションが充実しており、初期の「病める少年バッカス」から始まり、中期を代表する「蛇の聖母」、さらに後期の「ゴリアテの首をもつダヴィデ」まで所蔵されている。バロック彫刻は、ボルゲーゼのシンボルと言える部門で、ベルニーニの秀逸な名作「アポロンとダフネ」を筆頭にダイナミックな構成の群像が見る者を圧倒するだろう。これらの彫刻を紹介するかのように、ナポレオンの妹パオリーナ・ボルゲーゼの横たわる彫像がヴィーナスに扮して、訪問者を迎えてくれる。
この芳醇な果樹園のごときボルゲーゼ美術館において、貸切り見学という贅沢な趣向でゆったりと名品の数々を鑑賞する時間は、心を潤す人生の至福のときにちがいない。

 

 

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投稿:WEB管理担当