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機関誌「旅なかま」掲載記事など最新のトレンドがわかるブログ

旅のアクセント

2019年11月27日

《対談》池田先生&塚本先生~「美の旅」に寄せて~(後半)

 

※こちらは後半です。前半をご覧になられていない方はまずはこちらから

前号に引き続き、明治学院大学講師の塚本博先生と中世美術研究家の池田健二先生による対談をお届けします。

 

Q 両先生とも撮られた写真や購入された資料を、旅が終わってから整理されると思います。整理のコツとかアドバイスとかありますでしょうか。

代替テキスト池田:最近は美術館でもかなり写真が撮れるようになりましたが、ロマネスクの場合には基本的には写真を撮ることができます。
但し、中が暗かったり高い場所にあったりということで、難しい点があるのがロマネスクの特徴です。それと同時にデジタルの時代になって、撮る枚数も増えましたし、デジタルだから撮れるようになったものもたくさんあります。どう整理をすればいいのかという問題は難しいですね。私がお勧めできるとすれば、たくさんお撮りになった中から自分なりにある程度チョイスをして、まとめて、そしてその一枚一枚にその時の自分の感じたこと、解説を少しずつ書いていくというのがいいと思います。私が使っているものでは、写真の中に白抜きで文字が書き込めるんです。そうすると、パソコンの中だけで整理・保存ができます。

 

代替テキスト塚本: 写真と資料を分けてお話します。
写真については、私の場合、千枚以上撮って来た中から、セレクト版というのを必ず作ります。80 ~ 100枚くらいをセレクトして、それをファイルの中に入れておきます。80枚程度だったら常に軽く見られます。その中から、さらに20枚程度は紙のプリントにします。画像だけで見ていますと、あまり記憶に残らないんです。20枚でも紙のプリントが手元にありますと、常に見られるわけで、今回はこの美術館でこれを見たということをすぐに教室などでも提示できます。

それから紙の資料ですが、これはツアーに行きますと、画集を買うだけではなくて、教会の中にある平面図とか、冊子とか、厚みから版型まで実に様々です。私の場合、ツアーから帰ってきますと、それらを箱の中に全部入れます。自分が書いた原稿も、旅のパンフレットも、薄いものから厚いものから全て箱の中に納めて、何年の何々ツアーと書いて保存しておくわけです。本棚にフィレンツェとかヴェネツィアとかと分けてしまうと、もう出てこないです。頭の中は時系列で納まっていますので、ひとつのツアーをパッケージして資料などを整理しておくというのが、なくならない秘訣です。

池田:資料はファイルボックスなどでしかまとめようがないですよね。時系列での記憶ということでは、写真は特にそうですね。ある場所のことを思ったときは、何年にここに行ったから、ここに写真があるなと、そういう風にして捜し出しているわけです。

ワシントン・ナショナル・ギャラリー ©Wikimedia Commons

 

Q 単純な質問で恐縮ですが、有名美術館に限らず、是非行っていただきたい美術館、教会などありましたら、ひとつふたつお教えください。

塚本: これは人にも勧めたいという美術館がいくつかありまして、その第1はワシントンのナショナルギャラリーです。
ここは、ルーヴルとかエルミタージュに比べると、意外に行っていないですね。ところが、アメリカのナショナルですから、水準が非常に高いです。美術館というのは名画を見るところなのですが、大事なポイントとしては、マイナーな水準のものがたくさんありますと、折角の名画の雰囲気がなくなるんです。

ワシントン・ナショナル・ギャラリーは、設立の時から「ある水準以下のものは集めない」という趣旨なので、近代でもルネサンスでも中世でもどこを見ても粒揃いの名品です。もうひとつ良いポイントは、ルネサンスのコーナーに行きますと、絵画が並んでいるところの手前に彫刻が置いてあるんです。彫刻は彫刻の美術館、絵画は絵画と分けているところが多い中で、ここでは、ルネサンスの絵画と彫刻をアンサンブルで並べています。

あとは、プラドの前にあるティッセン・ボルネミッサ美術館です。こちらも水準が極めて高くて、また、保存状態が素晴らしいです。色彩が、ついこの間描いたと思えるくらいの輝きをもっている名画が多いです。もうひとつ挙げますと、オランダのクレラー・ミュラー美術館です。普通はゴッホを見に行くのですが、私の評価は、ゴッホの先です。

ゴッホから20世紀に至るところのいわゆるポスト印象派で、点描の絵があったり、世紀末や象徴主義があったり
と、素晴らしい美術館です。ここは美術評論家とか美術史家がコレクションに関与したので、美術的な視点から
各時代を代表するような名画がセレクトされています。ティッセン・ボルネミッサとクレラー・ミュラーは個人美術館から発展したものですけれども、水準の高さから言ったら、ずば抜けています。

池田: ロマネスクの教会は数が多いので、選ぶのが本当に難しいんですが、先ずこれぞロマネスクという魅力
が集まっている場所とすれば、やはりフランスのコンクのサント・フォア教会だと思います。

大変な山の中なのですが、サンティアゴ巡礼路にあったが故に、建築的な完成度も高いし、入口のタンパンの『最後の審判』を刻んだ浮き彫り、これが実にユーモラスで宗教的にも奥行きがあって素晴らしいです。誰が行ってもロマネスクとして満足できる場所だと思います。

フランスにはいくつもの大物がありまして、柱頭彫刻の好きな方はヴェズレーだと思います。
ヴェズレーの丘の頂上に教会が建っている姿、これ自体がまさにロマネスクの世界そのものであると思えます。イタリアでは、トスカーナのオルチャの谷にサンタンティモという修道院教会があり、小さな谷にポツンとあるのですが、その谷を下りながら見えてくる風景の素晴らしさというのは、心に刻まれるんですね。教会の中にある柱頭の浮彫も素晴らしい。

それから、イタリアは都市の中にロマネスクのドゥオモがある街があります。有名なのはピサですが、私がお勧めしたいのはルッカです。ルッカはロマネスク都市で、教会は「ルッカ様式」と呼ばれ、白と緑の大理石を使い分けた、非常に繊細で洗練された装飾があります。

スペインでは、先ず、バルセロナのカタルーニャ美術館です。カタルーニャの山の中にある小さな教会から剥がして移殖したロマネスクの壁画がたくさんあります。その画風が実に大胆なものがありまして、誰もが感銘を受ける場所ではないかと思います。

もうひとつは、やはり、コンポステーラでしょうか。サンティアゴ・デ・コンポステーラは、ロマネスク芸術全体の発展に極めて大きな影響力を振るいました。つまり、それによって大きな巡礼の動きが起き、様々な国の芸術や文化が交流し、その最後の成果がサンティアゴにあるわけです。ロマネスクの大聖堂も素晴らしいのですが、西側の入口の内側に、最近修復を終えた「栄光の門」と呼ばれる、『最後の審判』を刻んだロマネスク末期の作品があって、色が残っているんです。それも、修復によって、汚れの下に隠れていた色が出てきて、実に生命感のある素晴らしいものになっています。

 

Q 最後に、来年3月に、ローマでラファエロ展見学とボルゲーゼ美術館の貸切見学を行います。その旅について教えてください。

池田: ローマと近郊の教会をめぐるのですが、ローマにはあまりにもいろんなものがあって、最初はどこから
どうすればいいのかわからなかったんです。でも、時間をかけて目を凝らすと、素晴らしいものだらけであると
いうことに気が付いてきました。

例えば、駅の近くのサンタ・マリア・マジョーレ教会です。誰でも入って、大きな教会だとしか思わないのですが、教会の中に、5世紀に遡る最古のモザイクが残っています。そうしたことに気付く、無限の発見があるところがローマです。

それと、フォロ・ロマーノの中にサンタ・マリア・アンティカという教会がありまして、もともと埋もれていたものが掘り出され、また傷んでというようなことで修復を繰り返して、やっと昨年あたりから見られるようになったのですが、まさに初期のキリスト教の時代から最終的に閉じられた9世紀までの間の様々な時代のフレスコが重層しています。

美術史上、極めて重要な材料がそこにあるにもかかわらず、専門家でさえ長い間見ることができなかったというものが、今、見ることができるんです。
中世のもの、古いものというとずっと不変というふうに普通は思うのですが、様々な状況が刻々と変わっていくわけです。ひとつ残念なのは、パリのノートルダムです。ああいうこともあるのですね。永遠のものと思っていたものが燃えてしまって。復興までに時間がかかりそうですね。

塚本: 来年はラファエロの没後500周年ということで、ローマで大きなラファエロ展があります。ラファエロは、世界中に名画が散らばっているので、日本でもラファエロ展をやっていますけど、かなり限定されたものです。

今回のローマのラファエロ展は、世界中の美術館から名画が集まるという、ラファエロの全貌を知るには、最も相応しい画期的な展覧会になります。あわせてボルゲーゼの貸切見学ということで、ボルゲーゼは内部のインテ
リアと名画のアンサンブルが素晴らしいところで、部屋から部屋へと鑑賞しているうちに、ああこれが芸術なんだということを体感できる場所です。

私のコースでは、その後マルケに出て、アスコリ・ピチェーノのクリヴェッリとか、ペーザロのジョヴァンニ・ベッリーニとか、中部イタリアを一周して、最後は中世のアッシジのサン・フランチェスコ教会です。フレスコの原点はアッシジにありますので、そこでフレスコの歴史を考えて締めくくりたいと思っています。

 

先生方のご意見は、今後『美の旅』の企画に反映していきたいと思います。本日はお忙しい中、貴重なご意見をどうもありがとうございました。

 

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投稿:WEB管理担当